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特産品と家名の決定

「やっと来たか。待ちくたびれたわい。」


 私がゴードンのところに行くとそう言葉をかけられた。


「ごめんごめん。ちょっと話が弾んでしまって。」


「まあいいわい。久しぶりの再会じゃったから分からんでもないからのう。それより早く儂の領地に送ってくれ。こいつらも久しぶりに思いっきり仕事ができるとうずうずしておるんじゃ。」


「おお。かなりの人数を連れてきたね。」


 私の目の前にいるのは全員で30人くらいのドワーフ。

 よかった、ドワーフの女性ってみんな胸がないし背も低いけど髭はなかったんだ。

 私がほっとしているとゴードンが不思議そうにしている。


「どうしたんじゃ?」


「え?ああ、いやなんでもない。」


 私は曖昧に笑みを浮かべる。

 言えない。ドワーフの女性が髭がなくて安心していたなんて。


「そうか?まあいいわい。こいつらは儂の元部下や同僚、その家族たちじゃ。人数が多かったから青蘭に何度も往復させてしまったわい。後で謝っといてくれ。それでこいつが儂の悴じゃ。」


「え!?ゴードン息子さんいたの!?」


「まあな。一人立ちしておったんじゃが思ったように仕事ができんじゃろうからこちらに呼び寄せたんじゃ。」


「初めまして女王陛下。ゴードンの息子のギムリと申します。いつも父がお世話になっています。」


「あ、これはご丁寧にどうも。」


 ゴードンの息子とは思えないほど礼儀正しいな。


「ほれ、挨拶は済んだじゃろ。早く送ってくれ。」


「はいはい。・・・それじゃみなさん。今現れたこの魔方陣の上に乗ってください。」


 私は魔方陣を出現させて全員が乗ったことを確認するとゴードンの領地へと転移する。



「はい!着きましたよ!」


 一瞬で転移したのでドワーフたちが戸惑いと驚きの声をあげる。

 転移すると分かっていても実際に体験すると驚かずにはいられないんだろうな。


「いつも思うが便利じゃな。ほれ!お前たち落ち着かんかい!これから儂の屋敷を建てる場所を案内するからついてこい!」


 ゴードンがドワーフたちに声をかけてまとめる様子を見てゴードンってリーダーシップがあったんだなと考える。


「おお。たしかにもういくつか施設ができておるな。」


 ゴードンが新しくできた施設を見て感嘆の声をあげた。


「まあね。この本は施設の説明が書いてあるから読んでおいてね。あと役所と学校の職員を選んでおいてくれる?」


「分かった。男どもは建設で忙しいじゃろうから女たちに任せるわい。ああ、あとそれからシェフィールド王国に行ったときに冒険者ギルドと商業ギルドがこちらにギルドを建てる打診をしてきたぞ。」


「え?本当?助かった。話をしてみるね。ありがとう。しばらくしたらまた迎えにくるから。あ!それから紋章にするための元になるものをひとつ考えておいて。」


「紋章か。分かった、考えておくわい。」


 私は話を終えてゴードンと別れて転移で王宮に戻った。

 さて、少し休憩して午後からまた話し合いを始めますか。







「えー、これから会議を始めます。」


 昼食を終えて自分たちの領地に戻っていた大公たちを回収し午後の会議を始める。


「だいたい町が形になってきたとは思うんだけど、今回の会議は領地の特産品について話し合います。」


 どの領地でなにを栽培したりなにを作ったりというのをある程度はっきりさせておきたいんだよね。


「まずどの領地でも小麦は作るよね。あと野菜もある程度は作るはず。それ以外でうちではこれを特産品にしたい!っていうのはある?できれば食べ物とそれ以外のものと両方。もしくは観光資源でもいいよ。」


「私の領地ではもちろん海の幸と塩になるわね。海の魚や貝や海老とかかしら。あとは貝や珊瑚などの小物やアクセサリー、真珠とかね。」


 エレオノーラの言葉にたしかにと頷く。

 他の領地も海に面しているところはあるけど、領地の都市が海に面しているところはエレオノーラの領地だけだ。

 それに海の漁が得意な人魚族は漁獲量も違うだろうし、なにより人魚族が調理すると生の魚でも問題なく食べられるらしい。

 凍らせる技術が難しくて、水魔法の適正が飛び抜けて高い人魚族だからこそ氷の魔法も使えるのだとか。

 まあ、私も氷の魔法は使えるんだけどね!


「分かった。じゃあエレオノーラの領地はそれでいこう。真珠はなかなかの利益が見込めるかもね。あと海藻も取ってくれると嬉しい。特に昆布とワカメの料理は美味しいから。」


「うふふ。分かったわ。あとで私にもレシピをくださいね?」


「もちろん。」


「陛下。私の領地では温泉を観光資源にしようと思っております。それと米や大豆を栽培します。大豆で醤油、味噌、豆腐作りの研究もしたいですね。」


「本当?醤油とか作れるの?私は出来たら有難いけど。」


「和食のためです。必ず作ってみせます。」


 ローランは以前教えた和食がよっぽど気に入ったみたいだ。

 この王宮にはなぜか醤油や味噌、豆腐があるから私がたまに使って料理をしているんだけど。

 ブルーノもそれらを使った料理をレシピを見て色々試しているみたいだし。


「分かった。頑張ってね。醤油や味噌、豆腐の作り方の本を渡しておくから。」


「ありがとうございます。」


 ローランが嬉しそうにお礼を言うと、今度はエレオノーラが手をあげた。


「妾はこの前食べたチョコレートがいいのじゃ!あれを作りたいのじゃ!そして一杯食べるのじゃ!」


 エレオノーラにチョコをあげたときはすごい反応だったからな。

 自分で食べたいからチョコレートを作りたいってエレオノーラらしいけど。


「チョコレートか。じゃあ砂糖とカカオ豆を栽培しないとね。あとできればお茶や胡椒の栽培もしてくれないかな?畑は全部ダンジョン機能で用意するから。」


 エレオノーラの領地は高級品路線でいくことになりそう。


「分かったのじゃ!あと便利な魔道具もたくさん作るのじゃ!」


 吸血鬼の魔道具は性能がいいからきっといい特産品になるね。


「私の領地では野菜と果物を栽培いたしましょう。野菜はともかく果物は特産品になるでしょうからな。王宮の珍しいあの甘い果物の種を頂けるんですよね?」


「もちろん。セリオンさんに任せる予定だったから。」


 以前王宮の果物を食べたセリオンさんが種を分けて育てさせて欲しいと言ってきたのだ。

 まあこの果物は日本で品種改良されたものだからこの世界の果物より甘くて美味しいのは当然なんだけど。


「ありがとうございます。あとそれから蜂蜜と植物油も作ります。食べ物以外でしたらエルフは服を作るのが得意ですね。世界樹の材料もありますしさらに質のいい服ができるでしょう。」


 なるほど。エルフって蜂蜜と油と服を作るのか。


「その服って高級品だよね?」


「ええ。そうですな。」


「実は高級品以外の安物の服を大量生産しようと思っているんだけど。エレオノーラにそのための魔道具を作ってもらっているから高級品以外にも安物の服も作ってくれないかな?」


「安い材料で大量生産用の服ですか。」


「うん。ボロボロの服や古い服じゃない服も民に着て欲しいけど服って高いからね。どうにかできないかと思って。」


「さすがでございますな。そういうことでしたら私も頑張りませんと。」


 セリオンさんが朗らかに笑う。

 でもその目はやる気に満ちているのでセリオンさんならきっと上手くやってくれると思う。


「儂の領地の特産品は酒と武器じゃ。どこよりも素晴らしい武器を作ってやるわい。それから鉱山資源もたくさんあるな。最近では武器を作らなかった代わりに硝子の生産を始めたやつもおるぞ。なかなかのものじゃったわい。」


「あー、食べ物関係がお酒ぐらいしかないけど、建設業でも忙しいだろうからまあいいか。ええとお酒が好きなのはいいけど麦くらいは作ってね。」


「分かっておるわい。麦はエール作りにはかかせんからのう。」


 わははと豪快に笑うゴードン。

 えーと、楽しそうで良かったですね。


「俺の領地は家畜を飼いたい。自分たちでも食えるしワイバーンの餌にもなる。」


「家畜か。じゃあとりあえず牛、豚、鶏、羊を買ってくるよ。あ、できれば食用じゃなくて馬も育ててくれないかな?」


「そんなにか。分かった、やってみよう。」


「できれば乳製品もよろしく!」


「・・・分かった。」


 これで卵や牛乳、チーズも普及するな。

 食の幅が広がるのはいいことだしね!


「畜産以外ではワイバーンの爪や牙などを売る。あとは闘技場を建設したい。」


 闘技場か。腕自慢とかするのかな?

 でも確かに畜産とワイバーンの素材だけじゃもの足りないかも。


「闘技場は観光資源になるかもね。分かった。あとで造っておくよ。」


「助かる。」


「最後はクロードだけどダンジョンがあればなにもいらないよね!」


「・・・相変わらず俺のときだけ雑じゃないか?」


「気のせいだって。ダンジョンはお肉も魔道具も武器も宝石だってなんでもドロップするんだよ。わざわざ栽培することないかなーと思っただけだよ。小麦と野菜くらいは栽培した方がいいと思うけど。」


「はあー、分かった。つまり冒険者を集めろってことか。治安が悪くなりそうだな。」


 クロードがちょっと疲れているけどクロードならできる!頑張って!

 私は心の中でクロードを応援した。

 まあ、疲れている原因は私が迷宮都市を造ったせいだとは思うけど。


「さて、これで全ての領地の特産品が決定したね。明日から領地を繁栄させるために特産品を生産したり、働く人材を集めたりして早速取りかかって欲しい。あとは前から思っていたんだけどそろそろみんなの領地の名前を決めたいんだけど。」


 私がそう言うと「そういえば」とみんなが口にする。

 今まで誰々の領地としか言ってこなかったから決めたいなとは思っていたんだよね。


「領地の名前というと俺たちの家名ということか?」


「まあ、そうなるよね。」


 問題はどんな家名にするかってことなんだけど。

 みんながどうしようかと考えるけどそう簡単には思いつかないよね。


「たしか家紋に描かれる北斗七星は7つの星から成るのではありませんでしたかな?」


 セリオンさんがふと私に聞いてきた。


「うん。そうだよ。」


「もし7つの星にそれぞれ名前が付いているのならその名前を家名にしてはいかがでしょう?」


「おお!それはいいかもしれない!」


 セリオンさんのアイデアに私は声をあげる。

 せっかく大公家の紋章に北斗七星を決めたからそれになぞって家名をつけるのは正解かも。

 他のみんなもセリオンのアイデアに賛成らしい。

 というわけで決定した家名がこちら。


 クロード・メグレス

 ローラン・アリオト

 レティシア・アルカイド

 ゴードン・ドゥーべ

 エレオノーラ・ミザール

 セリオン・メラク

 カミロ・フェクダ


 割り振りは適当です。


「うん。よく分からないけどこれでいいんじゃない?」


 みんなも私と同じ意見のようで頷いている。


「でもエレオノーラは家名持ってなかった?前の家名でもいいんだよ?」


「あれは吸血鬼の姫だった頃の家名なのじゃ。今は妾はポラリス王国の大公だから新しい家名がいいのじゃ!それと新しい家名と名前の間にフォンを入れるともっといいと思うのじゃ。」


「フォン?クロード・フォン・メグレスってこと?」


「そうなのじゃ。貴族の中でも高貴な貴族はついていたりするのじゃ。」


「へー、そうなんだ。たしかにフォンをつけた方が格好いいかも。じゃあ大公家だけフォンをつけることにしよう。みんなもそれでいい?」


 全員頷いて賛成してくれたのでエレオノーラの案を採用することになった。


「あれ?そうなると私の名前ってどうなるんだろ?」


「陛下の正式な名前はなんでしたかな?」


「北川花梨だよ。あ、花梨の方が名前ね。」


 みんなが私の名前を聞いて不思議そうにする。

 やっぱり名前の順が逆なのは変かな?


「俺たちが名前と家名とフォンがついているのに女王がそれでは少しおかしいか?」


 クロードがそういうとみんなも頷く。


「でしたら一番最後に国の名前をつければよろしいのでは?他国の王族は大抵そうですから。」


「うーん。それじゃあ、カリン・キタガワ・ポラリス?」


 なんか変じゃない?


「なかなかいいんじゃないか?」


「王族っぽくなったわね。」


 え?嘘でしょ?

 みんな満足して頷いているけど、なんか大公たちに比べたら私の名前ダサくない?

 やっぱり日本の名前だと合わない・・・


「では陛下の名前は、カリン・キタガワ・ポラリスということで。」


「えー!?」


 クロードが私の名前を宣言するとみんな拍手をする。

 ええと、もうこれで決定なの?

 私の名前なのに私の意見は無視ですか?

 といっても代わりの案があるわけじゃないけどさ。

 はあ、まあいいか。後ろにポラリスがついただけであんまり変わってないし、そっちの方が私も親しみやすい、のかな?


 家名も決まり移民の受け入れ開始まであとちょっとだ。

 明日はシェフィールド王国に行って冒険者ギルドと商業ギルドに行くことにしよう。

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