吸血鬼と代表会議
「妾はエレオノーナ・ヴァンピオールじゃ!頭が高い!控えるのじゃ!」
どこの黄門様だよ。
「・・・えーと、どちら様でしょうか?」
「妾はエレオノーラ・ヴァンピオールじゃ!」
「いや、それはもう知ってます。」
「そうかそうか。さすが妾は有名人なのじゃ!」
いやさっき自分で名乗ったよね?
というか本当に誰なんだこの子。
紫色の髪と琥珀の瞳を持ったのじゃロリ娘。
朝っぱらからなんで人の部屋で偉そうにふんぞり反っているの?
それよりも
「どうやって王宮に入ってきた?」
「ふん。窓から入ろうとしたら結界に弾かれたから正面から堂々と入ってやったのじゃ!」
「えー・・・。」
正面から堂々入ってくる侵入者ってどうよ。
たしかにこの王宮は神様の強力な結界が張ってあるから正面からしか入れないんだけどさ。
一応使用人用の裏口とかあったんだけどそこから入るという考えはなかったんだろうか。
「しかも夜に入ろうと思ったら正面からでも駄目じゃったから朝まで待っててやったのじゃ!」
「なんでだよ!侵入者なら侵入者らしく結界ぶち破って入ってこい!」
「お、お主がそれを言っていいのかの?」
私の言葉に目を白黒させるのじゃロリ。
いやだって侵入者がお利口に門の前で開くのを待っているのを想像したらなんともいえない気持ちになる。
「そうはいってものう、この結界妾でも壊せないくらい強力なのじゃ。何人かかろうと無理なのじゃ。」
「あ、一応壊そうとはしたんだね。」
「いや、見ただけで諦めたのじゃ。」
「さいですか。」
というか私たちはなに話しているんだろうね。
こののじゃロリがなにものなのかも、目的も分かってないし。
一応悪い人には見えないけど侵入者だしな。
「そういえばノワールが門番をしていてくれたはずなんだけど。」
「あの黒い鎧のことなのじゃ?それなら吸血鬼として城の主に会いにきたと言ったら入れてくれたのじゃ。」
「ノワール・・・!」
そんな簡単に王宮に入れちゃ駄目でしょ。
ノワールは門番に向いてないのかもしれない。
というか、あれ?この子吸血鬼って言った?
「安心するのじゃ。この城でお主に危害を加えようとしたらここの地下牢に飛ばされる術式が組み込んであるのじゃ。誰が入ってきても大丈夫なのじゃ。」
「いや、そういう問題じゃないような。ってそんなことよりあなた吸血鬼なの?」
私が肩をガシッと掴んで吸血鬼かと確認するとのじゃロリはキョトンとした。
「当たり前なのじゃ。かの有名なエレオノーラ・ヴァンピオールと言ったら吸血鬼の姫なのじゃ!」
そう言ってのじゃロリは小さな胸を張り、立派な牙を見せてきた。
まさかの吸血姫きたー!
「吸血鬼なのは分かったけどなんでここにいるの?」
「お主は吸血鬼を探しているのではないのじゃ?」
「いやそうだけど。」
大々的には公表してないはずなんだけどな。
他の種族はみんな直ぐに見つかったし。
「妾はな、千年前に戦争が煩わしくて自分で封印をして眠ることにしたのじゃ。」
あれ?急に身の上話が始まったよ。
というかのじゃロリって何歳なの?
「しかし、うっかり強力な封印をしてしまって妾以外誰も解くことができなくて千年も眠ってしまったのじゃ!わはは!」
「わははって、笑えねえ!」
「自分で封印は解けばいいと思って強力な封印にしたが、眠った状態じゃ封印は解けないと昨日気づいたのじゃ!」
「でしょうね!というか気づいたのはまさかの昨日だった!」
大丈夫なのかこの子は。
しかもまさかこの私がツッコミ役に回されるなんて。
のじゃロリ、恐ろしい子。
しかしツッコミ役ってすごく疲れるんだね。
いつもごめんなさいクロード。
一応心の中で謝っとこう。
「それにしても誰も封印を解けないのにどうやって封印を解いたの?千年経ったら解けるとか?」
「妾の封印がそんなやわなもののはずがないのじゃ!かーちゃんと名乗る娘が封印を解いてお主に協力するように言ったのじゃ。」
またかーちゃんか!
神様なのに事あるごとに色々しているけど大丈夫なの?
「それにしても吸血鬼の王族である妾の封印を解く者がいるとはあれは何者なのじゃ?」
神様です。
「ともあれその者のおかげで目覚めることができたからよしとするのじゃ。細かいことを気にしたら負けなのじゃ。」
「そ、そうだね。そんなことよりさ、のじゃロ、じゃなくてエレオノーラは一人?」
「いや?妾の部下である吸血鬼の貴族たちも一緒なのじゃ。」
まさかみんなで朝まで門の前で待ってたの!?
怖くて聞けないんですけど!
「あやつらは妾の封印が解けなくて仕方なく妾と一緒に眠っておったのじゃ。」
それでいいのか吸血鬼!
「この度は突然押しかけてしまいまことに申し訳ありませんでした。また、我らが姫がご迷惑をおかけしたこと深く謝罪致します。」
「あ、はい。ご丁寧にどうも。」
まともだ。凄くまともだ。
エレオノーラを見ていたら吸血鬼の性格を密かに心配していたけど大丈夫だったみたいだ。
変なのはエレオノーラだけで十分です。
私の前に向き合ってソファーに座って美味しそうにお菓子を食べているエレオノーラを見てため息をつく。
その隣にはダンディーなおじ様が座っている。
さっき私に謝罪したのはこのバトラーという吸血鬼だ。
その後ろには美形の吸血鬼が6人立っている。
吸血鬼ってみんな美形なのかな?
「私どもが今回お伺いしたのはポラリス王国に我らを受け入れていただきますようお願いするためです。ポラリス王国は他種族の共存を目指していると伺いました。どうか我らにも協力させていただけないでしょうか?」
そう丁寧に頭を下げてくるバトラーさんを見て少し考える。
魔眼で見る限りエレオノーラもバトラーさんも悪い人ではない。
エレオノーラはちょっと変だし、バトラーさんは切れ者ではあるみたいだけど。
まあそれはいい。
問題はおそらくというか間違いなく吸血鬼の中で一番上の立場なのがエレオノーラだろうということなんだけど。
「有難い申し出なんですが一つ確認したいことが。」
「なんでございましょう?」
「吸血鬼のリーダーを決めて頂くことになると思うんですが」
そう言って私はエレオノーラをちらりと見る。
バトラーさんは私の言いたいことが分かったみたいで
「そ、そうでございますね。そうなればエレオノーラ様が我らのリーダーとなるでしょう。こう見えましても千年前、エレオノーラ様は吸血鬼の国を治める姫でございました。我らは姫をその時からお支えしてきた者です。ですので陛下にご迷惑をおかけしないようなんとしてでもエレオノーラ様をフォローいたしますのでどうかお許しいただけないでしょうか?」
バトラーさんが必死になぜか決意をした目でそう答える。
今までエレオノーラのフォローがすごく大変だったんだろうな。
というかクロードが頷いている理由がよく分からないです。
「・・・分かりました。エレオノーラをリーダーとして吸血鬼のみなさんを受け入れましょう。これからよろしくお願いしますね。」
「おお!ありがとうございます!」
「うむ。こちらこそお願いするのじゃ!」
朝からばたばたしたけど、こうして吸血鬼を仲間にして全種族が集まったのだった。
「えーと、これから顔合わせを兼ねた代表会議を行います。ここにいるみなさんでこれからポラリス王国をよい国にしていきたいと思います。よろしくお願いします。」
私がそう挨拶をするとみんなが拍手をしてくれる。
挨拶ってこんなのでいいのかな?
なんか学校の新任の先生の挨拶みたいになったけどまあいいや。
席に座っているのは私と各種族の代表が7人。
人間のクロード。
エルフのセリオンさん。
ドワーフのゴードン。
龍人族のカミロ。
人魚のレティシア。
獣人のローラン。
吸血鬼のエレオノーラ。
その後ろに立っているのは種族の代表が連れてきた護衛も含めた従者が二人までということになっている。
私は女王だから二人までという規制はないけど。
「まずみなさんの立ち位置についてなんですが、当然のようにこの国にも貴族を設置しようと思っています。みなさんはもちろん貴族になるわけですが、各種族の代表を大公という爵位にします。大公は種族の代表だけの爵位になるのでこれ以上増えることはありません。」
私は種族の代表を他の貴族とは違う特別な立場にした。
これなら力をつけてきた貴族が現れたとしても種族の代表を蔑ろにすることはできない、はず。
「なにか異論はありますか?」
何人かはいきなり最も高い爵位をあっさり与えられたことに驚いたみたいだけど、特に問題はない様子なので私は話を続ける。
「じゃあまずは領地から決めましょうか。」
私はテーブルの上に大きい地図を広げた。
それを見たみんなは感嘆の声をあげる。
地図というものはとても高価なものだ。
それは精密であればあるほど高価になる。
私が今広げた地図はダンジョン機能でつくったものなのでこの世界では見たこともないようなとても精密な地図になっている。
ちょっと得意気になりながら私はポラリス王国の中心を指差す。
「ここがこの王宮になるわけですが、まずはこの周りを王都として女王の直轄地にします。」
私は地図にぐるっと線を書き込んだ。
「王都がどれぐらいの大きさになるかはまだ分かりませんが、とりあえずこの線で囲んだ場所が私の直轄地です。」
「なかなかの広さですな。」
そう呟いたセリオンさんに私はにこりと微笑みかけた。
「大丈夫。みんなの領地もこのくらいだから。」
「「「「「え?」」」」」
何人かの驚きの声が重なった。
それはそうだろう。このくらいの広さの領地といえば他国の貴族の領地と比べてるとかなり広い。
でもポラリス王国の貴族はここにいる七人の大公しかいないから仕方がない。
一番偉い貴族が七人もいてそれ以外の貴族がいないなんておかしな話なんだけれども。
私は大体同じ大きさになるようにポラリス王国の国土を王都を除き七つに分けた。
「国土をこうして分けて、みなさんにはこの分けた領地をそれぞれ治めてもらいます。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
ゴードンが慌てたように声を出す。
「普通はもっと多くの貴族がそれぞれそれよりもっと狭い領地を治めるもんじゃろ。いくらなんでもいきなり全ての領地を分ける必要はないんじゃないか?また新しい貴族が出てきたらそいつらに領地を与えればよかろう。」
たしかにゴードンの言う通り、それが他国でも普通のことだ。
でも私が考えているのはちょっと違う。
「べつにこの広さの領地をちゃんと管理しろっていうわけじゃないよ。それぞれの領地の一角を都市にして、まずはそこをちゃんと管理してもらえればいい。余裕が出てきたらもっと開拓をして都市を広げるなり、新しい町をつくってもいいし。また新しい貴族に自分の領地を分け与えてもいい。」
私の言葉にみんな驚いた顔をする。
普通、領地を与えるのは王の仕事だ。
その特権を大公に認めるのだからみんなが驚くのも当たり前だと思う。
「でもほいほい領地をあげたりしないでね。そこはみんなの裁量次第だから。」
「そうなると王の権力が小さくなるのではありませんか?」
ローランさんが心配そうに聞くけどそこもちゃんと考えてある。
私はべつにそこまで権力が欲しいわけではないけど、後世に王よりも強い権力をもった大公が好き勝手しないとも限らないからね。
ここにいるみんなは大丈夫だと思うけど。
「たしかに大公も領地を与えられるけど、爵位を与えることができるのは王だけにするから。騎士爵は別として。もちろん爵位を上げたり、取り消したりできるのもね。あと、大公だけは跡取りを王が承認するという形にする。」
「大公は世襲制ではないということですか?」
「正確には大公家の中から王が選ぶということになるんだけど。必ずしも大公の一番目の子息が跡取りになるとは限らないってこと。娘でも大公の兄弟でも大公の縁者なら可能性がある。さすがに奥さんや婿養子は無理だけど。もちろん連れ子も無理。大公の推薦ぐらいは認めるけど。」
私の話にみんな「なるほど」と納得してくれたみたいだ。
しかし跡取りを自分で自由に決められないのは大公にとってなかなか不利なことじゃないだろうか。
いくら縁者の中からしか選ばれないといっても。
みんな権力に執着しない人たちで良かった。
まあそんな人を最初から選んだりはしないんだけど。
これで大体他国とは違う貴族の制度を説明することができた。
あとまずは大まかな法律を決めて、大公たちの役職、それから領地についてそれぞれの大公と決めることがあるかな。
まだまだ話し合いは長くなりそうだ。
花梨「あー、疲れたー・・・」
クロード「女王なんだからそんなだらしない格好をしない。」
花梨「いいじゃん、休憩中なんだからさー。そんなんだから・・・」
クロード「なんですか?」ギロリ
花梨「な、なんでもありませんです。はい。」
クロード「はー。まったく、もっと女王らしく振る舞ってほしいものだ。心労で俺の胃に穴が開いたらどうしてくれる。」
花梨「・・・クロード。格好いいんだから禿げないように気をつけてね。」
クロード「・・・。」
花梨「あいたたたた!」
結局クロードを怒らせる花梨なのでした。




