3か月
あの時から3か月が過ぎようとしていた。
あの後、俺はなぜか知らないが上から降ってきた彼女にさらに気に入られた。
しかし、なんか怒っている国王さんに「森に放り出して来い!!3か月は戻ってくるな!!」と言われ、今いる王城の北にある森に放り出された。
一応武器として、小さなナイフ一本くれたのは・・・・・・ありがとうと言っといたほうがいいのか。
ともかくちょっと言い過ぎたようで森の中で過ごすことになってしまったのだった。
残念ながらまだ普通の学生であったので逆らうこともできずあっけなく森に放り出されるのだった。
初めの一週間は王都に近い所で過ごした。よくわからないフラグを折ったために森に放り出される事になり後悔していた。
やっぱりいきなり放り出されたら呆然とするものでそこで気持ちの整理がつくまでいるつもりだった。
食事は時たま見かけた、ウサギのようなものを捕まえてナイフで殺して食べていた。
別に殺すことに忌避感はなかった。
自分に必要だったので殺しただけだと割り切っていた。
残念ながら火をつけることはできなかったので生のまま食べていた。
ありがたいことに〖貪食〗のおかげで腹を壊すこともなく食べることができていた。
一週間が過ぎた後、気持ちの整理は着いて取り敢えず森の奥に行ってみようと思った。
早速森の奥深くに向かって進むとオオカミのようなものに出会った。
もちろん全力で戦った。そんでもって何とか勝利することができた。
もっとも体は怪我だらけになり、ナイフは刃が欠けてしまったが。
仕方ないので、代わりに武器になるようなものを手に入れようと思った。
面倒なので省くがそれなりの試行錯誤の結果、魔力でナイフのようなものを作ることにした。
切れ味は抜群だったので頑張ったかいがあったものだ。
そこからはやたらとよく切れるナイフのおかげでどんどん森の奥に進むことができた。
森に放り出されて二週間が過ぎたころだろうか、俺は熊のような獣に出会い、抗い、そして引き裂かれ死んだ。
死とはどのように定義されるものなのか。
現在では脳死または生命活動の維持ができなくなる、などが主なものだろう。
しかし、今の俺にとってはどちらも死の定義としては正しくなかったようだ。
心臓は爪によって引き裂かれ頭と体は生き別れ、そんな状態になっても俺の意識はあった。
訂正しよう。俺は殺されたのではなくはたから見ると殺されたように見える状態にされたのだ。
そう、俺はこんな状態になりながらも生きていたのだ。
30分後、俺の体は元の状態に戻っていた。
いや、元の状態よりも力がみなぎっていた。
なぜ、体が再生されたのか、それは〖貪食〗によるものだと考察する。
〖貪食〗は食べたものを100%エネルギーとして取り込むことができる。
しかし、そこで取り入れたエネルギーを消費しきれていなかったとしたら余剰分のエネルギーはどこに行っているのか。それはどこかに貯められていたのだと思う。
そして俺の体が壊れたときに蓄えられたエネルギーが使われ細胞を死なないように維持、それと並行してエネルギーを過剰供給して再生力を強化、体を再生したのだろう。
体の性能が上がっていたのは、壊れたから次は壊れないようにしただけのことだ。
職人によくあるように手のひらが硬くなる、それと同じようなものだ。
これは思いもよらない能力だった。しかしデメリットもあり、とにかく痛かった。
壊されたときも意識があって、再生し始めるまでも意識がある、そんでもって再生している間も意識がある、とてもではないが耐えられるものではない気がする。
それを耐えた俺が言うのもなんだが・・・・
それからしばらくは体を慣らした。
ついでにナイフのままでは攻撃範囲と威力が心もとないので刀に形を変えた。魔力刀といったところだろう。
一週間後、再びあの熊に出会い、熊を倒した。
内容は圧勝だった。向こうの攻撃は通じず、こちらの攻撃のみが通った。
もちろん、美味しくいただいた。
このときになって気づいたことが2つ。
1つは、より強い生き物のほうが美味しくいただけるということ。
もう一つは俺は食べようと思えばいくらでも食べられるということ。
それからは一週間後にまた同じようなことになった。
そのときは相手が蛇で2回死んだ。
一回目は毒で、二回目は締め付けられて死んだ。
死ぬ時の間隔は一週間で、もちろん毎回、体は強化された。
そして毎回、とても痛かった。
最後は魔力でチェーンソーを作って体を輪切りにして倒した。
大変美味でした。
蛇を倒してから一週間後にも同じことが起きた。
その時の相手はなんかまがまがしいオーラを纏った竜で5回死んだ。
一回目は足でぷちっと潰されて、二回目は尻尾でペシンとはらわれて、三回目は突進されて、四回目は魔法らしきものを使われて燃やされて、五回目は息吹をくらって死んだ。
死ぬ時の間隔は一週間、毎回体は強化された。
もちろん毎回とても痛かった。
倒したときは六メートルにも及ぶ、強化装甲を魔力で作り、それにチェーンソーを持って戦って倒した。
全くチェーンソーの刃が役に立たなかったので鈍器とかしていたが・・・・・。
竜は今までで一番美味でした。
そんなことがあって今に至る。
もし、こちらの世界のひと月が30日ならばあと6日で城に戻ってもいいようなのだ、せっかくだから戻ろうと思う。いくら俺の影が薄くても少しぐらいはクラスメイトが心配しているだろうし、会ってやらないとな。でも、問題が一つ。
それは!!それは!!
道が分からない!!そう、帰り道のことなど考えていなくてどっちに行けばいいか全くわからないのだ。
仕方ないので、適当にほっつき歩いていた。
しばらくして目の前が開けた。