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元地球人による地球侵略  作者: ひー
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前編 始まり

2026年、私たち地球人の住んでいる地球は、異星人による侵略を受けた。

黙って侵略を受け入れるはずもなく世界各国の武装勢力での反撃を試みたが、すべて失敗に終わった。

圧倒的な武力の差を見せつけられた私たちは死を覚悟した。

だがしかし、この侵略による死者は一人もいなかった。

そんなことがわかるわけもなく、世界中で大混乱が巻き起こった。ある者は自ら命を断ち、ある者は強姦を楽しみ、ある者はこの状況を楽しんでいた。

そんな混乱の中一つの声が響いた

「皆さん落ち着いて下さい。」

その声は空から響いていた。空を見上げると私たち地球人となんら変わらない男がいた。正確にはスクリーンのように映し出されていた。その男は話を続けた。

「我々はあなた方を殺そうとは思っていません。」

そのことを聞いて、私たちのほとんどはその男が異星人であることを理解した。

「ただ一つの条件さえ飲んでいただければ、すぐにでも地球から手を引く所存です。」

混乱ししていたはずの私たちは、気がつくと静寂に包まれ、皆空を見上げていた。

「落ち着いていだだけて何よりです。それでは、条件の説明をさせていただきたいと思います。まず、我々がどのような存在なのかな説明をさせていだだきます。」

異星人は淡々と私たちに説明をした。

自分たちが地球から三億光年離れた星に住んでいること。

宇宙で最高の科学力を保持していること。

「ここまでは理解していただけたでしょうか。」

理解できるはずがなかった。

しかし、そんな私たちの気持ちなど知らず、異星人は説明を続けた。

「長くなってしまいましたがここで本題に入らせていただきたいと思います。実のところ我々には娯楽というものが存在しません。様々な娯楽を思いつき、それを実行してはみるのですが、我々がやっても決着がつかなかったり、あまりに簡単すぎて何も面白くないのです。そこで我々は考えました。他の星のものに我々が考えた娯楽をやっていただき、それを観戦すればいいのだと。ということで、我々が皆さんに飲んでいただきたい条件はただ一つ。月に一度、我々がランダムに選んだ範囲にいる人で我々の考えた娯楽、皆さんの言葉を借りさせていただくとゲームをしていだだきます。この条件、飲んでいただけますよね?」

ここまで圧倒的な武力を見せつけられ、断れるはずもなく、私たちはその条件を飲んだ。


そんなことがあってから五年。私たちはそんないつゲームに巻き込まれるかもしれない暮らしに、すんなりと適応していた。というのも、ゲームが行われる範囲がとても狭いのだ。人生でゲームに巻きこまれる可能性はゼロに近いらしい。最初は恐怖し、怯えていた人もいたが、今では皆何事もなかったかのように普通に暮らしている。とはいうものの、ゲームが行われた範囲にいたはずの人たちがなぜか謎の失踪を遂げている、 しかし結局は他人事なのであって、自分が巻き込まれない限りはどうでもいいというのが普通の人間の心理なのだ。かくいう私も最初は自分がいつゲームに巻き込まれるか、恐怖していたが、周囲がゲームに関心を無くしていくにつれ次第に恐怖が薄れていき、ゲームのことなんてすっかりと忘れていた。


自分がゲームに巻き込まれるまでは。


ゲームの開始は驚くほどにあっさりとしていた。普通に高校に行き、普通に授業を受けていると、気がついたら校庭にいた。皆が混乱している中、誰もが五年前に見たであろうあの男が校舎の屋上にいることに気がついた。

「皆さんお久しぶりです。皆さんは今月のゲームの参加者となりました。」

この段階で状況を把握できたものはいなかった。だが、あの男は五年前と同じように淡々と今回のゲームのルール説明を始めた。

「皆さんに今回行ってもらうゲームは単純な狩りです。皆さんには我々の星から連れてきた生物を狩っていただきます。武器はこの学校内にあるものならなんでも使用していいとします。それでは、ゲームをお楽しみ下さい。」

そう言った後、あの男は私たちの前から姿を消した。

未だに状況を理解できなかった。頭では、現実を受け止めてゲームを生き残ることに専念しなければいけないことがわかってはいるものの、心の奥底では、

(これは誰かのいたずらではないのか。)

(実は極秘で行われている避難訓練ではないのか。)

などと、現実逃避めいた淡い期待を抱いてしまっていた。しかしそんな期待は一つの轟音によりかき消された。皆がその轟音のする方向に目を向けた。そこにいたのは、体長10メートルにも及ぶ巨大な怪物だった。皆体が動かず、あたりは静寂に包まれていた。

そんな中、勇敢にもその生物に立ち向かおうとするやつがいた。

いつもクラスの中心にいる、いわゆる人気者ってやつだ。

「みんな!やつはまだ動いていない!みんな一斉にかかればいける!」

その声を聞き、ようやく体が動くようになった私たちはみんなで一斉に攻撃を仕掛けようとした。しかし、その攻撃が実行に移されることはなかった。攻撃対象のあの怪物が動きだしたからだ。そこからは地獄絵図だった。

奴の近くにいるものから襲われていき、襲われていないものは逃げ惑い、校庭は大混乱だった。

そんな中私は、無意識のうちに校舎に逃げ込み身を潜めていた。叫び声と破壊の音だけが聞こえる。

やっと静かになったと思ったら、また破壊の音が聞こえた。どうやら外にいたものは全員死んだらしく、今度は校舎内に逃げ込んだ人達を殺しにきたらしい。

となりの教室から叫び声が聞こえる。

『グチャッ』

という音が聞こえるともう叫び声は聞こえなくなっていた。

そう思ったのも束の間、今度は私が潜んでいる教室の壁が勢いよく破壊された。

(終わった)

そう思い、静かに死を覚悟した。

しかし、あの生物が私を見つけることはなかった。どうやら散乱している机の下敷きになっていた私を発見することができなかったらしい。

私はその状態のまま、息を潜めてゲームの終了を待った。しかし、いつまで待ってもゲームが終了する気配はなかった。少し考えてみたらわかることだった。このゲームに制限時間があることなど誰も言ってはいないのだから。私が都合良く制限時間があるものだと決めつけていたのだ。

それに気づくともう何もかもがどうでもよくなっていた。

(どうせ死ぬのならあいつに一矢報いてから死のう)

そう考え、私は工具室から持ってきたノコギリを手に持ちあの生物の前に立っていた。

そして、私に向かい勢いよく振りかざしてきたその手を、思いっきり切りつけた。すると、奴は激しく苦しみ、もう片方の手を振りかざしてきた。私はそれも切りつけたところであることに気がついた。

(こいつは大分弱っているのでは?)

よく見るとほかの生徒の抵抗によるものなのか、体中が傷だらけだった。それを見て私は期待を抱いた。

(もしかしたら殺せるかもしれない。)

そんな期待を抱きながら、足を切りつけにいった。

それに気づいた奴は必死の抵抗を試みてきた。

だが、どれも動きが遅く避けられるようなものだった。奴の攻撃をかいくぐり奴の足にノコギリを突き刺した。すると、奴は倒れ込んだ。私はそこにとどめをさしに行こうとした。

しかし、それは叶わなかった。私の足がなくなっていたのだ。

どうやら奴の攻撃をもらってしまったらしい。だんだんと意識が薄れていく。

薄れゆく意識の中で何者かが私に近づいてきて何か喋りかけてきたのがわかった。

「や・・み・・・・たよ。」


私は目を覚ました。咄嗟に足の方を見る。

(足がある?)

わけがわからなかった。一瞬夢であったのかとも思ったが、周りの景色を見てその仮説は正しくないと悟った。全く見覚えのない場所だったのだ。まるで病室のような感じではあるが、少なくとも日本の病室とは違かった。入口のドアが開いた。

「お目覚めになりましたか。」

あの男だった。先ほど校舎の屋上にいたあの異星人だ。余計わけがわからなかった。なぜこの男が私の前にいる。なぜ私はこんなところで寝ていた。なぜ私の足がある。それらの考えはあの男の発言によって全て消し飛んだ

「やっと見つけましたよ、王。」

いや、わかんねぇよ。なんだよ王って。とりあえず状況の説明を頼んで見る。

「どういうことですか?」

そういうと男は涙を流し始めた。

「もしかして、記憶がないのですか?ということは私のこともわすれてしまっているのですか?」

男は泣き崩れていた。本当にわけがわからない。なんか知らない部屋にいると思ったら、今度は目の前で男がわけのわからないことで泣いている。すると男は急に立ち上がりこう言った。

「こうしてはいられません!早急に記憶復元装置に入りましょう!」

そう言い、有無を言わさず私は男に運ばれた。その部屋には何やらヤバそうな装置があった。

「さあ、早く入ってください!」

もしかしてこれが、記憶復元装置ですか?むしろ記憶なくなりそうなんですけど。というか、記憶がなくなってないのに入っても大丈夫なんだろうか。そんなことを考えていたら半ば強引に装置に入れられた。どうやら装置が起動したらしいようで、頭に少し電流が流れるような感覚だった。当然記憶の変化はない。強いて言うなら中学時代の黒歴史が掘り返されたぐらいだ。

「どうですか?」

私は本当のことを言おうとしたが、私の中で一つの仮説を立てた。もしかすると、いやもしかしなくても、こいつらの王と言われている存在が家出的な何かをしていたのではないか?だとしたら俺が王ではないということがバレたらマズイんじゃないか?少し考えた末、私はあることをすることにした。

「ここはどこだね?」

王になりきる。そして情報を引き出し、これからはこの国星の王として生きることにした。自分でも凄まじい適応力だとは思うが、なってしまったものは仕方がない。このままここで生きよう。

「記憶がお戻りになられたのですね!よかったです!」

完璧だ、それじゃあこのまま情報を引き出そう。

「確認のために私の名前を呼んでいただいてよろしいでしょうか?」

前言撤回。全然完璧じゃない。とりあえずなんか言っとくか?でも間違えたらそれこそ死だろ。じゃあどうするんだ?考えた末にだした最善策は、

「すまないが、まだ記憶が明瞭ではないのだ。だからわからないことは教えてくれぬか?」

それとなく聞く。少し強引な気もするが、これで情報も引き出せるし一石二丁だ。

「そうでございましたか。配慮が足らず申し訳ございません。それではまず私の名前から、私の名前はライと申します。」

今度こそ完璧だ。それじゃあ今度は情報を引き出してみよう。

「そうか。ではライ。私がなぜ地球にいたのかの説明を頼めるか?」

「わかりました。それでは、7年前王が急にいなくなったところから話させていただきます。7年前王は退屈のあまり、我々の星を飛び出し、地球へと向かってしまいました。我々も捜索に向かいましたが、王は変身能力を使い、地球人に完全に溶け込んでしまい、見つけることができませんでした。なので、我々は指定の範囲内に王がにおられた場合反応を示す、異次元隔離装置を作りました。しかし、その装置は一月に一度しか使えない上にごく僅かな範囲にしか使えません。なので娯楽好きな王をその範囲に収めるべく、その範囲でゲームを行いました。そして今回、王の反応があり、最後の生き残りがでるまで反応が消失しなかったのでその生き残りが王だと判断しました。」

すべて理解した。やはりさっきの仮説は、大方あっていたのだ。つまりあのゲームは王を探すためだけのもので、決してこいつらの娯楽ではなかったのだ。

「それでは、王の捜索は終わったので地球からは手を引こうと思います。」

まさか本当に手を引くとは思わなかった。

まぁ、とりあえず手を引いてもらうか。

家族と離れてしまうのは悲しいことだが、死んでしまっては元も子もない。

(ちょっと待てよ。)

今本物の王はどこにいるんだ?

考えても見ろ。俺が偽りの王をやっている最中に本物の王が帰ってきたらどうなる?俺は確実に殺されるだろう。それは嫌だ。一度は死を覚悟したとはいえ、生きれるならば生きたい。

だがどうする?

どうやって王を見つける?

見つけたとしてどうする?

殺してしまうか?

でもどうやって、不可能だ、方法がない、


いや、一つだけある。


「まだ手は引かなくていい。ゲームは続行だ。そしてゲームの管理はすべて私がやる。」

ライは

「かしこまりました。」と言い部屋を離れた。

(本当にこれでよかったのか?)

いや、いいんだ。どうせ友達も家族もいない。

ちょっと待て。

家族はいただろ。いたはずだ。でもなぜか思い出せない。

昔の記憶を辿っていると、とあることに気がついた。

(私はだれだ?)

全く思い出せない。記憶復元装置の影響か?

いや、今は考えるのはよそう。

とりあえずは本物の王を殺す、それに記憶がないとなれば、躊躇せずに人間を、いや、地球人をゲームに巻き込んでいける。むしろ好都合だ。

記憶を取り戻すにしろ、しないにしろ、まずは王を殺してから考えるとしよう。



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