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お出かけと新たな仲間

「花梨様!エレンさん!このパンとてもいい匂いがしますよー!」


 現在、私とエレンとリリアーヌは約束通り町に出掛けていた。

 リリアーヌはとても楽しそうにはしゃいでいたし、エレンもこんなふうに友達と出かけるのは初めてらしく楽しそうにしている。

 もちろん私も楽しいんだけどね。


「へー、このパンって木の実を練り込んでやいているんだ。」


「甘くて美味しいって最近評判みたいね。」


 リリアーヌがいい匂いだといったパンはたしかに甘い匂いがしてとても美味しそう。

 エレンが評判だと教えてくれたのも納得できるほどに人がたくさん並んでいた。


「私このパン食べてみたいです!」


「そうだね。美味しそうだし買ってみようか。並ぶのもお出かけの醍醐味だろうし。」


 ちょっと並ぶのは面倒だと思ったけど、それも楽しいことだと思い直して私たちは列に並んだ。

 リリアーヌもエレンも凄く食べたそうにしていたしね。

 並んでいる間は次はどこにいくかとか、アクセサリーを買いたいとか話しているうちに私たちの番がきた。


「いらっしゃいませ!」


「この木の実を練り込んだパンを3つください。」


「かしこまりました!大銅貨9枚になります。」


 私はちょうどでお金を払った。

 この世界ではお金は全て貨幣だ。

 だいたい地球のお金に換算すると銅貨が10円くらいで、大銅貨が100円、銀貨が1000円くらいかな?

 他にも金貨、白金貨、王金貨などがある。

 王金貨はお金持ちでもめったに使わないそうだけど。

 銅貨、大銅貨以外は100枚で貨幣が変わっていくので分かりやすい。

 良かった、この世界が十進法で。

 じゃないと地球で十進法に慣れているから計算が大変になっていたところだった。


「はい、ちょうどですね。ありがとうございました!」


 パンを受け取って、邪魔にならないように隅に移動し早速包みを開ける。

 木の実の甘い匂いがふわっと広がりとても美味しそう。

 一口食べるとパンはさくっとしていて木の実の甘い味が口いっぱいに広がる。


「・・・美味しい。」


「そうですね。立ちながら食べるのは行儀が悪いと起こられそうですけれど、こういうのもいいですね。」


「ふふ。たしかに王女様が買い食いしているのを知られたら怒られてしまうかも。」


 私たちはそんなことを話しながらもあっという間にパン一個を食べ終わってしまった。

 美味しいパンに満足しつつ、私たちはいろんな店を歩いて回った。

 なんかこうして友達と遊ぶのは前世でもなかなかできなかったからちょっと新鮮。

 ポラリス王国でもこんなふうに買い物のできるようになるのかもしれないな。

 ちょっぴり感動しながら私はこの時間を楽しむのだった。







 三人でのお出かけも終わり私たちはシルフィートの王宮に戻ってきた。

 楽しかったけど、ずっと歩いていたので少し疲れてしまった。


「女王陛下。紅茶をどうぞ。」


「ありがとう。」


 シルフィートの侍女さんが紅茶を入れてくれた。

 私が紅茶を入れてもあんまり美味しくないんだよね。

 やっぱり入れ方によって味が違うんだろうか。

 まあ、人が増えてから自分で紅茶をいれることもなくなったけど。

 そんなことを考えながら紅茶を飲んで一息ついているとドアがノックされた。


「失礼いたします、ポラリス女王陛下。エルフのセリオン様とエレン様がいらっしゃっています。」


「え?セリオンさんが?」


 セリオンさんとエレンが私に会いに来たらしい。

 そういえばあれからセリオンさんに会ってなかったな。

 エレンとはさっき会ったばかりだけど。


「入ってもらって。」


「かしこまりました。」


 侍女さんが扉を開けるとセリオンさんとエレンが入ってきて私に挨拶をした。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありません、ポラリス女王陛下。」


「いいえ。私のほうこそあれから顔をださずに申し訳ありません。ご無事でなによりです。どうぞ、お座りください。」


 私が座るように促すとセリオンとリリアーヌは一礼をして向かい側に座った。

 そしてクロードは私の後ろに立つ。


「まずは、女王陛下とは知らず先日のご無礼をお許しください。そしてこのような一介のエルフをお救いくださったこと深く感謝いたします。」


 そういうとセリオンさんとエレンは深々と頭を下げた。


「そ、そんな!私は当たり前のことをしたまでです。頭を上げてください。」


 私が慌てていうとセリオンさんとエレンは頭をあげた。


「本当にお優しい方でございますな。普通の貴族は平民に対してあそこまですることはありませんよ。」


「へ?そうなんですか?」


「はい。貴族と平民は住んでいる世界も違いますからな。」


 うーん、やっぱり貴族と平民では大きな差があるのかな?

 平民は貴族に逆らえないとか?

 でもあんまりそういうの好きじゃないな。


「ポラリス王国では貴族と平民の距離が近い国を目指しています。」


「ほう。それはそれは。」


「今ならポラリス王国は絶賛住民募集中ですよ。いかがです?」


 セリオンさんにポラリス王国への移住を勧めてみるとセリオンさんの目がすっと細くなる。

 せっかくエルフを見つけたんだからぜひポラリス王国に来てもらいたい。

 でもってセリオンさんにエルフの代表をしてもらいたい!

 私は目からビーム・・・じゃなかった、目で必死に訴える。

 なんかセリオンさんがちょっと引いたのは気のせいだろうか。


「それは私たちエルフをポラリス王国に受け入れてくださるということですかな?」


「もちろんです。ですがポラリス王国はできたばかりで未完成のみの字もないくらいまだなにもない状態なんです。」


「は、はあ。」


 あれ?なんか反応が薄いな。

 セリオンさんもエレンも目が点状態になってる。


「陛下。その表現の仕方だと未完成ではないということになってしまう、と思う。」


 クロードが私にこっそりと教えてくれた。


 ・・・。


「こ、こほん。とにかく国を発展させるため、ぜひセリオンさんのお力をお借りしたいのです。」


「私の力をですかな?」


「はい。実はですね・・・」


 私は大雑把に自分がどんな国をつくろうとしているのかをセリオンさんに説明した。

 エレンが私の話を聞いて表情をころころ変えながら驚いているのが面白い。

 あ、ごめんなさい。

 集中ですね、集中。


「なるほど。全種族の平等と共存というわけですか。」


「はい。そこでセリオンさんにはエルフの代表のようなものをお願いしたいのです。いかがでしょう?」


「ふむ、そうですな。」


 セリオンさんはしばらく黙りこむと私の方を見てはっきりと告げた。


「正直申し上げますと、夢物語ですな。」


「ちょ、ちょっとお父様!」


 セリオンさんの言葉にエレンは驚いて諌めるがセリオンさんは話を続ける。


「今までにも私はそのような理想を掲げてきたのもを大勢見てまいりました。これでも長生きですからな。しかし、誰一人として実現することができなかった。なぜかお分かりになりますかな?今現在優位な位置にいる人間の国々がそれを認めずつぶしていくからですよ。女王陛下はそんな国々と対抗できるほどの戦力がお有りですかな?平和な方法だけではその理想は実現できないのです。」


 部屋がしん、と静かになる。

 ふむ、私以外にもそんなふうに考える人がいたとは。

 ふふふ、だがセリオンさん!

 私には今までの人たちと決定的に違うことがある!


「セリオンさん。あなたに見ていただきたいもの(?)があります。」


「見てもらいたいもの、ですか?」


 セリオンさんが不思議そうな顔をする。


 ふふふ。聞いて驚け!見て驚け!

 これが私の秘密兵器、ドラゴンだ!


「これは?」


「ドラゴンです。」


「は?」


「ドラゴンです。」


「ワイバーンの子供かなんか・・・」


「ドラゴンです。」


「あ、はい。」


 セリオンさんは素直に返事をしてくれた。

 理解できたようでなにより。


「このドラゴンは本物の天竜なんです!体の大きさの変化も自由自在!それがポラリス王国には5体もいます!さらにさらに!海竜一体持ってけ泥棒!」


「いや、持っていけないから。というか海竜が一番無理だと思うから。」


 私の売り込みに冷静に突っ込んでくるクロード。

 まったく、せっかく盛り上がっているのに空気をよんでほしいものだ。

 言葉の綾というものが分からないのかね。


 私の話を聞いたセリオンさんがぐいっと身を乗り出して朱凰と翡翠を凝視してきた。


「なんと!?エンシェントドラゴンが実在したのか!?」


「エ、エンチャント・・・?」


「エンシェントです。」


「あ、はい。」


「しかしまさかこうしてこの目で見ることができるとは。確かにエンシェントドラゴンなら他国も迂闊に手出しをできないでしょうな。」


 セリオンさんは勝手に一人で納得しているけど、エンチャン・・・じゃなくてエンシェントドラゴンって?

 私はこっそりと膝の上にいる朱凰に聞いてみる。


「こそ(朱凰たちってエンシェントドラゴンなの?)」


『こそ(うん、まあ、そうともいう。)』


 ・・・。


「そうなんです!エンシェントドラゴンがポラリス王国の最強の砦!他国が侵略してくることは難しいでしょう!しかも島国ですし。例え空から海からやってきても大丈夫!人生で一度は言ってみたい名台詞『凪ぎ払え!』をドラゴンで実践することができちゃます!・・・まあ、実際にするとちょっとシャレにならないですけど。」


「「でしょうね!」」


 クロードとエレンが息ぴったりに突っ込んできた。


「そんな物騒なセリフ言ってみたいやつなんかいるか!」


「そうだよ!そんなセリフ「なるほど。」ちょ、ちょっとお父様納得しないで!」


 ふふふ。二人とも元気だなあ。

 そんなに私の売り込みが心に刺さったのか。

 頑張ったかいがあったな、うん。



 そんなこんなで結局はセリオンさんたちはポラリス王国に移住することになるのでした。









「セリオンさんたちがポラリス王国に来てくれることになってよかったね。」


「・・・そうだな。」


 あれからセリオンさんたちは移住の準備と説明をするということで自分たちの集落に戻っていった。

 私の努力が実った結果ですね。


「陛下。実は会ってもらいたい人がいるんだが。」


 クロードは突然そういうと連れてきてもいいかと聞いた。

 私が許可するとクロードは部屋を出ていった。

 クロードが会ってほしい人って誰だろう?

 しばらく待っているとドアをノックしてクロードが戻ってきたので入るように促すと一人の女性を連れて入ってきた。


「陛下。彼女が陛下に紹介したい人物だ。」


「うふふ。はじめまして女王陛下。レティシアと申します。」


「は、はひ。」


 目の前のレティシアと名乗った女性はヒレ耳持った美しい人魚族だった。

 海のような色をしたウェーブの髪に髪と同じ色の瞳。

 男女問わず見惚れるしまいそうなほどの色気と大人の女性の艶を持っているとびっきりの美人。

 そしてなにより見たことのないくらいの巨乳だった。

 私は思わず視線を自分の胸元へと移す。


 ・・・。


 べ、べつに羨ましくなんかないもんね!

 私はちょと慎ましいだけで貧乳ってわけじゃ・・・


「どうしたんだ?」


「あ、いや、なんでもないよ。」


 うん。なんでもない、なんでもない。

 私は常に平常心。


「それで?」


「・・・なんか目が怖いんだが。」


「いやだなあ。気のせいだよ、気のせい。ハハハハ。」


 そう、気のせいなのだよ。

 劣等感なんかこれっぽっちもありゃしませんですよ、はい。


「まあいいか。彼女は俺がお世話になった人なんだが、見ての通り人魚族だ。人望も厚く、なんといっても推薦したいのは彼女の交渉術だ。おかげで何度痛い目に・・・いや、なんでもない。」


「お、おう。」


 クロードが遠い目をして言うのでなんとなくクロードの苦労が想像できた。

 うん、ご愁傷様でした。


「こほん。とにかくだ、彼女が味方となれば心強い。今回の話をして勧誘したら快く引き受けてくれた。まあ陛下が認めたらの話だが。」


「お話は伺いました。私も陛下の目指す他種族の国を見てみたいんですもの。ぜひ協力させてほしいわ。どうかしら?私は陛下のお眼鏡に敵いまして?」


 艶のある笑みを浮かべながら微笑むレティシアを魔眼でじっと観察する。

 悪い人ではなさそうだし、クロードの推薦だからいいかもしれないな。

 そう考えながらレティシアをずっと見ているとクロードに頭を叩かれる。


「人の胸をじっと見ているんじゃない!」


「見てないし!べつにちょと分けて欲しいとか思ってないし!」


「それ絶対思っているだろう!」


「わ、私が貧乳だっていいたいの!?」


「いや、そんなことは一言も言ってないだろ?!」


 私たちが言い争いを始めるとレティシアは微笑ましそうに私たちを見て「あら。仲がいいのね。」とか言っていた。


 まあちょと騒動があったけど、レティシアにポラリス王国に来てもらうことになった。

 これで後は獣人族と吸血鬼だけだ。

 獣人族には目星がついているんだけど。

 とにかく早く勧誘を終えて国の運営に移りたいな。

レティシア「こんにちは。レティシアのなんでも相談へようこそ。何か相談したいことはあるかしら?」

花梨「はい!どうしたら胸がもっと大きくなりますか!」

レティシア「そうねぇ。まあそればかりは生まれもったものじゃないかしら。」

花梨「・・・。」

レティシア「はい。今回のなんでも相談はここまでよ。少しはためになったかしら?」

花梨「今のどこにためになる要素が!?心の傷を抉られただけだったんですけど!」

レティシア「斬新なコメントどうもありがとう。みなさんもぜひ相談してみてね。次回をお楽しみに。」

花梨「コメントの返しが雑!というかまたするんかい!」

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