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迷宮都市と鉱山

「さて、休憩もとったことだしクロードの屋敷に取りかかろうかな。」


 クロードの屋敷が完成したら大公の屋敷が全部完成したことになる。

 ということはやっと完成した屋敷に遊びに行けるということだ。

 とはいえ実はクロードの屋敷が、というか領地が一番大変になると思う。

 なぜなら・・・


「迷宮都市にしようと思う。」


 私の言葉にクロードが目を丸くする。


「迷宮都市というと、ダンジョンを造るということか?」


「うん。きっと冒険者は集まるだろうし色々な利益が見込めるはずだよ。」


 ダンジョンには魔物やお宝を求めて冒険者が集まる。

 まあ、その魔物やお宝を準備するのは私なんだけど。


「というわけで、屋敷の方はちゃっちゃと終わらせてダンジョンの方に移ろう。」


「雑!俺の屋敷だけなんか雑だ!」


 いやだってダンジョンがある都市なら珍しい異国風に造るとイメージが合わないし。


「まあまあ、珍しくはないけど立派な屋敷にしてあげるから。」


「・・・好きにしてくれ。」


 では、魔力を集中させて・・・


「はい、終わり。」


「早い!今までと比べ物にならないくらい早い!しかも全く疲れた様子もない!」


「大丈夫大丈夫。今までのは写真を参考にしたとはいえ私のイメージだけで造ったものだから時間がかかっただけだって。クロードの屋敷はダンジョンに元々記録されている屋敷を私が少し改装したから時間がかからなかったんだよ。厨房もお風呂もトイレもちゃんと整備したから。」


「そうはいってもだな・・・」


「大丈夫だって。みんなの屋敷や他国の一番豪華な貴族の屋敷に劣らないくらい豪華で立派だから。それに大公の屋敷は全て上下水道が整っているし、快適に暮らすための魔道具もふんだんに使われているから他国よりも凄い屋敷になっているよ。」


 私が自分の造った屋敷の素晴らしさについて力説しているとクロードは観念したように何度も頷いた。


「分かった、分かった。屋敷の素晴らしさは十分伝わったから。それに元々そこまで屋敷にこだわるつもりはない。」


 本当かなぁー?

 結構拗ねていた気がするけど。

 まあクロードの領地は屋敷よりもダンジョンがメインだ。

 逆を言えば、ダンジョンという魅力がないからこそ他の領地は珍しい異国風にしたと言える。

 全部の領地にダンジョンを造るのは無理だし(私の管理能力的に)他の領地にも人を集めるための魅力が欲しいと思ってしたことだ。

 大公の屋敷が観光名所になるかもしれない。


「さて、とりあえず屋敷は完成したことだしダンジョンをつくろうか。」


「分かった。」


 正確にはこの土地全てがダンジョンなんだけどこれから造るのは一般的な洞窟形のダンジョンだ。

 地下に潜っていく方式にする。

 ちなみに今から造るダンジョンは魔物を倒すとアイテムがランダムでポップする。

 もちろん宝箱も設置する。

 階層はクロードと話し合いをした結果、とりあえず30層にして段々増やしていくことになった。

 1~5層までが初心者用の洞窟で罠もない。

 出てくる魔物はスライム、ゴブリン、コボルト、ホーンラビット、ブラッドバットの弱い魔物だけだ。

 6~10層は少し難易度が上がって罠ありの洞窟。

 オーク、オーガ、レッドボア、ワーウルフなどのまあまあ強い魔物になる。

 5層ずつエリアの形式を変えていくことにした。

 11~15層は森に変わるというように。

 ちなみに5層ごとにボス部屋というものがある。

 ボス部屋にはエリアの中で一番強い魔物が出現する。

 ボスを倒すと他の魔物よりもランダムでちょっといいアイテムがポップして、ボーナスの宝箱もでてくる。

 宝箱の中身はランダムだ。

 まあそんな感じの一般的なごくごく普通のダンジョン。

 ちなみに決定した階層のエリアがこちら

 1~5層 ・・・洞窟(初級、罠なし)

 6~10層 ・・・洞窟(中級、罠あり)

 11~15層・・・森

 16~20層・・・草原(棟がある)

 21~25層・・・墓地

 26~30層・・・水辺


 魔物はそれぞれのエリアにあった魔物が自然に出現する。

 まだ砂漠や氷の世界など色々試してみたいエリアがあるけどそれは追々足していくとして、とりあえずダンジョンの構造が決まった。

 ちなみに魔物はダンジョンから出られないように設定してあるので安心だ。


「じゃあ早速始めるね。」


 クロードが頷いたのを確認して目を閉じ魔力を集中させる。

 ・・・ん?

 時間はかかるけど屋敷を造るよりも簡単な気がする。


 ・・・


「よし!できた!」


 うん、普通だけどいい感じにダンジョンが完成したと思う。


「お疲れ様。早速見に行ってみたいがそういうわけにもいかないだろうな。」


「そうだね。入ったとたんに魔物に襲われると思うよ。罠もあるし。」


「そうだな。仕方がない。ダンジョンに行くのは諦めて俺も自分の屋敷を見に行くか。」


「ダンジョンに入るのは止めておいた方がいいと思うけど、中の様子を見ることぐらいならできるよ。」


「なに?」


 ふ、ふ、ふ。

 私はこう見えてダンジョンマスターなんだよね。

 ダンジョンの様子を映し出して見ることぐらい朝飯前なのさ!

 私はにやりとクロードに笑みを向け空中にダンジョン内の映像を映し出す。


「こ、これは・・・」


 クロードが驚いた顔で映像を見つめる。

 ダンジョンの中は既に魔物がうろついていた。

 クロードは魔物というより映像の方に驚いているみたいだけど。

 更に下に進んでいくとボス部屋についた。

 5層のボス部屋は初心者用に強い魔物ではなくゴブリンの群れにしてみた。


「凄い・・・。」


 まるで映画を見ているみたいで面白い。

 映像なので魔物を倒して宝箱などの確認はできないけど、ボスを倒すことで進める次のエリアの映像は見ることができる。

 そうしてしばらくダンジョンの映像をクロードと二人で見ていた。

 なかなかの出来で私は満足できた。


「どうかな、クロード?」


「そうだな。ダンジョンというのは魔物が溢れたりして危険が付き物でなやみ所だが、安全に運営できるのは素晴らしいと思う。なかなかの出来だと思うぞ。」


 クロードの好評価に満足して頷く。

 魔物のポップや宝箱の中身は自分で設定しない限りは私もなにがでてくるのか分からないので、クロードの領地経営に役立つものがあればいいなと思う。


「そういえばこの魔物たちは陛下を襲うことはないのか?」


「いや、自然発生した魔物は普通に私も襲うし命令も聞かないよ。」


「そうなのか。」


「うん。それよりせっかく屋敷が完成したんだから見に行っておいでよ。送ってあげるから。」


「それもそうだな。陛下ご自慢の立派な屋敷を見に行くとするか。」


 クロードが意味深に私を見てにやりと笑うので私はさっさと転移で送る。

 全く、屋敷がさっさとできたことをまだ根に持っているのかクロードは。

 私はひとまず一通りの屋敷を建て終わりほっと息をついた。


「お疲れ様でございました陛下。」


「ありがとうセルジュ。」


 セルジュが再び紅茶を入れてくれる。

 セルジュの紅茶は本当に美味しい。


「大公たちの屋敷は造ったけど、みんな王宮での仕事があるからあんまり屋敷にいれないかもね。勿体無いけど。」


 貴族は自分の領地と王都に屋敷を持つというし、他国みたいに王都に貴族区を設置してみんなの屋敷も造っておこうかな。


「屋敷あんまり使わないかもな。」


「そうでもありませんよ。領主の館では領主代行や領官たちの仕事場でもありますし。大公のご家族も住まわれるでしょう。」


「それもそっか。頑張って造ったからせめて観光名所ぐらいになってくれると嬉しいな。」


「そうですね。」


 セルジュが優しく楽しそうに微笑む。

 うん、平和だ。


「それにしても大公の家族か。あんな屋敷に住めたらその家族も嬉しいよね。今のところ家族連れの大公ってセリオンさんとカミロぐらいだよね?」


「そうですね。そのうち皆様も家族を連れてこられるのではないでしょうか?クロード様もいつか必ず妹を連れ戻すとおっしゃっておりましたし。」


「え!?クロード妹いるの!?」


「ええ。同じく奴隷にされてしまいましたが見目麗しい女性は大きい奴隷商に引き取られますから離れてしまったのですよ。」


 初めて知ったよそんなこと。

 クロードの妹だからそれは美人なんだろうけど。


「なんでもっと早く言ってくれなかったの!私がなんとしてでも連れ戻すのに!」


「ありがとうございます。陛下のお気持ちは嬉しいです。彼女は腹違いとはいえ私の妹でもありますから。しかしこれ以上陛下にご迷惑をおかけすることはできません。」


「でも!」


「奴隷の身であった私たちが妹を取り戻すなど不可能に近い望みでございました。しかし今は陛下のおかげでその希望が持つことができたのです。今はそれで十分でございます。本当に感謝しております。」


 セルジュはとても綺麗に深々とお辞儀をした。

 でも私としてはちょっと複雑だ。

 なんとかできないかと考えてしまう。


「そうだ!クロードにお給料を」


「領主は王から給料をもらうことはございません。領主の収入は領民や商人からの税金です。」


「うむむ。・・・じゃあ、私が優秀な人材を欲しいと言ったら?きっとクロードたちの妹なら優秀だろうし今さら奴隷だって関係ないよね?」


「しかし今どこにいるのかも分からないのですよ。シェルフィートで売られたことはたしかですが・・・」


「その話聞かせてもらった!」


 バーン!といきなり扉が開いて会議室に誰かが突入してくる。


「びっくりした。誰かと思ったらゴードンじゃない。自分の領地を見に行くんじゃなかったの?」


「ま、まあそうなんじゃが。そんなことより儂をシェルフィートに送ってくれ!儂の知り合いを連れてきたいんじゃ。そのついでといったらなんじゃが妹さんを探してくるわい。陛下がシェルフィート国王にお願いの書状でも書けばすぐ見つかるじゃろ。この間の件をちゃらにするとでも書いて。」


 それはいい考えだ。

 この間の件といえばあの馬鹿貴族のことかな?

 まさかこんなところで役立つとは。


「それならお願いするねゴードン。後で書状を書いておくから。もしもう妹さんが買われていてもお金に糸目はつけないから。」


「分かった。」


「・・・本当によろしいのですか?」


 トントン拍子に進む話にセルジュは遠慮がちに聞いてくる。

 全くセルジュは遠慮が過ぎる。

 ちょっとぐらい頼ってくれてもいいのに。


「大丈夫だよセルジュ。妹さんは必ず取り戻すから。」


「ありがとうございます。」


 セルジュは少し涙目になりながらお礼を述べる。

 うん、妹さんの話を聞けて良かったよ。


「あのう、いい話のところ悪いんじゃが儂もお願いしてもいいかのう。」


「駄目。」


「なんでじゃ!」


「どうせお願いがしやすくなるように協力を申し出たんでしょ?」


「うぬぬ。」


 やっぱり図星だったみたいだ。

 なんであんなにやる気があるのか謎だったんだよね。

 まあ、ゴードンのことなら何もなくてもお願いすれば協力してくれたとは思うんだけど。


「まあ取りあえず話すだけ話してみて。」


「よし!では行くぞ!」


「え!?急にどこに!?」


「もちろん儂の領地じゃ!」


 私はゴードンに連れられてゴードンの領地に向かうことになった。

 といっても私の転移での移動なんだけどね。

 私はまだ話を聞くとしか言ってないんだけどな。







「着いたけどお願いってなに?」


 私はゴードンの領地に着くと早速ゴードンに聞いてみた。

 今ここにいるのは私とゴードンと護衛のブランだ。


「陛下はエルフの土地を植物が多く生えた土地に変えたんじゃろ?ダンジョン機能では土地を変えられるのではないかの?」


「うん、まあある程度は。」


「じゃあ儂の領地に鉱山を創ることはできるかの?」


「鉱山?」


「そうじゃ。儂はまた鍛冶を始めたいんじゃ。もちろん仕事の合間にじゃがな。それにここに来たドワーフたちに思いっきり自由に鍛冶をしてもらいたいんじゃよ。今までドワーフはレザラム帝国を恐れて満足できる武器を作れなかったんじゃ。儂も生活するために仕方なく質を落とした武器を売りにだしておった。それが200年じゃ!どれだけ儂らにとって屈辱だったことか。」


 ゴードンは唇を噛み締めて悔しそうに話してくれた。

 そっか。最初ドワーフの武器を見たときの違和感ってこれだったのかもな。

 そういうことならドワーフたちのために鉱山を用意してあげようじゃないか!

 鍛冶には金属が必要だもんね。


「分かった。いいよ。なにが採れる鉱山がいいの?」


「いいのか!?助かる!・・・そうじゃな。できるだけ色々とれると嬉しいんじゃが。」


「そうだね。じゃあ鉱山を2つ用意するよ。ひとつは鉄、銅、銀、金、白金が採れる鉱山。ふたつめはミスリル、アダマンタイト、ヒヒイロカネ、オリンハルコンの魔法金属がとれる鉱山。」


「魔法金属じゃと!どれも貴重なものばかり

 じゃないか!いいのか?というか本当に採れるのか?」


「大丈夫。ダンジョン機能なら魔力さえあれば大抵のものは産み出せるから。そのかわり扱いには注意してよ。特に魔法金属の鉱山は厳重にゴードンが管理して採掘するときも気をつけてよ。」


「あ、ああ分かっとる。」


 ゴードンが了承したのを確認して早速鉱山を産み出すべく魔力を集中させる。

 といっても鉱山はダンジョンの地形選択項目にあるのでそれを選択すれば簡単にできたりする。


 ゴゴゴォォォ!


「おお!もう出来とる!いったいどういう仕組みなんじゃろなこれは。」


 凄い音がしてみるみるうちに鉱山が出来上がるとゴードンは瞳をキラキラさせて鉱山を見つめる。


「向こうにあるのが普通の鉱山。で、こっちの領主の屋敷予定地に近い鉱山が魔法金属の鉱山。」


「分かった。配置も助かるわい。魔法金属は貴重じゃからな。近い方がいい。」


「そうだね。後でノワールに頼んでゴーレムをこの鉱山に配置してもらうから。許可された人しか入れないようにしよう。」


「頼む。」


「あ、それから自分の屋敷を自分で造るのはいいけどなるべく早くお願いね。あと、時間が足りないから共同で領地に造らないといけない施設はダンジョン機能で建てるからね。」


「むう。仕方ないのう。・・・そうじゃ!酒の泉も設置してくれんかの?」


「え?もう?」


「ああ。屋敷の予定地に設置してくれ。儂の庭にするんじゃ!」


「えー。解放して観光名所にするつもりは?」


「ないのう。」


 むー。ゴードンの領地はダンジョンも珍しい異国風の屋敷もない普通の場所だから、酒の涌き出る泉で人を集めようと思ったのに。


「分かった。じゃあ酒の泉も2つ用意するよ。ひとつは一般解放するように。涌き出るお酒は同じだから。お金をとってもいいし。コップ一杯いくらとか、樽ひとついくらとか。」


「分かった。そうするとするかの。もちろん酒は毎日ランダムで変わるのじゃろ?」


「もちろん。しかもこの世界にはない異世界のお酒だから。」


「おお!それは楽しみじゃな!」


 ゴードンはそれはそれは嬉しそうに笑った。


 さて、これでひとまずゴードンの領地ですることは済んだからあとは王都を整えないとな。

 今日はもうこれくらいにして明日からまた頑張るか。

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