プロローグ
それから約三日、学校は休学。
心と体をゆっくりと休めなさいと担任に言われたが、休めるはずもない。
なんたって本当の地獄はこの時からなのだから。
かなは何回か会ったことはあるが、あまり顔を覚えてない叔母の家へと預けられる事になった。
自分の荷物を適当に段ボールへつめこみ、迎えの車にかなは乗る。
もう、何も感じない。辛いとか、嫌だとか何一つ思わなかった。
勝手にすればいい。
かなは車のシートに背中をつけ、ため息をつく。
「着きました」
やけに丁寧な物言いの執事らしい男はゆっくりとドアを開ける。かなも慎重に車から下りた。
目の前には屋敷とも言えるほどの豪邸が立ちはだかっている。
「遅かったわね」
後ろを振り向くと、着物姿の叔母、幾代が待っていた。相変わらず無愛想な態度。
かなは薄い笑みを浮かべ、軽くお辞儀する。
「お世話になります」
「言っとくけど、あなたを育てる気はないからね。いくら姉さんの子供でも、そこまで気を使えませんから」
は?
何を言ってるのか?
「わかりましたね。食事は与えます。部屋も与えます。でもむやみに館を歩き回らないで。はっきり言って目障りなのよ…」
この人は…。
かなは心の中で確信した。この人は…私を家に入れたくない。だがそうも出来ないから、家には入れておく。
かなはやっと気付いたのだ。
大変なことになってしまったのだと。
執事はかなが持っていた段ボールを持ち、部屋へと案内する。
案内されたのは、二階の屋根裏部屋。普通に歩くだけでも埃が宙に浮く。
蜘蛛の巣は辺り一面にあるし、とにかく人が住めるような所ではないのだ。
つまり…『いらない存在』なのだろう。
もう自分に味方をしてくれる人も居ない。
実感するのは悲しいが、事実なのだ。
かなはわりと明るい性格でクラスの中でも友達はたくさんいた。
だが、違うんだ。
自分の事を喋れる友達なんて、いない。こんな事で弱音を吐いてたらきっと弱いって思われてしまう。
それだけは避けたかった。
同情してくれなんて思わない。
でもただ黙って話を聞いてくれる人が一人でもいたら、きっとかなはこの時に人を信じれなくなるなんて事にはならなかっただろう…。
「人は…醜いね」
こんな言葉を言わなくても良かったのに…。
悪口などは控えて下さいm(_ _)m