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パレードと異国の観光

 今日はいよいよパレードの日。

 被害が意外と少なかったのもあるけど、町はほとんど元通りになっている。

 王都には沢山の人が押し掛け、脅威が去ったことに喜び復興の活気に満ちていた。

 私はそんな様子を眺めながら昨日のシェルフィート国王の言葉を思い出していた。


「ワイバーンを操れる者などそう簡単にいるものではない。考えられるのは二つ。一つ目は龍人族という種族だが、彼らは自分たちが攻められない限り他を襲うことはないため考えにくい。次に二つ目だが、この大陸の西の端の大国、レザラム帝国だ。この国は大陸の統一を目指している。ここが一番怪しいだろう。」


 しかし国王の話では、レザラム帝国は隣の新興国、獣王国とずっと戦争していて、そのためこっちまでこれないとか。

 獣王国は立場の悪い獣人が集まってできた新しい国らしいけど、元々獣人は身体能力が高くグリフォンまでいるため、ワイバーンを使役してもなかなか攻められいない。


「獣王国を倒せないから先に周りを侵略しようとしてもおかしくはない、のかな?」


 でも隣の国を侵略するのも苦戦しているのにさらに敵を増やすようなことするなんて、一歩間違えれば自滅してしまう。

 まあ、私にはそういったことはさっぱり分からないだけどさ。

 とりあえずそのことは頭においておくとして、今はパレードだ。


「ああ、中止にならないかなー・・・。」


 私は集まった人々を見て胃がキリキリと痛むのだった。








「つ、疲れた~!」


 私はドレス姿のまま、ソファーにどかっと座ってもたれかかる。

 ちょっと行儀が悪いかもしれないけど今は許してほしい。

 パレードは最初国王の演説から始まり、私の紹介、そしてシェルフィート王国とポラリス王国の同盟を宣言してオープン式の馬車に乗り込み町を回った。

 シェルフィート国王が私たちのことを英雄だなんだと大袈裟に言うから、ひきつる頬を笑顔でごまかすのが大変だった。

 そしてポラリス王国のことも私の要望で大々的に紹介してもらった。

 これで少しはポラリス王国の名前が広まって、住民を募集しやすくなるかも。

 もちろんドラゴンたちもパレードに出た。

 一番活躍したのはドラゴンたちだしね。


「君たちも見ただろう。私たちに恐怖を与えていたワイバーンを倒してくれたあの美しいドラゴンたちを!ポラリス王国のドラゴンたちがこの国を救ってくれたのだ!」


 という国王の言葉の後、地上から見えないように上空でスタンバイしていたドラゴンたちが降りてきて空に向かって一斉にブレスを放った。

 やっぱり演出は大事だよね、うん。

 あまりの迫力に腰を抜かす人、ポカーンと口を開ける人、歓声をあげる人など様々だ。

 とにかくこれでドラゴンを見てパニックになる人もいなくなるだろう。

 これならドラゴンに乗ってこの国に来ても大丈夫かもね。

 目立つけど。


  トントン


「失礼します。リリアーヌ王女がいらっしゃいました。」


「ああ、どうぞ。」


 メイドさんがリリアーヌが来たことを伝えてくれたので入るようにいうと、軽いワンピースの格好をしたリリアーヌが入ってきた。


「お疲れ様です、女王陛下。素晴らしいパレードでしたわ。」


「リリアーヌもお疲れ様。その格好どうしたの?」


 リリアーヌの服装に疑問を持った私は首をかしげる。

 王女っていつもドレスを着ているのかと思っていたけど、もしかして違ったのかな?


「せっかくのお祭りですし、町も賑わっているので少しお忍びで町に行ってみようかと。お父様の許可もとれました。もしよろしければ女王陛下もご一緒にと思いまして。」


「え!町に行くの?私も行きたい!」


 リリアーヌの提案に思わず目を輝かせる。

 これまで異世界を見て回るということができなかったけど、これでやっと私の願いが叶う!


「良かったです。では準備ができたら教えてくださいね。」


「分かった、ありがとう!」


 リリアーヌが笑顔で頷き出ていく。

 そっかー、だからリリアーヌはラフな格好だったのか。


「我が主よ。お疲れだったのではないのか?」


「ん?あー、大丈夫大丈夫。そんなもの吹きとんじゃったよ。」


 ノワールが不思議そうに聞くので思わず苦笑してしまう。

 疲れっていっても精神的なものだから町を見て回るのはいい気分転換になるだろう。


「では、ノワールは目立つので私が護衛をいたします。」


 ブランがウキウキしたように立ち上がる。

 まあ、そうなるよね。

 私はべつに護衛とかいらないんだけどな。


「お忍びということなら仕方あるまい。我はドラゴンたちと留守番することにしよう。」


 ノワールが意外にも大人しく引き下がってくれた。

 いやー、てっきり自分も行きたいとか言い出すんじゃないかとひやひやしてたんだけど、そんなことはなかったみたい。

 さすがノワールは大人だね。


「ただし、土産を所望する。」


「あ、はい。」


 しっかりお土産を頼んでおくところもさすが、だね?

 よし、ブランは平民の格好をしてついてきてもらうとして、あとは


「青蘭、あなたも一緒に行く?」


『よろしいのですか!?』


 青蘭が驚いたように私を見る。

 青蘭には申し訳ないことをしたからそのお詫びをしなきゃと思っていたから丁度いい。

 なにか美味しいものでも買ってあげよう。


『だったら俺も行くぞ!』


「ダメ。今日は青蘭と琥珀だけ。朱凰はお留守番してて。お土産買ってくるから。」


『チェッ!』


 朱凰が拗ねたように舌打ちをする。

 みんな連れて行ってあげたいけどさすがにちょっとみんなの面倒はみきれないかな。

 でも今度機会があったら一人ずつ連れて行ってあげないとね。


 そして私はメイドさんが持ってきてくれたワンピースに着替えて出かける準備をした。








「わー!凄い人!お店もいっぱい!」


 準備を終えた私たちはリリアーヌと一緒に町にやってきた。

 リリアーヌの護衛の人は少し離れたところからついてくるらしい。

 一応、私とリリアーヌはばれないように認識阻害のブローチをつけている。

 これはあれだな。

 アニメとかで、変身して顔が思いっきり出てるはずなのに誰だか分からないというやつ。

 便利なものだな。

 これ、宮廷の錬金術師が開発したものなんだって。

 錬金術師は代表的なポーションを作るのはもちろん、魔法が付与された道具、アーティファクトを作ることもできるらしい。

 私も錬金術師を募集しようかな。

 とりあえずこれのお陰で安心して町を歩くことができる。

 ちなみに朱凰と琥珀にはチビドラゴンの姿からさらに小さくなって手のひらサイズになってもらっている。

 これならマスコットだと思ってもらえるだろうし、いざというときは隠れることもできる。


「じょ、花梨様。これ美味しそうですよ!」


 お忍び中は、リリアーヌは私のことを花梨と呼び、私はリリアーヌのことをリリィと呼ぶようにしている。

 リリアーヌは様をつけているけど。


「ほんとだ!いい匂い!これください!」


 リリアーヌが見つけたのはなにかの串焼きだった。

 タレがかかっていて香ばしいいい匂いをしている。

 私は人数分買ってリリアーヌとブランに渡すと、二人は慌ててお金を返そうとしてきたけど断った。

 これぐらい大丈夫、大丈夫。

 串焼きを食べるとタレの甘みが口の中に広がってとても美味しい。

 一つ青蘭にもあげると美味しそうに食べてくれた。


「花梨様!向こうに甘いお菓子がありますよ!今度はごちそうさせてください!」


 リリアーヌは楽しそうに笑いながら私の手を引いて行く。

 リリアーヌは王女だからあまりこういう機会がなくてはしゃいでいるのかも。

 またリリアーヌとこうして町を回るのも悪くないかもね。


 それから私たちは食べ歩きをしたり、リリアーヌの希望でお揃いの髪どめを買ったり、色々見て楽しい時間をすごした。

 もちろんお留守番組のお土産も買えた。

 ブランがちょっと疲れている様子だけど、まあブランのことだし大丈夫でしょ。


「あー、楽しかった!でも明るいうちにそろそろ帰りましょうか。」


「そうですね。私もすっごく楽しかったです!あの、また一緒にこうやって町に出掛けませんか?」


 リリアーヌが少しもじもじして私に聞いてくる。


「もちろん!楽しかったし、また行きましょうね。」


 こんなに可愛く友達にお願いされたら断れるわけがない!

 私がにっこりと笑って答えるとリリアーヌは顔をぱあっと輝かせた。

 可愛いいやつめ。

 私は本当にいい友達を持ったな。


 リリアーヌはこれから少し用事があるということだったので、リリアーヌと護衛の人たちと別れて私とブランは王宮に帰ることにした。


「ブラン、せっかくだからきた道じゃなくて違う道から帰りましょう。」


「ああ、待ってください!へ、花梨様!」


 私はなにか珍しいものはないかと探しながら帰っていると


「ま、待ってくれ!こいつはまだ生きているんだ!」


 誰かが必死に叫ぶような声が聞こえてきた。


「ブラン、あれはなに?」


 私の目線の先には片腕をなくしたぼろぼろの青年が裕福そうな男になにかを必死に訴えているところだった。

 その青年はなにかを抱えている。

 あれは、人?

 青年よりもひどい状態で、足がなかったり、肌が焼けただれて包帯が巻かれいた。

 顔ももう分からない状態だ。


「あれは奴隷商のようですね。」


「奴隷商?この世界には奴隷がいるんだ。」


「はい。犯罪を犯したり、借金が払えなくなったり、お金に困ったときに売られたり奴隷になるのは様々ですけど。自分から奴隷になることもありますね。」


「え!なんでそんなこと。」


 奴隷に自分からなるなんて。

 普通はみんな嫌だと思うんだけど。


「まあ、飢えるよりはましだということですよ。最低でも食事は与えられますから。」


 そっか。この世界は生きていくのも大変な世界なんだ。

 私は神様のお陰でこんな生活しているけど。

 ちょっと真面目に国を運営しないといけない気がしてきた。


「そこの女性。俺たちを買ってくれないか!二人は無理ならこいつだけでもいい。頼む!」


「え?私?」


 私とブランが話しているとさっきの青年が私の方を見て必死に頼んできた。


「おい!なに言っているんだ、黙れ!こんな欠陥品を買うわけがないだろう。」


 奴隷商人は青年に怒鳴りちらすと、今度は私の方を見てにこやかな営業スマイルを浮かべる。


「いや~すみませんね。ちゃんと教育ができていないもので。どうです?せっかくですし見ていかれませんか?お詫びにお安くしときますよ。」


「いえ、結構です。それよりこの人たちは?」


「ああ、あのワイバーン騒ぎのせいで負傷してしまいましてね。あちらの男は腕はないですけど顔はいいのでなんとかなるんですけど、もう一人のほうはもうダメなので処分しようと思っていたところなんです。」


「処分?」


 にこやかに処分と言ったことに寒気を感じる。

 まさかとは思うけど


「殺してしまうの・・・?」


「いえ、さすがにそれは。商品としてはもう無理ですから奥の部屋に閉じ込めておくだけですよ。まあ、借金を返せなくなるのでもう一生奴隷の身分から解放されることはないとは思いますが。」


 だから青年は私に買って欲しいと言ったのか。

 今も青年はすがるような目で私を見ている。

 きっとこの人にとって大切な人なんだろう。


「よし。この二人を買うわ。」


「え?いや、しかし、うちにはもっといい商品が揃ってますよ。」


「私はこの二人を買うと言ってるの。売れないと思っていた商品が売れるのだから、あなたにとっても悪い話じゃないでしょ?」


「それは、そうですが・・・。」


 奴隷商人は戸惑ったようにしている。


「本当によろしいのですか?」


「ええ、もちろん。」


「分かりました。では準備をしてきます。欠損があるのでお安くしておきます。」


 そう言って奴隷商人はお店らしきところに二人を連れて戻っていった。

 あの青年は見えなくなるまで、ありがとうと言っていた。


「よろしかったのですか?」


「うん。自己満足かもしれないけど、どうしても放っておけなくてね。」


 ブランの言葉にそう答える。

 死んでしまうと分かっていて知らないふりができなかった。

 世界にはあんな目にあっている人がたくさんいるだろうし、助けてあげることはできないから結局は自分の自己満足でしかない。


「やはり花梨様はお優しいですね。」


「そうでもないよ。」


 ブランは優しい笑顔で笑いかけてくるので少し恥ずかしくてそっぽを向く。このくらいは人として普通だと思うし。


 あの二人をあのままにしておくわけにはいかないから元に戻せるような魔法でも考えとかないとな。

 片腕がないのも不便だし、もう一人は死にかけだし。


 そして私は新しい魔法を作るべく色々考えるのだった。

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