表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Reverie World  作者: 一語大福
2/12

アトムとの出会い

 自分の母親をブスだと言われたら誰だって怒る。

自分の妹をアホだと言われたら、そう思っていたって腹が立つ。

自分が命より大切だと思っている神を、

風刺画でカラカわれて怒らない信者はいないだろう。


 理性を失う程の怒りってなんだ、

自分をコントロール出来なくなる怒りってなんだ、

価値観とは何だ、人とは何だ、何のために人は生きている。

何のために人にだけ死の概念があり、他の動物は死が解らない。


 インド独立の父と尊敬されるマハトマ・ガンジー

彼は5回ノーベル賞候補になったが、受賞はしなかった。

それ程の人物が13歳で結婚し、禁欲を告げる36歳頃までは欲情の虜だった。

禁欲を告げて始めてからの彼は親族にまで禁欲を強要したそうだ。

 

 ジョージ・ブッシュ大統領は青年時代に麻薬に手をだしたが

大統領夫人の愛が彼を立ち直らせ、押し上げたと言われている。

ダメ人間でも、何らかのきっかけで世界を動かす人間に変わることがある。


 俺には何の取りえもない、勉強は大嫌いだ、走るのはいつもビリ。

逆上がりが5年生になってもできなかった、体力は人より随分劣る。

ポルノ雑誌は隠れて読むが、彼女ができたことは一度も無い。


 漫画が大好きだ、ガンジーの話は漫画で読んだ。

ズッと引きこもって、本や漫画を読んでいた。

このままで良いとは思っていないが、踏み出す勇気などない。

引きこもっていた俺に価値観はない、友達はいない。


 欲情に溺れるのも人生、麻薬に手を出すのも人生、

染まれば引き返せない世界とは解っている、欲望に理性は勝てない。


 外の世界は怖い、見たいとも思わない、見るのは嫌だ。

そう言えば、長いこと人と口を聞いていなかった、

連中は俺を嫌がる、俺だって連中を見るのは嫌だ。


 本の中で俺は絶対だ、誰もが俺に従う、女も金も地位も、

欲しい何でも手に入る。


 最近の漫画は残酷でリアルで、初めの頃は面白かったが、

漫画から夢が無くなった、近頃、そんな気がしてならない。

読み始めた頃の漫画には、今より夢が有ったように思う。


 俺は寂れた古本屋で立ち読みをしていて、

カビの生えた古い漫画本を見つけた、「鉄腕アトム」と書いてあった。

「鉄腕アトム」の漫画本は絵が子供っぽくて、正直下手くそだと思う。

今の漫画と比べると、絵も話も随分見劣りがする。


 下らない漫画だと思ったが、他にすることもないし、続きを読んだ。

何時の間にか夢中になって、古本屋にあった、真っ黒な角の取れた丸い椅子に

座って読んでいた。

本の上を布ではたかれた、頭の禿げた古本屋の親爺が愛用のさんはたきだ。


「何をしやがる。」と腹が立ったが、お構いなしに最後まで俺は読んだ。


 1巻目を棚に戻し、2巻目を読み始めた。

ゾクっと、俺は本を持っている手や背中から血が引くような寒さを感じた、

意識が薄らいでくる・・


「目が覚めたかい、未来男君、ようこそ鉄腕アトムの世界へ。」


 俺は上を向いて寝ていた、目の前に靄がかかっている、

だんだん良く見えて来た、見上げると、漫画のアトムが大きな目で俺を見ていた。


 ここは何処だ、俺は寝ていたっけ、と思った。


「未来男君、ここは僕の家だよ、君が僕を呼び出した。

一緒に旅がしたいんだろう、僕が案内するよ。」


 アトムが差し出した手を軽く握ると、

未来男は引かれるまま、ゆっくり立ち上がった。


「未来男は人が好きじゃないだろう、僕と人のいない世界へ行こう、

僕は10万馬力だ、空も飛べる、僕の手を握れば一緒に空が飛べる、

さあ、出発だ」


 未来男はアトムの手をしっかりと握った。

二人は空に舞い上がり、雲の中に消えて行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ