お城と黒い騎士
ようやく主人公の名前が分かります。
「う、う~ん・・・。」
日差しが窓から射し込んで少し眩しい。
昨日、カーテン閉め忘れたのかな?
まだ少し眠い。
このふかふかのベットでもう少し・・・。
「・・・あれ?」
私のベットってこんなにふかふかだったっけ?
重たいまぶたをゆっくり開けると、そこには見慣れない天井が。
「・・・あれ?」
なんだこのふかふかの天蓋ベットは!
なんだこの無駄に豪華で広い部屋は!
なんだこの着心地最高の高そうなネグリジェは!
ハァー、ハァー・・・。
朝からなんか疲れた。
「とりあえず、落ち着いて状況の確認をしよう。」
そうだ、そうだ。
確か私は、金髪美少女の神様に国を作って欲しいって面倒なことを頼まれたんだった。
ということは、ここはその神様が頑張って作ったって言ってたお城なのかな?
「うん、気合いが入っているのがよく分かるくらい豪華な部屋ね。」
やっぱりすごく建国してみたかったんだね。
神様なのに何してんだか。
「とりあえず、着替えてから城の中を探検してみようかな?お腹が空いてるし、まずは台所を探してみよう。」
そうと決まれば早速行動開始。
このネグリジェで外に出るのもちょっと恥ずかしいから、どこか着替えとか置いてないかな?
そう思って続き部屋っぽい感じの扉を開けてみる。
そして閉める。
「お、おう・・・。」
今のは見間違いかな?
なんかすごい量のドレスが見えたんだけど。
思いきってもう一回開けてみる。
「な、なんじゃこりゃー!」
前世の私は貧乏ではなかったけど、お金持ちでもなかった。
つまり、極々普通の一般人。
その一般人にこの光景は心臓に悪すぎる。
これは衣装部屋なの?
広すぎでしょ!
辺り一面にきらびやかなドレスが並べられ、靴やアクセサリーなどもある。
誰が一体こんなたくさんのドレスを着るのか?
「ま、まぁ、とりあえず動きやすそうな服を探しましょう。」
これ、ドレス以外あるの?
心配になりながら衣装部屋の奥へ行くと、そこには比較的ましなおしゃれなワンピースが並べられていた。
その中には中世の平民が着ているようなイメージの洋服も隠されていて、一緒に一通の手紙が。
『やっほー!無事、異世界転生おめでとう!あなたのためにドレスじゃない服も用意しておいたから、有り難く使ってね!貧乏人のあなたにはドレスだけじゃ大変だろうからね。私ってばチョー優しー!』
ビリッ!
「さて、このワンピースに着替えてさっさと台所を見つけてなにか食べないと。」
この平民の服はお忍びとかに使うのかしらね。
・・・え?手紙?
そんなのあったかなー?
さっきの寝室?みたいな部屋に戻って、早速廊下に出てみよう。
「さてと。台所はどっちかなッ!?」
広くて長い廊下に出てまず目についたのは、飾られた高そうな絵でもツボでもない。
私の部屋の扉の横に立つ立派な黒い鎧。
まさかこんなものが部屋の前に置いてあるなんて思わなくて、ちょっとびっくりしてしまった。
まるで部屋を守って入るみたい。
最初はこれも飾り物かと思ったんだけど、なんか気になってしょうがない。
「えーと。まさか人が入っているとかじゃないよね?あの神様がいきなり作った場所だし、ここにはまだ誰もいないはず。」
そう。
神様が結界やゴーレムが守っているから外部からの侵入はないって言ってたし、ここに誰かいるのはありえない。
まあ、誰もいないことだし、とりあえず・・・。
「こんにちは、鎧さん。北川 花梨です。今日からここの王様になりました。よろしくね。なんちゃって。」
ガシャンッ!
「え? 」
私が挨拶をしたとたん、鎧が片膝を折って丁寧にお辞儀をする。
ど、どうなってるの!?
やっぱり中に人が!?
「あの~、誰か入ってますか?」
鎧がゆっくり首を横にふる。
「あ、反応してくれた・・・。」
中に人が入ってないのに動くなんてまるでファンタジーじゃないの!
あ、ファンタジーな世界だったここは。
う~ん・・・。
これってあれかな?
神様の言ってたゴーレムってやつ。
でも私の予想と全然違うね。
これがなんなのかすごい気になるんですけど。
「ん?」
ずっと悩んでると、鎧さんが手紙を差し出してきた。
え?手紙?
読めってことかな?
『やっほー!私からのプレゼント第2弾だよ!喜んでもらえたかな?あなたの護衛の疑似生命体の鎧くんだよ。やっぱり王様には護衛がいないとね!でもそんじゃそこらの護衛じゃダメなの。護衛っていったら世界最強じゃないと!ってなわけで作ってみました世界最強の鎧!しかも黒いの!ロマンがあるよね!ちなみにこの子は自我があるから、そのうち話すようになるんじゃないかな?後、困ったことがあったらヘルプを頼ってよ!せっくヘルプ機能つけてあげたのに。っていうか、忘れてた?忘れてたよね?プププー!まだ何も分からないのにばっかじゃな・・・』
ビリッ!
ヘルプさん。鎧くんのこと教えて。
〈神が創りし、最強の騎士です。ゴーレムよりも上位の存在。不死身です。尚、自我があるので名前をつけると喜びます。貴方から名前を得ることで正式に貴方の物になり、絶対服従となります。そして話せるようになるかもしれません。〉
あ、話せるようになるかは分からないんだね。
それにしても名前か~・・・。
私ってネーミングセンスがないんだよね。
えっとー・・・。
「ノワールってどうかな?単純に黒って意味なんだけど。」
「承知した。これからはノワールと名乗らせていただく。我が主よ。」
「うわっ!喋った!」
やっぱり話せるようになったんだ・・・。
すごいな、名前つけただけなのに。
「よろしくね、ノワール。これから私の護衛をしてくれるんだよね?」
「うむ。我が主は、我がこの身にかえてでも守らせていただく。」
「うん。頼もしいよ。よろしくね。」
人間じゃないけど、やっぱり話し相手がいるのは嬉しいな。
ちょっと心細かったしね。
「それじゃあ、ノワール。私台所に行きたいんだけど、案内してもらえるかな?」
「承知した。我はこの城のことを熟知している。任されよ。」
オー!
この広い城の中を熟知していると。
やっぱり頼もしいね。
今度地図でも作ってもらおうかな?
「ここが台所である。」
「ひ、広っ!?そしてデカっ!?」
この城の台所はすごく広くて設備も充実しているみたい。
もうこれって、台所じゃなくて厨房だよ!
厨房!
でもここは私専用の台所で、厨房は別にあるらしい。
なんで女王専用の台所があるのか謎だけど。
「ねぇ。ここって中世の異世界なんだよね?なんで現代の最新機器まで揃ってるの?」
「?」
そうだよね。
ノワールに聞いてもそんなこと分からないよね。
こういうときは、教えて!ヘルプさん!
〈ここは元々、神が自分のために作った城。美味しい食事をするためなら努力はおしみません。〉
あ、なるほど。
あの神様は美味しい食事のために、ファンタジーの世界に電子機器を持ってきたと。
色々ダメでしょ、それ!
まあ、私は現代っ子だから助かるけどね。
「ねえ、ノワール。あなたは食事ってするの?今からなにか作ろうかと思ってるんだけど、あなたも食べる?」
「必要はないが、味覚はある。だから、我が主が我のために食事を用意してくださるなら、有り難くいただく。」
「そっか。エネルギーにはならないんだ。でも美味しいものを食べると幸せな気分になるし、一緒に食べましょう!私が作るから味の保証はできないけどね。」
「我が主が作ってくださるものなら、なんでも美味しいだろう。」
なんか期待されてしまっているみたい。
それじゃあ、ノワールのためにも頑張らなきゃね。
「おー!調味料や食材も色々揃ってる!これならある程度のものはなんでも作れそうね。でもこんなにたくさんの食材腐るまでに食べきれるかな?」
「我が主よ。ここの食料庫は時間魔法がかかっているから、腐ることはないので安心なされよ。」
え!なにそれ便利すぎる!
時間魔法なんてあるの!?
さすが魔法の世界ね。
現代科学もびっくりだわ。
「それじゃあ、今日は親子丼を作りたいと思います!」
なぜか米がたくさんあったから使ってしまおう。
そしてなぜか炊飯器までそこにある・・・。
・・・さすが神様ね!
必要な材料は鶏肉に玉ねぎ、卵。そして醤油などの調味料。
玉ねぎは薄切り、鶏肉は一口の大きさに。
温めたフライパンに油をひいて鶏肉を炒める。
そして玉ねぎも投入。
醤油、酒、みりん、砂糖の調味料を加えてさらに炒める。
水分が半分くらいになったら、ついに卵を流し入れる。
うん、簡単だけどすごく美味しそう!
これで完成ね。
ノワールの口に合えばいいけど・・・。
で、そのノワールといえば、料理中もじっと大人しく私の隣で待っていました。
「完成だよ、ノワール。・・・ん?どうしたの?」
「・・・我が主よ。どうやら侵入者のようだ。この島に上陸した者がいると連絡が入った。」
「え!侵入者!?というか、連絡って誰から入るの?」
「この島の周りを警備しているゴーレムだ。彼らは皆、我の部下たちだ。我のように自我はないが。」
なるほど。
ゴーレムたちはきっとノワールの命令で動くロボットみたいなものね。
・・・さてと。
早く親子丼を食べたいところだけど、侵入者を確認しに行かないとね。
食事はゆっくりしたいし。
「じゃあ、その侵入者に会いに行ってみようか。・・・もしもし、ノワールさん?」
「我が主よ。侵入者はゴーレムたちが捕らえている。だから、その・・・。」
「もしかして早く親子丼を食べたいの?」
「う、うむ・・・。」
え、なによ、ノワールさんったら!
厳つい外見をしてるのにかわいいところがあるじゃない!
「ふふ、分かった。じゃあ、先に食べてしまいましょうか。」
「うむ!」
ノワールの以外な一面を発見したわ。
えっと、メモメモ。
『ノワールは食事は必要ないけど、食いしん坊』