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種族とポラリス王国の方針

「・・・というわけなの。」


 私はシルキーから話をしてもらった後、混乱しているだろうブランやノワールに国の地形が変わった理由を説明した。

 ちなみに一応クロードとノワールもいる。

 みんなこの国がダンジョンだと聞いてとても驚いていたけど、ダンジョンの利点や安全性などを話したら、特に問題もなさそうだしかえって便利だからいいんじゃね?というところに落ち着いた。

 というか、ノワールはこのことを知らずにずっとここにいたのか・・・。


「たしかに便利でこれといって問題もなさそうだが、このことは国家機密にしておいた方がいいな。」


「ん?なんで?」


 クロードの言葉に首をかしげる。

 べつに大々的に広めるつもりもないけど、そこまで隠したいってわけでもないと思ってたんだけど。


「平地型のダンジョンというのは初めてだが、元々ダンジョンというのは魔物がいる危険な場所というイメージがあるからな。まあ一部にとってはいい稼ぎ場所でもあるんだが。それでもわざわざ住みたいなんて思わないだろうな。」


「あー・・・。」


 なるほど。

 考えてみればそれもそうか。

 誰も好き好んで危険な場所に住んだりしないよね。

 まあ危険ではないしそういうことでいいか。


「よし。それじゃあ、このことは国家機密ということで。反対意見とかある?」


 特に反対する人もいなかったので、ポラリス王国初めての国家機密ができた。

 特にたいしたことでもないんだけど、なんか初めて国の政策をやっている感じがしてちょっと感動。

 やっぱり宰相がいると違うね、うん。


「ところでずっと気になっていたんですけど、陛下、そちらはどなたですか?」


 ブランが私の後ろに控えているシルキーに視線を向けて聞く。

 いきなり部外者が重要案件を話すのは問題があるでしょう、だって。

 ただ説明がめんどくさかっただけでしょ、チクショウ。


「はじめまして、皆様。私はシルキーです。名前ではなく種族名ですのでお気をつけください。」


 とても綺麗で惚れ惚れするようなお辞儀をしてシルキーが自己紹介をする・・・無表情で。

 こう、もうちょっとにこっとでもしてくれたらいいんだけどなぁ。

 まあ、それはそれでちょっとなにを企んでいるのか怖い気もするけど。


「シルキーはダンジョンの管理者だから、さっきの説明で分からなかったことや疑問に思うことがあったら聞いてみて。私よりも詳しいから。」


 私の言葉に頷いたみんなは早速シルキーに色々質問していた。

「魔物を生み出すことはできるのか?」とか、「なんで平地型のダンジョンができたのか」とか、まあ色々。

 そんなかんじでダンジョンの説明を終えた。





 さて、みんなダンジョンのことはひとまず理解できて落ち着いたようなので、私は前から話そうと思っていたことを伝えようと思う。


「まずこの国を盛りたてていく上で国の方針を決めたいと思うんだけど、私は全ての種族が協力して手を取り合っていけるような国をつくりたいの。」


「それは他種族の住民を積極的に受け入れるということか?」


 予想していた質問をクロードがしてくれたので私は首を横にふる。


「ただ住民とするわけじゃなくて、みんなで国を支えていこうっていうかんじ。例えば政治にも関わったり、領地の管理を任せたりね。」


 みんなが目を見開いて驚いている。(ノワールとシルキー以外)

 それもそうだ。

 この世界ではあまり他種族が交わることがない。

 この世界の種族は主に人間、獣人、龍人、エルフ、ドワーフ、吸血鬼、人魚の七種族。

 ちなみに人魚といっても私が知っているような下半身が魚みたいなのじゃなくて、普通に二足歩行らしい。

 下半身が魚の方はマーメイドとよばれていて魔物の分類になる。

 まさか人魚とマーメイドが別だったと知ったときは驚いた。

 人魚の特徴はヒレ耳と手足の指に少し水掻きがあるぐらいであとは人間とそんなに変わらない。

 あと泳ぎが得意。


 七種族の他にはゴブリンやオークなどの魔物がいるけど、どちらかというと動物扱いかな?

 魔物はダンジョンや森の奥深くで自然発生して、知性の低いものは人族を襲ったりする。

 ダンジョンマスターの私が自分で魔物をつくっても、知性が低いので普通に襲われるらしい。

 一応シルキーも魔物の分類だが、知性も高く、人の言葉も通じて普通の魔物よりも強いので魔族とも呼ばれる。

 知性が高いと襲われないのは、ダンジョンマスターがその気になれば生み出した魔物を消すことができると知っているからだ。

 あと私が死ぬと私が生み出した魔物も死ぬということも。

 自分が消えてしまうのに、そりゃ襲えないよねぇ。

 魔族の数はとても少なくどうやって生まれるかというと、ダンジョンマスターがこれでもか!っていうほど魔力を大量につかって生み出すか、普通の魔物が長い年月をかけて力をつけて進化するかだ。

 しかし、前者だととてつもない大量の魔力が必要なので人並み外れた魔力を持つ人がダンジョンマスターになり死ぬ覚悟で挑まないといけないし、後者だとほとんどが討伐されてしまい魔族まで至れない。

 身を隠していたとしても強くなれないので、魔族がほとんどいないのが理解できる。


 シルキーが「マスターなら魔族を量産できますよ」って言ってたけど笑えないよね。

 ハハ・・・


 こほん。

 話が大幅にずれてしまったけど、この世界の種族のことについては大方理解できたと思う。

 まあぶっちゃけると、別の種族同士仲がいいわけではない。

 国にもよるけど種族差別とかあったりもする。

 主に人間の国だけど。


 国があるのは人間と獣人だけで、でも獣人の国はひとつしかない。

 他の種族は自分たちの国はもっていない。

 小さな集落をつくったり、比較的他種族に友好的な人間の国に住んだりしている。

 だから国によっては街中を他種族が普通に歩きまわっている。

 まあこれは他の種族に比べて人間の数が圧倒的に多いからという理由がある。


 ・・・また話がずれてしまったけど、まあ言いたいのは、他種族が協力している国なんてないということ。

 だからみんな驚いているわけで


「私が考えているのは、まず国の領土を八つに分けます。一つはこの王宮を中心とした王都だけど、それ以外の領地の経営をそれぞれの種族に任せます。もちろん任せる前にしっかり必要なことを学んでからになると思うけど。そして領地を治める領主にはなにかしらの大臣になって国の政治に関わってもらう。だから領主代行もいるね。まあそこらへんの細かいところは、他の国でいうところの貴族と変わらないと思ってもらえれば。」


 簡単にいうと他種族を貴族として認めるってかんじかな?

 あまり突拍子もない制度をつくってもぐだぐだになるだけだし、宰相をするクロードもなにしていいか分からないよね。

 ベースは他国と同じで問題点や改善点をなおしていければいいかな。


 私がそう言うとクロードが質問する。


「なぜ他の種族を政治に関わらせる必要が?」


「まず他種族を国の一員としたいのは、それぞれの種族が得意な分野があるでしょ?協力できれば一つの国で様々な分野が発展すると思うの。だってもったいないでしょ?実現できればドワーフの武器もエルフの上質な作物も他の種族の技術も全てを一つの国がもつことになるのに。それだけじゃない。もし戦争になったらそれぞれの得意な戦法でどんな敵や条件でも臨機応変に有利にたてることができる。」


「な、なるほど」


 みんなが驚いたり感心したように目を丸くして聞いている。

 そのことに初めて気づいた!というような顔だ。


「でも、ただ住まわせるだけじゃダメだと思ったの。自分たちがその国の一員で国を支えているっていう自覚を持たなきゃ。ほら、種族同士はあまり関わりを持とうとしないでしょ?住んでいるだけじゃどうせ自分たちだけでまとまって国のために動こうなんて思いもしないだろうし。でも種族の代表的存在が国を動かせる立場にあれば?自分たちの種族の意見が国を変えることができれば?そうなれば国の政治にだって関心がでるし、なにより国に愛着をもてる。都合のいい考え方かもしれないけど、国を発展させたい、守りたいって思うようにならないかな?」


 意地やプライドをはってそれぞれの種族の凄いところを認めず、取り入れないなんてもったいなさすぎる。

 もうちょっとお互い認め合えればいいのにね。


 決してファンタジーお馴染みのエルフやドワーフに会いたい!ケモミミさわりたい!って思ってこの政策を考えたわけじゃないよ!!

 いや、ちょっとは思ったかもしれないけど。

 そんな下心だけじゃないから!!


 私が心の中で言い訳をしていると、いきなりガタン!と音がして驚いて顔をあげるとなんともいえない顔をしてクロードが立ち上がっていた。

 よくみるとブランは泣いてるし、セルジュは深々と礼をしてるし、ノワールは・・・分からん!

 というかなんなのこの状況は・・・

 みんなの反応がおかしい。

 シルキーはいつもの無表情ありがとね!

 嬉しくないけど!


「陛下。俺は為政者の立場にありながらそのようなことは考えたこともなかった。今初めて目が覚めたような気分だ。この政策絶対に成功させよう。」


 クロードが目を輝かせてそう言ってくれる。

 なるほど。

 とりあえずこの反応は、みんな私の考えに賛同してくれるっていうことでいいんだよね?


「ええと、みんなありがとう。で、その政策のためにまず私がしようと思っていることなんだけど」


 みんな真剣な表情で私の話を聞いてくれる。

 ふ、ふ、ふ。

 この政策のためにはやっぱりこれしかないでしょ!


「私、旅に出ます!」


「「「「・・・はぁー!?」」」」


 みんなの驚いたような声がこだましたのだった。

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