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ドワーフと滅びた国

 少し昔話をしようとするかのう。

 そうさな、今から100、いや200、もうちょと前だっかのう?

 まあ、そのくらい前の話じゃよ。

 ・・・なに?100と200では全然違う?

 若いんじゃからそんな細かいことを言うんじゃないわい!全く。


 まあ、それでな、その頃にはドワーフの国もあったんじゃよ。

 ドワーフ王国といってな、鍛冶が盛んでわしらにとって住みやすい、いい国じゃった。


 え?国の名前がそのまんま?ひねりがないじゃと?

 いいんじゃよ!ドワーフの国じゃからドワーフ王国で!

 獣人の国とて獣王国じゃろ?


 なに?獣王国は「人」をとってるからちょっとは工夫してる?

 ふん!じゃったら「ドワ王国」でどうじゃ?


 は?ダサい?そういうことじゃないじゃと!?

 お前さんも文句が多いのう!


 やれやれ、話がずれてしまったわい。

 まあ、ドワーフ王国があってほとんどのドワーフがそこに住んでおった。

 ドワーフ王国は一人の王が治めておってな、それはそれは立派な王じゃった。

 王でありながら戦場の前線に立ち、無類の強さを誇っておった。

 厳しくありながらも慈悲深い、なにより民のことを考えてくださる方じゃった。

 そんな王を誰もが尊敬し敬愛しておったんじゃ。

 そういうわしも王に惚れ込んだ一人でな。

 ああ、男として尊敬するという意味じゃぞ?

 これでも王の側近として仕えておったんじゃ。


 ん?わしは何歳かじゃと?

 はて?いくつだったか・・・

 うーむ、年なんぞいつからかもう数えなくなったわい。

 面倒じゃからの。

 人間と違ってドワーフは寿命が長いんじゃから仕方がないじゃろ。

 まあ、とにかくお前さんよりは長く生きとるな、わははは!


 うむ、また話がずれてしまったわい。

 さて、どこまで話したか・・・

 おお、そうそう!ドワーフの王の話じゃったな。

 立派な王のおかげで国は栄えておったんじゃ。

 ところがな、平和なときはいつまでも続かなかった。

 お前さん、レザラム帝国を知っとるか?


 またあの国かって、お前さんレザラム帝国となにか因縁でもあるのか?


 特にないけどシェルフィード王国襲撃がやつらの仕業かもしれないじゃと?

 ふむ、たしかにやつらならやりそうじゃな。

 いや、やつらしか考えられん。

 ワイバーンを戦に使っているからな、あの国は。

 大方、龍人族を捕まえて奴隷にでもして飼育させたんじゃろう。

 龍人族はワイバーンを家畜として飼っている種族じゃからな。

 食用にしたり、皮や牙を加工したり、戦闘に持ち込んだり・・・

 本来、あんな危険な生き物を操れるのは龍人族だけじゃ。

 おっと、わしとしたことがまたまた話がずれてしまったわい。

 レザラム帝国が大陸統一を掲げていることは知っとるか?

 あの国は力が全て!という思想の国でのう、昔から戦争ばっかりしておったわい。

 もちろんドワーフ王国もその対象でのう、良質の武器を求めて戦争をしかけて来よったわい。

 ドワーフの武器といえば一級品じゃったからのう。

 まあそれも昔の話じゃが。

 ドワーフ王国は王を中心とした強い戦士も大勢おったし武器も立派じゃったから、いくら相手が大陸一の大国でも渡り合えとった。

 それがある日を境にひっくり返ってしもうたんじゃ。


 ・・・想像できるか?

 いつものように戦争に備えておったら空から悪夢がやってきたんじゃ。

 今までそんなことなかったから近づいてくるそれは恐ろしかった。

 まるで死が迫ってきとるようじゃった。


 なんの話かって?

 ワイバーンじゃよ、ワイバーン。

 ドワーフ王国との戦争で初めてレザラム帝国はワイバーンを導入したんじゃ。

 さすがにいい武器を使っていようとワイバーンの大群には手も足もでなかったわい。

 王は臣下が止めるのも聞かず、少しでも多くの民を逃がそうと自ら戦場へと出ていってしまわれた。

 わしもあのお方と最後まで戦いたかったんじゃがなあ、王に民を連れて国から逃げることを命じられてしもうた。

 民を守る者も必要だとか言ってな。

 それなら王が行けばよかろうにとも思ったんじゃがな。

 まあ、王が逃げれば同じく逃げた民も追われ、王が見つかるまで迫害されていた可能性もあった。

 それが分かっていたからこそ王も自ら死地へ赴いたんじゃ。

 最後まで笑顔じゃった。

 本当に立派な王じゃったよ。

 ・・・ちょっと頑固じゃったがな。


 さて、これで年寄りの昔話も終いじゃよ。

 久しぶりに話したらすっきりしたわい。




  □□□□□□□□□□□□




 私はゴードンの話を静かに(?)聞いていた。

 まさかドワーフ王国の滅亡がレザラム帝国のせいだったとは。

 昔から迷惑な国だったんだ。

 しかもまさかのゴードンさん200歳代(もしくはそれ以上)疑惑。

 ていうかドワーフの王様って絶対に戦闘狂でしょ!

 戦場に行くのに笑顔とか、なんか美談にまとめようとしてるけど絶対に危ない人だよね!


 ・・・。


 まあ、当事者から色々な話を聞けたし勉強になったからいいとするか。

 なんか知りたくないことまで知ってしまった気もするけど・・・。

 とりあえず今はゴードンさんのことだ。

 王様の側近らしいから政治のことも分かるんじゃないかな?

 魔眼で見てもゴードンさんは悪い人じゃないみたいだし、嘘も言っていない。

 いやー、便利ですね魔眼って。

 あ、これはちゃんとON、OFFの切り替えかができるんですよ。

 いつも魔眼を使っていると疲れるしなんでも分かってつまらないから、それぞれの種族の代表を選ぶときに使ってそれ以外は魔眼を封印しようかと思っている。

 いい人ばっかりじゃ国は成り立たないと思うからね。


 私がそんなことを考えていると話をして落ち着いたらしいゴードンさんが少し寂しそうに話した。


「さっきの話からも分かるようにもうドワーフの王はおらん。あの方には子供はおらんかったから王族の者もおらんはずじゃ。」


「そう、ですか。」


「すまんのう。わしは役に立ちそうにないわい。ほとんどのやつは嬉々として・・・こほん、民を守るために戦場に行ってしまったからのう。」


 まさかのドワーフ全員戦闘狂疑惑。


「あー、えっと、民を守るために一緒に逃げた人ってゴードンさんだけですか?」


「いや、他にも何人かおったぞ。わしの部下たちじゃった。わしは部下に戦闘だけじゃなく勉学にも励むように指導しておったからのう。でないと他のドワーフのように脳筋に・・・いや、なんでもない。」


 私は思わず顔がひきつる。

 戦闘狂で脳筋とか最悪じゃんか!

 ドワーフの中でゴードンさんは数少ないまともな人だったのかもしれない。


「まあ、そのせいで逃げる方に回されてしまったがのう。あいつらには悪いことをしてしまったかもしれん。祖国のために戦いたかったじゃろうからなあ。」


 うん、まあたしかに頭がよくないと一般人を連れて逃げるのは難しいかもしれない。

 頭の回るゴードンさんとその教育を受けたゴードンさんの部下たちは民を守る役に任命されて、それ以外の脳筋は戦闘に行ったと。

 なるほど納得。


「ゴードンさんは今も逃げた人たちと一緒にいるの?」


「いや、最初はそうじゃったんじゃが、一ヶ所に固まっていると狙われる可能性があったからこのシェルフィード王国まで逃げてきてバラバラに別れたんじゃ。今は部下たちとたまに酒を酌み交わすぐらいで今は一人じゃよ。」


 私はゴードンの話を聞いて考える。

 これってゴードンさんは当たりじゃないだろうか?

 リーダーシップもあるみたいだし、ドワーフにしては珍しく頭がいい。

 最初からいい人材にすぐに出会えて私は運がいいのかもしれない。


「ねえ、ゴードンさん。ドワーフのリーダーやらない?」


「は?わし?」


 ゴードンさんはキョトンとした顔になる。


「あ、有難い話じゃが、わしはそんな器では・・・」


「そっかー、残念。毎日味の違う酒が湧き出る泉があるからドワーフのリーダーに所有権をあげようかと思ってたんだけど」


「はい!わしやる!絶対やる!」


 ゴードンさんがやる気をだしてピシッと手を挙げた。

 ふふふ。さすが便利なダンジョン、優秀だ。

 酒好きのドワーフもイチコロですね。


「ふふふ。これで好きなだけ毎日酒が飲めるわい。しかもタダで!今までどれだけ我慢してきたか!やっとこの日がきた!なあに、リーダーとか面倒そうじゃが酒のことを考えればそれも些細なこと。我慢してきたぶん、毎日浴びるほど酒を飲んでやる!ふふふ。」


 なんか一人で不気味な笑みを浮かべながらぶつぶつと呟いている。

 なんか怖い・・・

 酒の力が強すぎるよ・・・。


「そ、それじゃあゴードンさん。これからよろしくお願いします。一緒にいい国をつくりましょう。」


 お酒で即決されてなんか拍子抜けしたけど、悪い人じゃないから大丈夫・・・だよね?


「おう!もちろんじゃ!こちからもよろしくお願いするぞ!」


 私が手を差しのべるとキラキラ(いや、ギラギラ?)した顔でゴードンさんが固い、それは固い握手をする。


「・・・ちゃんと仕事しないと取り上げますからね?」


「なに!?あ、いや、それはもちろんじゃ!任せておけ!は、はははは!」


 大丈夫かな?この人。


 早速不安になる私なのだった。








 私たちはあの後店を出て町を歩いていた。

 歩きながらポラリス王国のことを話した。

 できたばかりの新興国ということ。

 人が全然いないこと。

 ダンジョンのこと。

 土地がダンジョンだということは驚いていたけど、魔物はいないし逆にそのおかげで酒の湧き出る泉が手にはいると知って喜んでいた。

 神様とか転生とかは話してないけど。


 外はもうすっかり暗くなっていた。


「そういえばゴードンさん。」


「ん?なんじゃ?」


 ゴードンさんはご機嫌に返事をした。

 なんだか今にも鼻歌を歌いだしてスキップしそうな勢いだ。


「た、楽しそうでよかった。それで質問なんだけどゴードンさんは他種族の知り合いとかいない?」


「他種族の知り合い?」


 私はこくりと頷いた。

 だって私知り合いとかいないし。

 ゴードンさんと会えたのは偶然だし。


「そうさなあ。お前さん、いや陛下と呼ぶべきかな?」


「べつに好きなように呼んでくれてもいいよ。」


「そうか。しかし一応わしも臣下になったわけじゃしな。それとわしのことは呼びすてで呼んだ方がよいじゃろ。」


「うーん、でも年上を呼びすてにするのもなあ。」


「王という立場なら年上が臣下になることもあるじゃろうて。なれておかんとな。」


 ゴードンさん、いや、ゴードンの話を聞いてたしかにそうかもしれないと思った。


「じゃあ、ゴードン。とりあえず公の場では陛下って呼んで欲しいかな。」


「分かっておるよ。それで話を戻すが他種族のことなんじゃがな。一人心当たりがある。龍人族は知っておるな?」


 私はこくりと頷く。

 もちろん龍人族のことは知っている。

 さっき何回か話にもでてきたし、それ以前に本で他種族のことについては調べている。


「龍人族は遊牧民なんじゃが、一人の族長と知り合いなんじゃ。まだ若いが仲間思いで信頼されておる。もし安住の地を得られると知ったら喜んで話に乗るじゃろうて。」


「あれ?遊牧民なのに定住してくれるの?」


「正確には遊牧民にならざるをえなかったといえるがな。」


 私はゴードンの言葉に首を傾げる。


「龍人族がワイバーンを家畜として飼っているのは知っておるか?」


「え?うん、知って・・・あ!」


「分かったようじゃな。」


 ゴードンがからからと笑う。


 そうだよ、ちょっと考えれば分かることだ。

 ワイバーンを連れているから定住したら危険視されてしまうかもしれない。

 それこそ国規模の討伐隊とか組まれてしまう。

 しかもワイバーンは危険かもしれないけどかなりのお金にもなる。

 しっかり対策をして挑めば大きな群れじゃない限り倒せない相手ではないみたいだし。

 てっきり好きで遊牧民やってるかと思ってたけどそういうわけでもなさそうだ。


「じゃあ、安全に定住できるって話したら協力してくれるかな?」


「それはお前さん次第だが、話は聞いてくれるんじゃないか?」


 うーん、そっか。

 私の努力次第というわけか。

 ゴードンはお酒で簡単に釣れたけど、さてどうしようかな?


 まあ、次の目星はついたし順調なんじゃないかな?

 よーし!今度は龍人族の勧誘頑張るぞ!

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