花梨と朱凰
~花梨&朱凰サイド~
「おー!いるね、ワイバーン!」
「良かったなー。」
私がワイバーンを見て嬉しそうな声をあげると朱凰は適当に返事をした。
いつもなら文句を言ってやるところだけど今の私にはそんな暇はないのだ!
「よし朱凰!私の開発した創造魔法を御披露目をしよう!広範囲にダメージを与えるやつだからダメージはそこまで大きくないと思うからその後属性魔法も試せるはず。仕上げはよろしくね、朱凰。」
「へいへい。どうぞ思う存分やってくれよ。」
朱凰はやれやれと首をふる。
あんまり納得いかない反応だけど、何度もいうように今の私には朱凰にかまっている暇はないのだ!
私の考えた魔法がどれだけ使えるものか試さなくちゃいけないんだから!
私は片手を上に掲げると魔法名を唱える。
「『審判魔法』!」
・・・これ元の世界でやったらすっごく恥ずかしいやつだよね?
中二病とか言われるやつだよね!
でも仕方ないんです、必要な動作なんです。
決してしたくてしてるわけじゃないんです、信じてください!
私中二病じゃありません!
私が恥ずかしさに耐えながら必死に心の中で弁解していると空に変化が現れる。
私の手が輝きだすと空からいくつもの光の柱が・・・
「ズドオォォォーーーン!」
聖なる審判の魔法がワイバーンたちに降り注いだ。
そしてしばらく私たちに静寂が訪れた、色んな意味で。
「・・・それで?仕上げがなんだって?」
「・・・あはは、いやぁー、なんだったかなー?」
私たちの目の前に広がる光景はそれはそれは驚きの光景で・・・
「つーか、俺よりヒデーじゃねえか!」
「失礼な!朱凰みたいに火の海にしてないじゃん!」
「俺がいってんのはそういうことじゃねー!」
改めて周りを見渡すと黒焦げになったワイバーンが地上に落下しちょっと地上がひどいことになっている。見た目的に。
幸いなことにここは町の上ではなかったから良かったけど、確かにこれはちょっとやりすぎだったかもしれない。
「ご、ごめんなさい。本当はこんなつもりじゃなかったんだけど。属性魔法もちゃんとやるつもりだったんだよ?」
「結局それしか頭にねえじゃねえか。」
「そんなことないけど。でもここがなんもないところで良かったよ。私だってあの魔法がここまで威力があるとは思ってなかったし。」
私の放った審判魔法はなんと全てのワイバーンを一撃で全滅させてしまった。
この審判魔法は、私が敵だと思った相手全員にダメージが与えられる広範囲型の攻撃魔法。
決して一撃必殺の魔法を生み出したつもりはなかった。
まあそこら辺あまり考えてなかったけど。
ワイバーンがたくさんいたら面倒だから狙わずに一斉攻撃の魔法があったら便利だなぁと思って作っただけだからね。
「まあ問題なく片付いたわけだからみんなと合流しようか。いくよ、朱凰。」
「・・・。」
朱凰は動こうとはせずに不機嫌そうになにかぶつぶつとつぶやいている。
小さい声で「俺の出番が・・・」「なにが仕上げだ」とか色々聞こえてくる。
・・・はいはい、自分もやりたかったわけね。
最初になんの制限もなく一番派手なブレスをした気がするんだけどね。
「はぁ。分かったよ、朱凰。王女の話だと城が制圧されたとか言ってたから今から私たちだけで行ってみる?敵がいるかもしれないよ。」
「ほんとか!!」
朱凰は不機嫌そうな顔を一変させて目をキラキラと輝かせると嬉しそうな声をだした。
なんとなくそうじゃないかと思ってたけど朱凰ってやっぱり戦闘狂だったのか!
これほたまにはストレスを発散させてあげないと危ないかもしれない・・・。
「おい。お前、今失礼なこと考えなかったか?」
「べ、べつに?」
戦闘狂ってある意味褒め言葉だよね!ね!
鋭い朱凰にちょっとひやひやしながら朱凰の希望に応えて私たちは城へと向かった。
~花梨&朱凰サイド、シェルフィート王城より~
「それで?どうやって中に入るんだ?」
私たちは少し離れた上空から城の様子を伺っていた。
多分ブレスの音で異変に気づいたのか城の中が騒がしくなっている。
うーん、中の様子とか誰がいるとか分からないしなかなか行動しにくいなあ。
突入したら武器をたくさん持った人たちが待ち構えてたりしたら嫌だもんね。
「もう面倒くさいし、いっそのこと屋根をぶち壊して中にはいろうかな?」
「・・・お前って女王にしておくの勿体ないよな。」
「それは褒め言葉として受け取っておくよ。とりあえず城の屋根の上におりてそこからこっそり中に入ろう。」
最初の案はやっぱり中の人が危険だからね。
気づかれないように近づいた方が確実そうだし。
朱凰は降下して屋根に私を降ろしチビドラゴンの姿になった。
これならこっそり侵入できる。
脳筋かと思ってたけど色々考えてるね!
私は朱凰の行動にちょっと感動してしまった。
そして私たちは窓からこっそり城の中へ侵入を果たす。
「意外にあっさり入れたね。」
チビドラゴン姿の朱凰を抱えた私は城の中を堂々と歩いていた。
豪華なんだろうけど色々荒らされていてなんかひどい有り様になっている。
「制圧されたのは本当みたいだけどなんで誰もいないのかな?」
「どうやら一ヶ所に集まっているみたいだぜ。さっき何人か外に出ていったみたいだが。」
「なんでそんなこと分かるの!?」
私が朱凰の言葉に驚くと朱凰はふんっと鼻をならして
「ドラゴンなめんなよ。ドラゴンは感覚が鋭いから探索機能が優れてるんだ。」
朱凰は少し自慢気に話す。
ほうほう、ドラゴンってなかなか便利だね。
でももう少し早く言って欲しかったなあ。
そしたらさっき侵入するときに役にたったと思うんだけどなぁ。
はぁ。まあいいけど。
「じゃあ朱凰。その人が集まっているところに案内してくれない?」
「御安いご用だぜ。」
腕に抱えやれた朱凰はあっち、こっちと指を指して道案内をしてくれる。
どこもかしこも荒らされていて血も飛び散っていて死体も転がっていた。
日本ではまず見ない光景だったからちょっと気持ち悪くなったけど、この世界だとこういうことが日常的にあるんだろうな。
軽い気持ちでここに来たわけじゃないけど朱凰がいるとはいえ、もうちょっと気を引き締めていかないといけないかも。
私がそんなことを考えていると
「大丈夫か?」
私の様子がおかしかったのか朱凰が心配して声をかけてくれる。
「大丈夫。初めて死体とか見たもんだからちょっとね。」
「そうだったか。どうする?引き返すか?なんなら俺が焼き払ってやるぜ!」
「いや、気持ちは嬉しいけどそれ普通に困るから!」
気を使ってくれるのは有難いけど焼き払うのはどうかと思うよ!
助けに来たのに王様とか下手すれば私まで丸焦げだよ!
そんなことを話ながら歩いていると人の話し声が聞こえてきた。
「お!なんだかんだ言ってるうちに着いたみたいぜ。」
「そうみたいだね。」
開け放たれた立派な扉。
でも所々壊れてるし血も飛び散っていた。
王様たち無事だといいけど。
私たちはそっと中の様子を覗いてみる。
中にいるのは多分王族だと思われる人たちとそれを守る騎士の人たち。
みんな捕まっているみたい。
おそらくこの状況を生み出しただろう人たちは全員で十人ほどでなぜだかみんなイライラしている様子だった。
「おい!なにがどうなってやがる!ワイバーンたちはどうした!」
「そ、それがさっきの凄い爆発で吹き飛んだみたいで・・・」
「だからその爆発はなんだって聞いてるんだよ!」
「わ、分かりません!」
あー、そっか。
私たちがワイバーンを倒しちゃったからこの人たちは状況が分からずに動揺しているんだ。
「おい。なにがあったのだ?状況を説明してくれ。」
捕まっている威厳のあるおじさんが異変を察したらしくテロリスト(?)みたいな人たちに質問をする。
この人が王様かな?
「ちっ、黙って大人しくしてろ!変な真似をしてみろ。ワイバーンがお前の国と民をめちゃくちゃにしてやるからな!」
「ッ!」
テロリストの言葉にその人は悔しげな顔をして何も言わず大人しく従う。
状況から考えてこのテロリストさんたちはワイバーンを使って王様を脅しているのかな?
国民を助けたければ大人しくしろ!みたいな?
それで動けず反撃できないのだとすればワイバーンは全滅したって教えてあげれば解決するんじゃない?
「おい、これからどうするんだ?」
「うーん、今考え中・・・。」
朱凰が小さい声で私に聞いてくるけど、私も勢いでここまできたからどうすればいいか分からないんだよね。
もちろん助けるつもりだけど出ていくタイミングが掴めない。
さて、どうしたものか。
「おい、なんか動きがあるようだぞ。」
朱凰の声に見てみると確かに王様たちがこそこそ話している。
もしかして反撃するつもりかな?
だったらもう少し様子を見てみましょうか。
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「父上、このままではらちが明きません。このままあいつらの言いなりになったところでどうすることもできません。反撃しましょう。」
シェルフィート王国第一王子のセドリックは父の国王にそう進言していた。
しかし国王はなかなかその決断ができないでいる。
下手をすれば一瞬で国がワイバーンに滅ぼされてしまうかもしれないのだ。
国民の命だって危ない。
「兄上の言うとおりです。このままでは状況が悪くなる一方です。ワイバーンに指示をだす前に方をつけるしかありません。」
第一王子に賛成しているのはシェルフィート王国の第二王子エドウィン。
ここにいるのはこの二人の王子に国王と王妃。
それから数名の近衛騎士。
リリアーヌ王女はここにいないためここにいる全員が彼女の安否を心配していた。
しかしこの状況をどうにかしないことには彼女の無事を確かめることもできない。
「よし。様子からみてどうやら敵は予想外のことが起こったらしく冷静さを欠いている。危険なかけだが反撃をするなら今しかない。」
国王がそう決断すると全員の顔が引き締まり力強く頷いた。
「しかし、ワイバーンのことを考えると素早く全員を制圧しなければならない。分かるな?」
一人でも逃がしてしまえばワイバーンに指示をだしてしまうかもしれない。
そうなれば一貫の終わりだ。
「では魔法を使い・・・」
そうして作戦が立てられ、国王と王妃を除く、文武両道優れた王子二人とここにいる全近衛騎士十名で反撃をすることになった。
「今だ!」
セドリックの掛け声で一斉に敵に飛びかかる。
予想していなかった攻撃に一瞬怯んだ侵略者だったが
「『ウィンドウォール』」
防御の魔法を唱え王子たちの動きを阻害した。
本来ならそれで王子たちにはたいしたことはないのだが、侵略者たちにとっては少し隙をつくるだけで十分だった。
「止まれ!お前たちにはこのワイバーンが見えないのか?」
「ガギャーーー!」
侵略者がそう叫ぶと壁をぶち破ってワイバーンが部屋に現れた。
その様子を見ていた花梨たちは「まだいたのか」と見逃していたことに驚いた。
全然ワイバーンの気配がしなかったからだ。
というか気づかなかったのはワイバーンが大人しくできるとは思えなかったということと、朱凰も中の様子を観察することに集中していたからだ。
花梨はドラゴンの探索機能はどうしたよ、え?
という顔で朱凰を見るが朱凰はあさっての方向を向いた。
隠していたワイバーンはシェルフィート王国で強さを誇る王子たちと近衛騎手に対抗するための侵略者たちの奥の手だった。
その存在感は圧倒的で王子たちも動くことができなかった。
「へへへ。馬鹿な真似をしやがって。動くなっつっただろ?全くお仕置きをしてやらないとなぁ。でも俺らは優しいからな。国に一斉攻撃はやめておいてやるよ。」
その言葉に国王たちはみんなほっとした。
しかし
「ただ勝手なことをしたんだから覚悟はできてるよなあ、王子様?おい、ワイバーン。あの二人をくっちまえ!」
「ゴギャーーー!」
大声で鳴くワイバーン。
動くことのできず死を覚悟する王子二人とやめろと叫ぶ国王や王妃や騎士たち。
全員が絶望するなか
「待ちなさい!」
一人の少女の声が響き渡った。
きっと後で思い出したら恥ずかしくなるようなベタで古い登場の仕方だが、その時だけはかぜかその声の主である花梨と朱凰は思った。
出ていくなら今しかないでしょ!この登場格好よくない?と。
花梨「いよいよ次回は見せ場だね!」
朱凰「だな!」
花梨「なんかアニメみたいな登場じゃない?」
朱凰「よく分からんが、だな!」
花梨「ちょっと様子を見てた甲斐があったね!」
朱凰「だな!」
花梨「ところで、これ後でブランたちに怒られると思う?」
朱凰「・・・だな。」




