シルキーと神様のドッキリ!?
「ここは、どこ?」
私たちはポラリス王国に帰ってきました。
帰ってきたはずでした。
でも帰ってきての第一声があれだったのも仕方がないと思うんです。
このポラリス王国の変わり果てた光景を見たら。
私たちの目の前に広がるのは森や山、川に湿地。
それのなにがおかしいかって?
だってポラリス王国は本当になにもないはずの平地だったの。
広い土地にポツンと城があるだけの。
ドラゴンに乗って空から見ていたから間違いない。
ポラリス王国には森や川なんて無く、こんな自然あふれたところじゃなかったはず。
つまり、私たちのいない数日の間で地形が変わったことになる。
どんな地殻変動があったらこんなことになるの?
というか地殻変動があったとしてもこんなに劇的に変わるはずがない。
「場所間違えたんじゃない?」
「いや、シェルフィード王国からそれほど離れていないのに間違えるはずがない。それに先ほど珊瑚に会ったではないか。」
私の言葉を否定するノワール。
確かにそうなんだけどね。
私自身、ここがポラリス王国なんだと確信している。
なんでかって?
だってあの王宮があるんだもん。
相変わらずそれ以外の建物なんてないけど。
戸惑っている私とブランとノワールを見てクロードたちが不思議そうにしている。
そりゃそうだよね。
元々のポラリス王国の地形なんて知ってるわけないし。
「と、とりあえず城に行こうか。ここにいても仕方がないし。」
私の言葉に頷くブランとノワール。
他は状況がいまいち飲み込めない様子だけど仕方がない。
いきなり「地形が変わっているんですよー」なんて説明されても困るだけだしね。
まあ、私の中で既に犯人は目星がついているんだけど。
というかこんなことができるのはあんにゃろーしかいないでしょ。
戸惑いつつも王宮まで帰り、私はブランとノワールにクロードたちの案内を頼んだ。
立場としては、クロードが宰相でセルジュが執事、その他はメイドたち。
これで政治うんぬんはクロードにまるなげ・・・こほん、相談できる。
クロードとセルジュ以外は使用人の宿舎に泊まるらしい。
その宿舎も立派だってメイドたちは感激してたのでいいとする。
生活に必要なものはシェルフィード王国で買っておいたので、荷物を自分たちの部屋に置いたあと、今日は休んで早速明日から働いてくれるらしい。
もうちょっと休んでてもいいんだよって言ったけど、笑顔で却下されてしまった。
とりあえず無理はしないように言っておいた。
さて。
私は地形が変わった原因を調べようと思うんだけど、正直どうやって調べればいいか分からない。
とりあえず自分の部屋に戻って考えようと部屋のドアを開け、ようとして閉める。
え?なんで閉めたのかって?
いやいや、見間違いじゃなければなんかいたんですよ、部屋の中に。
私あんな人知りませんですよ。
「いきなり閉めないでください。」
私がもう一度開けるべきか悩んでいると向こうからドアが開いてその人物が現れる。
「とりあえず中にお入りください。説明させていただきますので。」
答える間もなく中に連れ込まれ椅子に座らされる。
なんか強引だね。
「改めまして、はじめまして。私はシルキーです。名前ではなく種族名なのでお気をつけください。ですがシルキーと呼んでいただいて構いません。名前はありませんので。」
金髪で白い肌の冷たい雰囲気のメイド服を着た美しい女性は淡々と話す。
シルキーってたしか妖精だったよね?
この世界って妖精もいたんだ。
っていうかなんでメイド服?
「私はダンジョンから生まれた魔物です。神によってつくられ、いずれ現れるマスターへの説明を丸投げされました。」
「ま、丸投げ・・・」
丸投げの部分を若干強調して話すシルキー。
あの神様ならやりかねないけど。
「大まかな説明をいたします。まずこの土地の地形がいきなり変わったのは神のドッキリです。またの名を嫌がらせといいます。ドッキリというのは神自身が言っていたことなのであまりお気になさらないでください。」
「いやいやいや!気にするなって言われても無理があるでしょ!」
ドッキリってなんだ!ドッキリって!
しかもはっきりと嫌がらせって言ってるよ!
暇なの?あの神様は暇人なんですか!?
というか無表情で爆弾発言しないでほしい!
「はぁ。そうやっていちいち反応することがあの神を喜ばせていることが分からないのですか?」
「あ、す、すみません。」
シルキーは呆れたようにため息をついた。
確かにそうかもしれないけど、なんというか、突っ込まずにいられなかったというか。
「とりあえず説明を続けますので、静かにお聞きください。」
「は、はい。」
「この土地は元々世界には存在しないものでした。神が作り出現させたのです。ここまではよろしいですか?」
「うん。大丈夫。」
国をつくろうとしてできなかったから、とりあえずこの土地をノワールと珊瑚に守らせていたんだよね。
それはこの世界にくる前に神様に説明してもらった。
「しかし、神はただ土地を用意するだけではその後に手を加えるのが不便だと感じました。」
「は?」
「最初は自分で国をつくろうとしていたものですから。この世界に降りてくるわけにもいきまし、天界にいても自由にカスタマイズできるようにと考えたわけです。まあ、あのダメ神のことなので理解しなくて結構です。」
「あ、はい。」
ダメ神っていわれてるよ。
まあ、たしかに考えることがブッ飛んでるけど。
シルキーも「困ったものです」と言って首をふっている。
「まあ、そんなこんなで神が思いついたのが、『ダンジョン』です。」
「ダンジョン?」
ダンジョンってあれのこと?
洞窟とかに魔物がいて、たまにお宝が見つかるやつ。
「ダンジョンといっても様々です。王道の洞窟や塔、城などたくさんありますから。」
へぇ~。
ダンジョンって洞窟だけじゃないんだ。
それはちょっと行ってみたいかも。
「ん?でもそれが今回のこととどう関係があるの?」
「はぁ。鈍いですね。つまり、この国の地形が大幅に変わったのはダンジョンのカスタマイズによるものだということです。」
いやいやいや!
鈍いですねって言われても、なんでダンジョンのカスタマイズで国の地形が変わることになるんだよ!
「ですから、この国自体がダンジョンだと言っているのですよ。」
「・・・はぁーー!?」
ちょ、ちょっと待とうか。
落ち着け私、落ち着け・・・。
えーと、この国がダンジョン?
さっきダンジョンには色々あるって言ってたけど、もしかしてここは平地型のダンジョンだったってこと?
っていうかなんてところに国をつくろうとしてんだあの神様は!
「ねえ、それって危険なんじゃない?地形がいきなり変わったり、今のところ見てないけど魔物とか出てくるかもしれないし。」
ダンジョンに国とか普通にアウトだよね。
危険すぎるわ。
「なにをおっしゃっているのですか?ここほど安全なところはありません。地形の変形や魔物の配置はダンジョンマスターではないと起こせませんし。それに建物や設備なども一瞬で建てられます。」
うわぁ!それはめっちゃ便利!
工事とかしなくてもすぐできるってことでょ?
それどころか、あっちに山欲しいなとか、ここに川が流れるといいなとか、なんでもありじゃん!
普通、魔物とか出現して村を襲うこともあるけど、配置しない限りそういうこともないと。
「なるほど。たしかにそれは便利だし安全かも。それで?ダンジョンマスターって誰なの?もしかしてシルキー?」
「いいえ。もちろんあなた様です、マスター」
「え?なんで私?」
おかしい。
ダンジョンマスターになった身に覚えなんてないよ。
もしかしてこの国の女王だから?
でもそれならなんで私なにもしてないのに今回地形が変わったのかな?
「もともとマスターは、このダンジョンをつくった神でした。ですが、マスターがシェルフィード王国に滞在なされている間にちょちょいと地形を変えられた後、マスターの地位ををあなた様に譲られました。」
「・・・ちなみに一応確認だけど、地形を変えたのはなんのため?」
「最初に申し上げましたとおりドッキリとおっしゃっていました、本人は。」
「あ、あのやろーー!」
最初に聞いてたからなんとなく分かってたけどね!
というかドッキリというよりこれは完璧な嫌がらせですよね!?
一通り事態を理解した後に改めて確認すると、こう怒りがふつふつと
「ちなみにこちらを預かっております。」
そういってシルキーに手渡されたのは一通の手紙。
なんかものすごく身覚えあるんですけど。
「・・・これ読まないとダメ?」
「内容は私が説明しましたことをイラつくようにうざったらしくしたものですので大丈夫かと。」
私はにこっとシルキーに笑いかけると、
・・・思いっきり手紙を破いてやった。
それを見てシルキーもにっこり。
なかなかシルキーは優秀だ。
なんだか私たちはとても気が合いそうな気がした。
神様「ちょっとー!なんで手紙を渡す前に全部説明しちゃったのさー!私の心をこめて書いた手紙がー!」
シルキー「少しでもマスターの心労を軽くするためです。」
神様「・・・本音は?」
シルキー「神の悔しがる姿が見たかったからです。」
神様「・・・私一応神なんだけど?」
シルキー「うざいので関係ありません。」
神様「ぐほぉっ!私の扱い酷いよね!」
シルキー「気のせいです。」
神様「ふん。そんなこと言っていいんだ。私だって考えが」
シルキー「余計なこと話してないで早く仕事してください。しばきますよ。」
神様「ご、ごめんなさい。だから、や、やめて、・・・ギャー!」
シルキー最強説




