ルート2 同居
「…ん、あれ?ここは…?」
俺は目を覚ますとベッドの上にいた。木で作られた四畳半ほどの部屋。ベッドのすぐ横には窓があり日差しが差し込んでいて、その先には机があった。
机には花瓶が置いてあり、まだ差し込んだばかりであろうキレイな花が入っている。
ぼーっと周りを眺めていると扉が開いた。
「あ…お早うございます。具合の方はどうですか?」
少女が話かけてきた。まだ14、5才くらいだろうか、金髪のロングに花の髪留め?をして、フリルのついた白いワンピースを着飾ったまだあどけなさの残る女の子だ。
「あ…あぁお早うございます。君が看病してくれたのかい?」
「はい。すみません…放っておけなくて勝手にわたしの家に運ばせて頂きました。」
「いやいや、助かったよ!ありがとう!」
そう言うと少女は嬉しそうに微笑んだ。
「…よかったです♪」
少女は持ってきた銀のタライを机に置くと椅子を出してそこに座った。
しかし体がスッキリしてる。こりゃ相当寝込んでしまったな。
「あーそういえば俺どれくらい寝てた?」
「そうですね。丸一日ほど…。だいぶうなされてましたよ…。」
「ありゃりゃwwごめんね。大の大人が申し訳ない…。」
待てよ丸一日…。!!仕事は…!?瞬間俺は飛び起きた!!
「ヤバい!!会社に電話しなきゃ…!!…あ。」
と、同時に思い出した。スマホ体に吸い込まれたんだった。っておかしいだろう!!!あれ?てかなんで俺ここにいるんだ??あーヤバい混乱する!とりあえず落ち着こう。
少女は困った表情をしてオロオロとしていた。
「…はー、、ごめんね驚かせて。あのさ…、」
そうだ名前聞いてないや。自己紹介もしなきゃな。
「あぁ名前いってなかったね。俺は桐島ユウスケって言うんだ!…ユウスケって呼んで!」
一瞬如何わしい事がよぎったが事が事だ!今はそれどころじゃない!
「ユースケさん…ですね!」
あぁ…さんづけか、まぁいい今はそれどころじゃない!それどころじゃないんだ!お兄ちゃんなんて…
はー、俺も重症だなww
「あ、わたしはレイラ。レイラ・アナスタシアです!レイラって呼んでください♪」
「レイラか…良い名前だね!よろしくねレイラ♪」
「はいユースケさん!」
よし自己紹介も終わったしとりあえず状況整理しないとな…。
「レイラ聞きたいんだけどここって…!?」
その瞬間頭の中に文字のイメージが浮かんできた。なんだこれ?地名?
「レシル…ティア…?」
「あーはい。ここはレシルティアの端にある湖の畔に建ってますけど…どうかしましたか?」
なんだこれ??頭の中に地名のイメージが浮かんだぞ。てかそんな名前の地名ゲームでも現実でも聞いたことないぞ!
「あのー?ユースケさん…?」
しばらく黙り込んで俯いてるとレイラが心配そうに覗きこんできた。
「あーごめんね。実はさ…。」
それから俺はレイラに様々な事を聞いた。
ここはなんて国なのか?
今は西暦何年なのか?
お父さんとお母さんはいないのか?
俺の他に誰かいなかったのか…?
その他にも花の名前、食べ物の名前、どんな服を買ってどんな遊びが流行ってるのかとか、
スマホはあるのかとか、どんな文明があるのか、なんでドラゴンがいるのか…、、夜になるまで色々聞いてしまった。レイラも最初は困惑してたが次第に状況を察したのかわかりやすく丁寧に教えてくれた。頭の良い気の利く良い子だ…。
「…なるほど、要するに俺は異世界に飛んできてしまったっという事か。なるほど!!…はぁー、」
「…すごいですね、ほんとにこんな事ってあるんですね!本でそれらしい物語を読んだ事はありますけどまさか本当に起こるなんて…」
肩を落とす俺とは裏腹にレイラは若干目を輝かせながらそう言った。まぁこの歳頃だとそういうのに憧れを持つのはわかる!そういう所は世界共通なんだなw
「レイラごめんな色々聞き出しちゃって…。両親の話…」
「あぁ、いえ!全然平気です!もう何年も前なんでさすがに泣き飽きちゃってますから!」
レイラは早くに両親を亡くしていた。大きな戦争だったらしい。その後昔から良くしてくれてるおばちゃんが街においでと言ってくれたがレイラはこの家から離れたくないと断り、その気持ちを汲んで今一人暮らしをしている状況だった。
「それよりユースケさん!これからどうするんですか?さっきも試しましたけど地名がわかるだけじゃどうしようもないですよ。それにそちらの世界で言う…車?とかヒコーキ?とかも無いんですから移動手段が無いじゃないですか。」
「それだよなぁー、どっか行くにも行く宛もないし徒歩だし…。」
「だからっ、わたしの家にしばらくいるっていうのはどうでしょう!!」
おっとどうした!!ブッコんできたぞこの子!!意味わかって言ってるのかなぁ?w
「いや~それは流石にマズイでしょ!!俺成人してんのよ?そんな大の大人がいたいけな女の子と同居するってのはどうかと…」
「大丈夫です!私も成人してます!」
それはこちらの世界の話でしょ。15歳は俺の世界じゃ充分子供なんですが。
さすがにマズイわな!それにおばちゃんとか来るみたいだし気まずすぎる!丁重にお断り…
「あ、もしもしおばさん?レイラです♪今日ちょっと旅の人が倒れてたので看病してるんですけど打ち所が悪くて記憶喪失になってるみたいなんです。あ、はい男の人です!それで心配なのでしばらく家でお世話しようかと思って…。大丈夫ですよ♪なにかあっても問題ないですから♪…はい、はい♪わかりました♪じゃそう言う事でよろしくお願いします♪失礼しまーす!」
「許可降りましたよユースケさん!」
「行動早いね~!wwwてか電話あったのね!まぁ聞いてたから知ってたけど!!ていうか許す方も許す方だと思うけどね~!!!」
「えへへ…♪」
「ホメてないよっ!!!…は~…、さっきも聞いたけど、その信頼性もレイラの実力あってこそって奴かい??」
「ハイ♪なんたって私は…」
そう…この子はとんでもない人物だった。
「…魔法使いですから♪」
こうして25才の地理博士(こっち限定)と15歳の聡明(?)な少女(魔法使い)の奇妙な共同生活が始まったのであった。