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エルフの姫とテンプレ貴族

 カミロを仲間に迎えて私たち三人は泊まっている宿に一旦帰ってきた。

 カミロに翡翠を紹介しようと思ったのだ。

 翡翠を見せてドラゴンだと紹介すると


 ・・・なぜか全力で拝み始めた


 カミロのクールで冷静なイメージが崩れるくらいだった。


「龍人族にとってドラゴンというのは崇拝の対象だ。本物の竜神に会えるなんてとても幸運だ。ポラリス王国に仕えることができて良かった。ドラゴンの主であるあなたに一生の忠誠を誓おう。人間に保護を求めることに反対していた部族の者たちも喜んであなたに仕えるだろう。」


 ということらしいです。

 さすがドラゴンだね。

 ちなみにドラゴンは世界に6体しかいないらしい。

 そのうち5体がポラリス王国にいるとかすごいことじゃないだろうかと思っていたら、もう1体はなんと珊瑚のことらしい。

 ドラゴン全員集合しているじゃん!

 何気にうちの国最強じゃないだろうか?

 あとは亜竜と呼ばれるワイバーンと恐竜みたいな地竜がいるらしいけど、竜モドキではあって本物の竜、ドラゴンではないらしい。

 なんじゃそりゃ。



 私たちはこれからカミロの仲間にポラリス王国に保護を求めることを説得しに行こうということになった。

 みんな快く来てくれるといいんだけど。

 ・・・カミロは絶対に大丈夫だと言っていたけどね。


 王都をでてしばらく歩いた人のいない平原にいるということだ。

 しばらくってどのくらい?と聞くと普通に歩いて1時間くらいらしい。

 いや、それしばらくって言わないから!

 そう訴える私を無視してカミロとゴードンはさっさと先に行ってしまう。

 誰だよ、さっき忠誠を誓うとか言ってたのは。

 早速無視してるじゃんか・・・


 王都は城壁に囲まれていて門のところにはもちろん見張りがいる。

 外にでるときは特になにもないけど、中に入るためには身分証を提示するか税金を払わないといけない。

 身分証がない人は犯罪をしていないか魔道具で調べられるらしい。

 まあ普通そうか。

 なんか魔道具で調べるって異世界って感じだね。

 入り口で並んでいる人たちを見て説明を受けた私はうちでもそこらへんをどうするかなあと考えていた。



 王都を出ると一面の麦畑が広がっていた。

 畑があるところは田舎のイメージだったからちょっと驚いた。

 王都が攻められたとき食料を確保するための常識だそうだ。

 なるほど、確かにそう考えるとそうなのかもしれない。

 日本ではそんなことなかったからなあ。


 初めて見る異世界の景色にゴードンたちに色々質問しながら歩いていく。

 カミロが「このペースだといつ着くか分からない・・・」とぼやいていたけどそんなの無視。

 カミロのペースに合わせたら筋肉痛どころの話じゃない。

 というか車に走ってついていけと言われているようなものだ。

 無理に決まってるよね。


 しばらくすると疲れた(私が)ので休憩することになった。

 カミロは渋っていたけど。

 いやいや!しばらくっていっても1時間ぶっ続けで歩いてきましたからね!

 私かなり頑張ったよね?

 腰を下ろして水を飲みながら休憩しているとカミロが何かを見つけたらしい。


「なにか落ちているな。・・・あれは人じゃないか?」


「へぇ~人ね~・・・人!?」


 人が落ちているってどういうこと!?

 私は慌ててカミロのいう方に行くと道の脇に人が倒れているのが見えた。


「たしかに人はいたけどせめて倒れてるって言おうよ!」


「同じことじゃないか?」


「いや違うでしょ!」


「・・・そんなことよりお前さんたち助けてやらんか。」


 ゴードンが呆れた様子で呟いた。


「そ、それもそうだね。」


 私は倒れてるいる人に近寄り仰向けして寝かせる。

 露になったその人の顔を見て私は思わず見惚れてしまった。

 鮮やかなライトグリーンのサラフワな髪に整った美しくも可愛らしい顔立ち。

 まるで妖精のようだ。

 きっとにこりと微笑めば天使のように可愛いだろう。

 しかし今は苦しいのか顔をしかめて気を失っている。


「キレ~!」


「嫌味か?」


「いや、そういうわけじゃないと思うぞ。」


 私が美女?美少女?に見惚れていると後ろでこそこそ話している声が聞こえるけど今はそれどころじゃない。

 私は気になって仕方がないことがあるのだ!


「み、耳が尖ってる!」


 そう!少し長くて尖っているこの耳はまさしくエルフ耳!

 この子は私が異世界に来たら絶対に会いたいベスト3に入るまさかのエルフちゃんじゃなかろうか!?

 私は我慢できなくてそっとエルフ耳に手を伸ばす。


 ・・・おおー!本物だー!


 私は今、猛烈に感動しています!

 美人エルフ万歳!

 そういえばこの子何歳なんだろうか?

 見た目は私と同じくらいに見えるけどやっぱりエルフだから見た目通りの年齢じゃないんだろうな。

 ・・・そういえば私って何歳になるんだろうか?


「一人で盛り上がっているところすまんが、その子はどうするんじゃ?見たところ訳ありのようじゃが。」


 ゴードンに言われて見るとたしかにそのエルフは汚れていたし所々怪我もしているようだった。

 そんな状態でもこんなに綺麗なんてエルフは反則です!

 いや、この子が特別綺麗なのかもしれないけど。

 私が回復魔法をかけてあげるとエルフの怪我もなくなった。

 回復魔法は光属性の魔法で、光属性を持っている人は大抵使えるけどどのくらい回復するかは人によって全然違うらしい。

 ちなみに私の回復魔法はかなり回復するらしいです。

 前に私の回復魔法を見たリリアーヌがそう言ってた。

 それにしてもどうしてこの子はこんなところに倒れていたんだろうか?

 王都からも結構離れてるし。


「う、うぅ・・・」


「お?起きたかな?」


 エルフが小さくうめき声をあげてゆっくりと目を開けていく。

 おぉ!瞳は綺麗な蜂蜜色だ。


「ここは・・・?」


「え?えぇと・・・道?」


「「「・・・。」」」


 な、なにさ!みんなしてそんな残念な人を見るような顔をして!

 仕方ないじゃん!ここがどこかなんて知らないし!道しかないし!


「あ、あの、助けてくださったのですか?」


「え?まあ、怪我をしているみたいだったから回復魔法をかけただけだよ。はい、これ水。」


「あ、ありがとうございます。」


 エルフは私が渡した水をこくこくと飲むといくらか落ち着いたようだった。


「助けていただきありがとうございました。私、エレンと申します。」


「よろしくエレンさん。私は花梨っていいます。あの!エレンさんってエルフですよね?」


「え、ええ。そうですが。」


「わー!やっぱり!」


 私は思わず嬉しくなってエレンさんの手を両手で握りしめる。


「私エルフに会いたかったんです!ぜひ私と友達になって下さい!」


「と、友達?」


 エレンさんは突然のことに驚いたのかポカーンとしている。

 う、早まりすぎたか。

 まあ、そりゃそうだよね。

 目が覚めたら知らない人がいて友達になって下さいって突然言われたら誰だこいつってなるよね。

 私だったら間違いなく不審者認定するわ。

 自分で言っといてなんだけど。


「ごめんなさい。いきなりそんなこと言われても迷惑ですよね。今のは忘れて下さい。」


 諦めるつもりはないけど今日のところは引こうじゃないか!

 ・・・なんか私悪役みたいだな。


「い、いえ!そんな迷惑なんて!ただびっくりしてしまって。」


 私が少し落ち込んで(?)いるとエレンさんは慌てて首をふった。


「わ、私でよろしければ、その、お友達になって下さい!」


 エレンさんは顔を少し赤らめて恥ずかしそうに言った。

 か、可愛い~!

 なんですかこの子は!可愛いすぎでしょ!

 というか、え?

 今友達になって下さいって聞こえたんだけど。


「い、いいの?まだ会ったばかりだけど。」


「はい!花梨さんには助けていただきましたし、その、私お友達が今までいなかったので花梨さんがお友達になってくれたら私も嬉しいです。ダメでしょうか?」


 エレンさんは少し心配そうに目をうるうるさせて私を見てくる。


「ッ!?ダメなわけないよ!今日から私たちは友達ね!よろしくエレン。私のことも花梨って呼び捨てにして。敬語もいらないから。」


「はい!じゃなくてうん!ありがとう花梨。こちらこそよろしくお願いします!」


 私たちは笑顔で笑い合った。

 ああ、美しきかな女の友情。

 でも会ってばかりの人と友達になっちゃうなんて、私エレンちゃんが悪いやつに騙されないか心配です。

 え?私は大丈夫かって?

 ふふふ。私にはこの魔眼があるので大丈夫なのだよ!


「女ってすごいな。まさか会って数秒で友達になるとは。」


「いや、あの二人が変・・・特別なんじゃと思うぞ。

 すまんが娘さんたち。そろそろこの後どうするか決めて欲しいんじゃが。」


 ゴードンの言葉にはっとする私たち。

 いかん、嬉しすぎてすっかりゴードンとカミロの存在を忘れてた。

 というかゴードン、今私たちのこと変って言わなかった?


「こほん。エレン、この二人は私の連れ?でドワーフのゴードンと龍人族のカミロ。」


「エレンと申します。よろしくお願いします。」


「おう、よろしくな!わしはゴードンじゃ。」


「・・・カミロだ。よろしく。」


 ゴードンとカミロも挨拶を終わらせたところで私はエレンに倒れていた理由を尋ねる。


「ねえ、エレン。どうしてこんなところで倒れていたの?」


 そう聞くと笑顔だったエレンが眉をひそめた。


「それは・・・私逃げてきたの。」


「逃げてきた?」


 エレンの話してくれた内容をまとめると

 ・王都に出掛けていた

 ・以前から求婚されていた貴族に見つかってしまった

 ・しつこくつきまとわれた

 ・王都から出てしばらくすると何者かに襲われた

 ・なんとか逃げてきた


 こんなものか。

 まあ襲ってきたのはそのしつこい貴族だと思うけど。

 やっぱりそういう貴族っているんだね。

 ちなみにその貴族は公爵の子息らしい。

 まさかの結構な大物だった!?

 なんでも権力を縦に我が儘で好き勝手するバカで有名だということだ。


「でも以前から求婚されていたんでしょ?そんな相手ならすぐに問答無用で連れていきそうなものだけど。」


「そうだね。これでも私は族長の娘なので簡単には手が出せなかったのだと思う。」


「族長の、娘・・・?」


 あの、エレンさん?

 今かなりの爆弾発言しませんでした?


「なるほどな。あんたはエルフの姫だということじゃな?」


「ひ、姫?」


「なんだ?知らないのか?エルフは国を持たないが大きな集落をつくって森のなかに住んでいて一族長の娘ともなればその一族の姫という立場だぞ。」


 カミロの言葉に私は衝撃を受けた。

 おう、まさか初めての異世界での友達がエルフの姫だったとは。

 道理でエレンに友達がいないわけだ。

 いや、姫でも友達いてもいいと私は思うよ!

 私も友達欲しいし!


「それでエレンはこれからどうするの?」


「集落に帰ろうと思う。それなら簡単には襲われないと思うし。」


 なるほど。

 根本的な解決にはならないけどそれが一番安全だもんね。


「分かった!集落まで私たちも着いて行くよ!また襲われるかもしれないし。」


「え!?いいの?」


「うん!友達が心配だし。いいよね二人とも。」


「わしは構わんが・・・」


「俺は先に仲間のところに戻ってもいいだろうか?早く話をまとめておきたい。説得もしないといけないしな。」


 カミロは早く帰りたいらしい。

 まあ説得にも時間がかかると思うしね。

 それにカミロがなかなか帰らないと仲間の人たちが心配するかもしれない。


「了解。じゃあ今度会うまでに仲間の人たちに話をつけておいてね。」


「任せておけ。」


 私がOKするとカミロはすぐに走って行ってしまった。

 やっぱり早いなあ・・・。


「本当に良かったの?」


 エレンが少し心配そうに聞いてくる。


「大丈夫、大丈夫。急ぐ旅じゃないし。」


 それにエルフの集落に行けたらポラリス王国に勧誘できるかもしれないし。

 私がたくさんのエルフに会いたいからじゃないよ?


「よし!それじゃエルフの集落へ出発!」


 こうして私とエレンとゴードンはエルフの集落に向かった。

花梨「次回テンプレ貴族の登場か!?でも大丈夫!エレンのことは私が守ってあげるからね!」

エレン「ありがとう!花梨みたいな素敵な子が初めての友達になってくれて凄く嬉しい!」

花梨「か、可愛いい!私も嬉しいよ!私にとってもエレンが初めての友達なんだから!」

エレン「本当?私が花梨の初めての友達だなんて照れくさいな。」


ゴードン「・・・二人とも友達がおらんかったんじゃな。」

花梨&エレン「ぐふぅっ!」


ゴードンの一言で大ダメージを受けた二人なのだった。

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