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1わ!挽田僚太の交々。

最近クラスの前山っていう女子が僕にかまってきてうるさい。

でも、いいところもあるし、あんまり嫌にならないように気を付けている。


うっかり女子を悪く言って変な風に広まったらこわいから、気をつかうんだよね。


でも、いや、いい人だと思ってるんですけどね。

■■■挽田僚太(ひきたりょうた)交々(こもごも)





「なに?前山と駅まで一緒に帰った?!

・・・挽田(ひきた)、おまえやめろよ、前山(まえやま)に気持たすようなことすんなっつーの。」



浩介(こうすけ)、『一緒に帰る人がいないし一人で帰るのやだから、駅まで帰ろう』って言われたから、、。

僕も前山には逆らえないんだ。」




浩介は同じマンションでかつ、同じフロアの住人だ。一昨年東京から越して来たぼくの身の回りのことを

色々世話してくれたことがきっかけで仲良くなった。

僕は中高一貫の私立中学校の2年生で浩介は地元の公立中学に通う同じ学年、2年生。




浩介は大学受験を控え情緒不安定な高校生の兄貴と同じ部屋で過ごすことが窮屈とかで

最近めっきりぼくの部屋に入り浸っている。


「だからだめなんだって。」





ところで、前山っていうのは僕と同じ学校に通う女子生徒なのですが


まぁ、なんていうのか。

基本的には個性的で、いい人だと思う。




だけど、ちょっと人より良くないところが目立っちゃうタイプなのですが。

悪くは言いたくないんだ。

先月まで毎日僕に告白してくるような女の子なんだから。

僕みたいなのを好きだって言ってくれるそういう気持ちはほんとうにありがたいと思う、でも。




え?裏山、、、?いや、でも。




前山ってのは1年の時も同じクラスで、そのころから僕にやたらちょっかい出してくる女子の一人だった。


彼女が言うには背の高い男子が好みとかで、確かに僕は中一の入学時身長が170cm超えていたので、まぁ、高い方ではあったかもしれない。


入学式教室で初めて見た時に好きになったといわれた、って彼女は結構他の男子にも言ってるような気がする。


 そんでもって、彼女は小学校まで格闘技を本格的にやっていたんだけど、たしか空手だったか、

 まぁよくわからないけどそういうので全国トップクラスの実力者だったようだ。

 実績の詳しいところまでは聞いたような気もするけど興味がなかったので忘れてしまった。


 中学ではサッカー好きが高じてサッカー部のマネジャーをやっているのだがどうもつまらなそうだ。


 どうして格闘技をやらない?


私立校のうちの学校でも当然スポーツは力の入ったところもあるし、出来るんだったらそういう方面に進んだ方が彼女の実力を発揮できただろう見事な体格だがと思っている。


 うーん、どっしりとした巨木のような。風貌なんか、例えば、背中まで伸びた長い髪を額を出して一つにひっつめて結い上げているところもちょっと男性的だ。


そして身長も僕と大差なかった。


そうだな、やっぱり小柄な男子では物足りないかもしれない。



そういえば、中一の時、前山をからかったクラスの男子に「私が本気出したらあんたらの骨なんて簡単に折れるんだよ!」って威嚇してたんだよな。

貧弱なタイプの男子生徒が集うこのクラスで、以降前山にちょっかい出そうとか挑戦しようとする生徒は居なくなり、前山は益々増長していったのだった。




 そんな彼女に逆らう気なんか僕には更々ない。






 大体、彼女は恋愛にとても積極的でSNSを利用して知り合った?年上の専門学校生の彼氏がいるそうだ。

体だけの関係だとかなんだとか、やたらその相手との話しをしてクラスの男子を挑発してくる。


・・・からだってなんだよ。

聞きたくないんだよそういうの。

クラスの男子は前山のそういうところを、全く相手にしていなくて冷ややかだった。

おそらくなのだが、なんだかんだ言っているがその男性とどうも会えている様子もなかったし、本当に彼氏なのだろうか、とも思っている。



浩介は、前山は自分の事よくわかっている、同級生じゃダメでしょ?みたいなことを言ってくる。

何をわかっているのかぼくにはよくわからん。

 毎日のように僕から前山対策を相談されているうちに当然だけど彼女へ良いイメージを持てなくなっていたと思う。いや、僕の伝え方がよくないと思うんだよね。本当は面白くていいやつなんだよ。


 前山に僕が何されてるかっていうと、休み時間なんかはちょっとボンヤリしているとぼくのうなじや背中をさわりに来たり、脇があまいとすぐ手を握ろうとする。

 『やめろ』って言ってもすっごい笑顔で僕に触りたいってすごい勢いでたたみ掛けてくるんだ。

セクハラみたいなものが、実は対男子にもあるのだという事実をちゃんと伝えていきたい。

いくら思春期だからと言って、異性であればなんでもいいと思っているタイプばかりではないんだ。



「さわんなブスぐらいのこといえよ!絶対こなくなるからさー。」

威勢のいい浩介は相手をなじるように繰り返し僕にアドバイスくれるのだが、

実際そんなこと怖くてできるわけない。


私立一貫校の生徒の雰囲気は地元公立とはちょっと違う気がする。女子生徒にそんな暴言吐いたあかつきには僕の立場も良くはないとおもうんだ。愚痴る僕に、じゃあ、担任にでも相談しろと安易なアドバイスのループを繰り返す。


担任に?前山さんが毎日コクってくるので困っています?



そんな事言えるはずない。





ぼくの対人関係の小さな悩みは尽きることがなかった。


音楽の時間、リコーダーの自習練習中、暇をもて余した表情で、隣の席の田川(たがわ)が話しかけてくる。


「挽田って付き合い始めいつ頃だっけ?」

「え?あぁ、えっと7月の始めごろ?ねぇ、どうだっけ?」


すぐ前の席に座っている斉木優菜さんに確認。

彼女は後ろを振り返って苦笑いだ。


このツッコミもうなれたわぁ。始めのころろ滅茶苦茶いじられて辛かったんだよなぁ、まじで。

そんな人の傷ほじくりかえして塩塗るようなことして楽しい?って何度も弄りと質問を繰り返し煽るクラスのやつらに言い放ったか。ただ、ぼくの威厳が足りなくてみんなただ笑うばかりだった。


斉木優菜(さえき ゆうな)さん、ぼくの元カノ。

僅か2週間しかもたなかった。ぼくの彼女だった人だ。



「ねぇ、未練とかさ、ないの?」



田川、  


バカじゃねぇの?





目の前に斉木さんいるってのに、このデリカシーない感じ。



「ないよ。すぐに切り替えたしね。友達として。」


「へぇ、そうなんだ。」


田川はつまらなそうな顔をして斉木さんの後ろ姿に目をやった。

斉木さんは、前を向いて少し肩を丸めて座っていた。

僕は真っ直ぐ黒板を見て強くリコーダーを吹いた。


僕は別れた夏の頃の自分の気持ちを思い出していた。

嘘じゃないね。だって自分でもちゃんとけじめつくように確認して聞きたい事を聞いて、そんで納得して別れたわけだし。


それでそうなったんだから仕方ないなって思ってるよね。


それにどうなんだろう。


どうしても好きだってほどだったんだろうか。




別れ話を持ちかけてきたのは斉木さんからだった。

僕は最後に自分を納得させるために斉木さんに聞いたんだ。



「ほんとうに絶対別れたい?」


斉木さんは僕に

「絶対別れたい!」


って言った。




そうなんだ。






ありがとう、斉木さん。


これからは友達に戻って仲よくして欲しいって伝えて別れたのが精一杯だった。




そんで、その翌日同じ教室で過ごすのって結構キツいんだ。


浩介からは、一体なんだったんだって言われるくらいの短さで僕たちの交際期間は終わった。もしかすると斉木さんと仲良くなりたくてに一生懸命になっていた期間の方が長く一緒にいたのかもしれない。絶対別れたいってお前、彼女に何したの、浩介には何度も聞かれた。


僕だってよくわからないんだ。


だけど、斉木さん最初から僕の事を好きだったわけじゃなかったのかも。




ただ、ほんとにクラスの女子と付き合って別れたあとしんどいわ。

7月の上旬に付き合い始めて7月の下旬ごろお別れした。


クラス中が僕たちが付き合っていたことを認識する頃にはとっくにお別れしていて、お前らいつからいつ付き合っていたんだよ?ってことでみんな知りたがり、盛り上がり、悲惨な日々が続く。



夏休み明けからのぼくのあだ名は


「元リア」にきまり、



僕たちの後に成立した同じクラスの二人が付き合い始めて

交際期間を2週間などあっさり越えていく時も、




「あ、俺たち挽田を越えるわ。」






と別に要らない宣言の報告があった。








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