白騎士と双振りの剣
描写が足りない気がしたので、結構編集しました。
「え、えーと、つまりあなたはここで働きたいと?」
「はっ!是非あなた様にお仕えさせて頂きたく。」
現在、ようやく言葉を出すことができた私は、ナナシくんにここで働きたいという意思があることを確認中です。
(ナナシくんというのは、名前を捨ててしまった彼に私が勝手に心の中でつけた仮の名前です。)
確かにここに住むという提案をしたのだから、働くことは当然なの、かな?
「えーと、ノワールはどう思う?」
「我が主の魔眼に認められたのだから、我が主さえ良ければ我に異論はない。」
「そ、そっか。やっぱりいい人と悪い人がある程度分かるって便利ね。誰かをスカウトする時とかこれからも役に立ちそう。」
この国にはまだ住人も誰もいない。だからきっとこれからこの国に人を受け入れることになる、かもしれない。その時にこの魔眼を使えば受け入れていい人と悪い人を見分けることができる。
「あ、あの。それで、私は・・・。」
私がなにも言わないので、ナナシくんが心配そうな顔をしている。
そんな顔をしなくてもこちらは働き手が全然いないし、大歓迎なんですけどね?
「あ、うん、もしあなたさえそれでいいならここで働いてもらおうかな?」
「は、はい!よろしくお願いします!」
ナナシくんの表情がぱあっと明るくなる。
なんか、表情豊かなちっちゃい子供みたいで可愛い・・・。
という訳で、仲間が一人増えました。
国の住人が三人になった!(一人鎧)
・・・少なっ!
これは国っていっていいの?
私の知識では国民、領土、主権がないと国って認められないはず。
今のところ、十分に満たしているのは、領土しかない。
・・・オーマイガッ!
やっぱりこれから人を集めなきゃいけないのかな?
法律とか作らなきゃダメ?
うぅぅ。
やっぱり建国って面倒くさい!
さっさと役人?みたいな人を集めて丸投げして異世界を見て回りたいよぅ・・・。
あ、いや、違いますよ?
この国のために参考になりそうなことを学びに行くってだけで、決してサボる訳じゃないよ?
「あの、陛下。」
「ん?へ、陛下?それって私のこと?」
「はい、勿論です。一国の主ならば、陛下とお呼びするのが当然かと。」
「あ、そ、そうなの、ね。」
陛下だって!陛下!
なんか恥ずかしー!
テレビとか小説とかで、王様が「陛下」って呼ばれてるけど、自分がそれで呼ばれるとなんだか無性に恥ずかしいんですけど!
王様になるってこんなことにも耐えなければならないとはっ!
「陛下、どうかなさいましたか?」
ナナシくんが不思議そうな顔をして首をかしげている。
くそぅ、なんかさっきから可愛いな!
表情コロコロ変えやがって!
私をキュン死させる気か!
「あ、いや、なんでもない、なんでもない。それでどうしたの?」
「は!私は以前の名を捨て生きていくことにしました。ですのでもしよろしければ、陛下に名前をつけて頂きたいのです。」
「え?私?」
私に名前をつけて欲しいと、このナナシさんは!
このネーミングセンスの欠片もないこの私に!
チャレンジャーですね!
ノワールに続き第2の犠牲者が・・・。
「それはいい。我のノワールという名も我が主がつけてくださったものだ。きっとそなたにも素晴らしい名をつけてくださることだろう。」
「なんと!それは本当か!羨ましい・・・。陛下!是非わたくしにも名前を!」
ノ、ノワール・・・。
なんて恐ろしい子!
ハードルを上げたわね!
ただ色の名前をつけただけなのに。
あ、でも猫とかにクロってつけるから悪くはないのかな?
猫と一緒にするのもどうかと思うけど。
それにしても名前か・・・。
ノワール(黒)で羨ましいと思うなら、もう白でいいんじゃない?
黒騎士と白騎士か・・・。
ちょっと格好いいかも。
「ブラン・・・。」
「ブランですか?それが私の新しい名前なのですね!」
「え、あ、その。」
「ありがとうございます!これからはブランと名乗らせて頂きます!一生この名を大切にいたします!」
「良かったな、ブランよ。うむ。実にいい名だ。」
あ、めっちゃ好評ね。
本当にブラン(白)になっちゃった。
でも喜んでくれているみたいだし、これでいいっか!
となるとやはり、ブランには騎士になってもらわなくちゃね。
ふふふ・・・。
「よし!ブラン、命令よ!ノワールと一緒に頑張ってこの国を支える立派な騎士になってちょうだい!」
黒騎士と白騎士の誕生。
うん、やっぱりなんか格好いい!
「このような私にそのような名誉を頂けるとは・・・。このブラン、陛下に頂いたこの名に誓って必ずや陛下の期待に応えてみせます!」
今凄く感動しています!って顔で決意表明をするブラン。
お、重い・・・。
そんなに気負わなくても。
国を支える騎士っていってもまだ国として機能してないし気楽に考えてもいいと思いますよ?
「ほほう。この我と共にこの国を支えると。我と肩を並べるなら、並の力では無理だ。よかろう!この我がそなたを最強の騎士(人間の中で)へと鍛えてやろう!」
ノワールが自信満々に胸を張って格好良く宣言する。
親子丼を片手に・・・。
親子丼の存在忘れてたわ。
ブランが親子丼を食べ終わった後、私たちは城の外へとやってきた。
見渡す限りの平地・・・。
うん、もうここまでなんにもないと、いっそ清々しいね!
城には広い庭とか訓練場とか色々あるけど、城壁の外にはやっぱりなにもない。
これからここにも家とか店とか道とかできたりするのかな?
想像もできないけど。
神様もある程度出来上がった町の状態にしてくれたら楽だったんだけどな。
そんなことを考えながら辺りを見渡していると、準備ができたらしい二人が剣を構えて向かい合う。
あ、尚、初めて親子丼を食べたらしいブランはとても感動しておりました。
「ブランよ。全力で掛かってくるといい。我がそなたの力量を見極めてやろう。」
「君はかなりの強者のようだな。久しぶりに骨のある戦いができそうだ。」
二人とも気合い十分。
そして静かに少し見つめ合った後、ブランが勢いよくノワールに斬りかかる。
早い、けど見えないほどではない。
ヘルプさん曰く、これも魔眼の影響らしいけど。
どんなに早いものでも魔眼が捉えてくれるらしい。
なんて便利な。
これならハエたたきも簡単にできるかも。
もう魔眼ってなんでもありだね!
ノワールは落ち着いた様子でブランの剣を受け止める。
ブランは一旦後ろに跳び、距離をとる。
「くっ、さすがだな。」
「ふん。これしきなんてことはない。様子をみてないで、全力で掛かってこい!」
ノワールとブランが激しく打ち合う度に、剣のぶつかる恐ろしい音がする。
う~ん、よく分からないけど多分レベルの高い戦いなんじゃないかな?
二人とも強い、はず。
他に比べる対象がいないからなんとも言えないけど。
「なかなか筋がいいな、ブランよ。」
「くっ、そういう君は余裕そうだな!」
「これしき大したことはない。・・・これで最後だ。しっかり受けとめるのだ!」
ノワールが剣を下に構え振り抜く。
それを受けとめようとしたブランは剣を構えたが・・・。
「え?」
なんとノワールの剣はブランの剣を真っ二つにしてしまった!
えええ!?これってありなの!?
これじゃあ、受けとめるどころの話じゃないよ!
ブランも呆然と剣の折れたところを見つめている。
「す、凄い。剣だけじゃない。使い手の腕があって初めてなせる技だ。なんて綺麗に斬られているんだ。力技では決してできない。まさかここまでの剣の使い手がいたとは。やれやれ世界は広いな。私はまだまだだ。完敗だな。」
うん、凄いけど、ノワールは神様が作った鎧だし、あんまり比べない方がいいと思うけどね。
「ブランもなかなかだったぞ。これから鍛えていけばもっと強くなるだろう。そなたを我と並びたつ者として認めよう!」
おお!ノワールが認めてくれた!
これってなかなか凄いことじゃない?
神様曰く、ノワールは世界最強の鎧。
そんじょそこらの人が認めてくれるのとは訳が違う!はず!
「私はまだまだ強くなれるということか。感謝するよ、ノワール。これからも相手をして欲しい。・・・それにしても、参ったな。この剣はもう使えなそうだ。私はこれしか持っていないんだが。」
確かにこれは無理ね。
城に剣の置いてある武器庫とかないのかな?
良さそうなのがあるといいんだけど。
「それならば、これを使うといい。」
「ん?この剣は・・・。」
おー!なんて綺麗な剣なんだ!
ノワールの取り出した白い剣の鞘には金の装飾がなされていて、シンプルだけど神々しいくらい美しい。
ブランが恐る恐る手にとり、剣を抜くと銀色に光輝く刃が。
でもこれ、どっかで見たことある気がする。
「その剣は『白龍剣』といって、私の持つ『黒龍剣』と対になる剣だ。この国と我が主を守るため神から賜った双振りだぞ。心して持て。」
ああ!そうだ!
ノワールの持っている剣だ!
色違いだね。
道理で見たことがあると思った。
「そ、そんな大事な剣を私が持っていてもいいのか?」
「構わん。どうせこの剣は我と相性が悪くてな。この双振りの剣は使い手を選ぶ。ブランなら白龍剣に選ばれる、かもしれない。」
「「・・・。」」
つまり、白龍剣に選ばれなかったら剣を持てないってこと?
心して持て!とか言ったけど、選ばれなかったらはい残念!ってこと?
先に言ってよ、それ。
ほら、ブランの感激した顔がどんどん不安な表情になってるじゃん。
「でも、どうしたら剣に選ばれたとか分かるの?」
「ああ、この双振りの剣は選ばれた者にしか抜くことができないのだ。つまり、ブランはもう既に剣に認められたということだ!ワハハハハ!」
「「そんな大事なことは先に言え!」」
ワハハハ!じゃないよ!
かもしれない、とか言うからちょっと心配になっちゃったじゃん!
「ん?まあ、選ばれたのだから良いではないか。我もこの剣を使わずにしまっておくのは勿体ないと思っておったからな。ちなみに剣は一度自らの使い手を選ぶと、その使い手が死ぬまで仕え続ける。他の者がこの剣を抜くことは決してできないのだ。」
ほうほう。
やっぱり仕組みはよく分からないけど、なんか凄い剣だということだけは分かったよ。
使い手以外は使えないから、盗まれる心配はないかもね!
「白龍剣。お前は私を選んでくれたのか。お前の期待を裏切らないように私はもっと強くなってみせよう。」
ブランが白龍剣を手に強くなると誓う。
最初は侵入者だー!とか言ってたけど、最終的にブランが仲間になってくれて良かった。
やっぱり人がいないと国は成り立たないからね。
これからもこうして仲間が増えていくといいな。
戦闘描写は苦手です・・・。