3わ!あんまうまくいかねぇわ@教室内恋愛
僕たちのクラスって、ほんと、教室内恋愛、
上手くいってないかも。
どこが問題なのか、女子達が色々指摘してくるけど
全然なっとくできないんだよね。
今日の午後は理科の実験で移動教室だ。
実験室の席につき
これから取り組む作業内容の説明を聞いている最中、
最近情緒不安定気味の清水さんが
机にふさぎ込んで泣き出してしまった。
清水さんは明るくて可愛い、
クラスの女子のなかでも中心的な存在の人だ。
それに元気がよくて普段は冗談ばっかり言ってる。
男子とも気さくに接していて、
誰とでもつきあい方が分け隔てないいい人だ。
僕のクラスは月いちペースで席かえを行うのだが、
毎回僕と清水さんは席が近くて、その度に
「また挽田の近く?やだーーー!飽きたーーー!」
「いや、こっちこそだよ!」
ってやってる。
どうでもいいな。
だからだ。
そんな、授業中に泣くとかさ、ありえないんだ。
上野。お前が全部悪い。
バドミントン部の上野と清水さんは、僕と斉木さんの後発カップルとして
クラス内で付き合い始めたのだが、どうも二人はギクシャクしている。
そもそも、友達同士の時は良かった。普通に楽しい。
僕もそうだった。
でも、付き合うって?
なにすればいいの、、、。
まぁ、正直、僕もそうだったんだよね。
だからだ、
だから上野と清水さんにはうまくいってもらいたい。
ふさぎこんでしまった清水さん→クラスの数名が上野を見る。
上野は全く気づいていない。あいつ、ちょっと鈍いんだ。
わかってない。
なんで清水さんは最近あんなに元気がないのか!
そしてだ、
どういう訳か毎回この流れで斉木さんも泣き出すんだ。
ん、、、。
もらい泣き?
え?
そのまた流れで斉木さんと同じグループの女子3、4名ほどが
『、、、は、あーあ、お前のせいだろ?』
って表情でチラチラ視線を投げてくる。
えぇ?!僕?
いや、ちょっとさ、ぜんっぜん関係なくない!?
上野だろ?上野、全部お前だって。
結局この時間中に清水さんは保健室へいくことになり、
斉木さんは隣の席の女子生徒が彼女の手や背中をさすって
慰めてくれたおかげでその授業を何とか受けましたって感じだった。
・・・。って、どうして・・。
上野はスポーツに力を入れたくてこの学校に進学してきた。
バドミントンでは県の強化選手だ。
僕たちの中学では、3年生の夏休み前から高等部と一緒の部活動に再編される。
そのため、スポーツに集中したい学生は、中等部から入学して3年の早い時期に
本格的に厳しい練習に参加できるうちの学校への進学を選択してくる。
高校受験を気にしないで思いっきりスポーツに打ち込めるからだ。
ただし、中等部からの入学者は公立中学よりは、
まぁ、厳しめの授業カリキュラムをこなさなくてはならない。私立だしね。
受験はない代わりに勉強はきつめだ。
上野は本当にスポーツはすごい。
でも学校の授業にはほとんどついてこれていなかったが、愛嬌で乗り切っていた。
テストの度に赤点をとり、ケラケラ笑っている。
成績上位者の男子生徒が多いうちのクラスでは、「しょーもないけどいいやつ」みたいな感じで、
成績を張り合わなくていい息抜きみたいな存在だ。ちょっとみんな上野をマスコット的に思ってる。
ただ、清水さんはそういう元気で明るい上野が好きだったんだ。
二人は仲が良くて気付いたら付き合い始めていた。
でも付き合ってからずっと上野が、「何していいかわからん!」といって
放課後になると騒いでいる。
僕は一生懸命、僕みたいになるなと言って休日にデートにでも誘えとか
もっとラインでもしろとか、学校で放課後話したりする時間を作れないのかとか、
思いつく限りに提案したが一つも採用されることはなかった。
そもそも僕自身も実践できなかった項目ばかりだった。
結局あの二人は一緒に帰るにも方向が違うし、ラインも成立してなくて
付き合っているという事実だけで2か月くらいを過ごしていた。
それだけだったらよかったのだが、その間にバドミントン部の1年生の女の子が
上野に強硬アプローチを開始したのだ。
部活でも四六時中一緒、結構明るくていいやつなのに自分から行動できなかった上野を
グイっと引っ張るようにラインで毎日会話してくる一年女子、愛水さん。
キラキラネームか、、、。
僕たちの学年はわりと普通の名前ばっかりなのですが
一年学年が変わるとずいぶん様相が変わりますね。
愛水さんの名前と現状はクラスでも何となく有名になってしまった。
上野が大事な人として教室で連呼するようになったからだ。
あいつ、スポーツできるけど、ちょっと馬鹿だ。
なんで清水さんいるのにそんな話してんだ。
毎日ウキウキの上野、その話もラインも丸聞こえの清水さん。
そのために清水さんは最近体調がすぐれていなかった。
先日も、こんなことがあった。
「あ、よう!上野じゃん。今帰りか?」
部活帰りに中等部の玄関でぼーっと立っている上野を発見した。
「あぁ、そう。いまね、待ってるの。」
「え?だれ?」
「清水。」
「おぉ、そうなの!一緒に帰る約束したの、いいじゃん。」
「うん。」
よかったな、上野。
そのあと僕は中等部の玄関に近いところにあるカフェテリアで、
友達数名とくだらない話をして電車の待ち時間をみんなで潰していた。
しばらくすると清水さんとクラスの女子1名が顔を出した。
「ねぇ、上野来なかった?」
「そこにいたでしょ?あれ?でもだいぶ前だよ。」
「え?そうなの。」
「清水さんを待っていたよ。」
「本当?!どうしよう、間に合うかな、追っかけてみる」
「おぉ、じゃー、頑張って!」
「うん!ありがとう!」
何かの約束の行き違いかも。
とりあえず放課後の予定を二人で一時過ごすことにしたみたいっていうのことに
ちょっと安心した。その時一緒に時間を潰していたメンバーもそんな風に
微笑ましく思っていたとおもうし、清水さんに付き添っていた女子もそうだったと思うんだ。
翌日の教室で、前山がクラスの数人と上野に激怒している。
どうしたのか声をかけた。
「どうしたの?」
「どうもこうも、昨日、上野が葵(清水さんの事だ)と帰る約束したのに、」
「あぁ、なんかの行き違いでしょ、待ってるところ見たよ。」
僕は上野の誤解を解いてやろうとおもって、前山をなだめに入った。
「違う!帰る約束したのに愛水と帰った!」
「、、、、え?!」
まえやまの話はこうだった。結局あの後、愛水さん玄関でぼーっとしている上野を見つけて
一緒に帰らないかと誘い、どういう訳か上野は彼女と一緒に帰ってしまったのだ。
あとから追いかけていった清水さんと付き添いの女子はその後ろに追いついて
呆然としたようだ。
後ろを歩きながら悔しくて泣いてしまう清水さんを一生懸命なだめていたという話で
上野は全く気付かず、愛水さんと楽しそうに話しながら前を歩いていたそうだった。
翌日はにクラスの女子全員が知っていてどういうことなのかと憤慨している。
教室内の恋愛事情は全く筒抜けで、何がどうしたも全部共有されている。
正直更にグループLINEが何重にも存在していて、お互いの情報共有率が高いのだ。
実際、上野と愛水さんのラインの一部もグループでやってるやつ丸見えだからね。
「上野なんなん!あんなのと別れな!」
前山が自分の事のように怒っているが、それでも清水さんは上野が好きなんだ。
まわりが盛り上がって介入することではない。
ただ、上野は本当に馬鹿なんだなって思う。