第29話:ティル・グレゴリー
結局集まったのは俺達3人を含めて5人だった。
何かあればこの5人でこの船にいる50人を先導しなければならない。
勿論、逃げ出す事も考えたが結局リスクが大きいわりにメリットがあまりないので却下となった。
なりゆきにまかせるしかないかな…。
後でわかったんだが、この船に乗っている内のほとんど全員がまず研修生として軍に入るらしい。
その点では安心だけど………。
俺はイギリス側の軍に入るのは多少マズい。
どうしたものかな………。
そろそろ皆に俺の事を言ってもいいか……それとも………。
まぁ成り行きに任せよう。
運が良かったら早めにこの世界から退場って事になるかもしれない。
そこまで考えたところで声がかかった。
「後どれくらいで着くかわかるか??」
順だった
この頃なんかやたらと俺を頼って来る。
「時間的に考えるとあと2時間ぐらいで着くはず。」
それを聞いて拓也は綾の元へ行く。
マジで、いつからあいつらあんな仲になったんだろうな。
相変わらず拓也と朋美は一緒にいるし……。
優華は俺の知らない女の子と一緒にいる。
………ハミられた……。
「もう少しで着くから降りる準備をさせろ。」
1時間ぐらいたってからフランス語で男が俺に喋りかける。
それから1時間ぐらいで西院学園に着いた。
今から2時間猶予をくれるらしい。
その間にまず家に帰れと言う伝言を伝えた。
グランドには今はもう生徒はいない。
俺は家に帰って、まず風呂に入り、荷物を全部まとめた。
まだ30分もたっていない。
………少し寝る……かな。
………寝過ごした。
集合時間から2時間もたってる。
急いで学校に行ってみると誰もいなかった。
いや……1人だけいた。
「久しぶりだな。漣亮。」
「………ティル・グレゴリー。」
ちなみにこいつは俺の知り合い……元仲間だ。
たしか今は……スペイン軍にいるはずだ。
「ここはイギリス領だぜ??」
「あぁそうだ。だからなんだ??イギリスとスペインは同盟国だ。」
「何しに来たんだよ??」
「イギリス軍から連絡が入ってね……漣亮らしき生徒が西院にいるってね。」
「今さら何の用だよ??チームは解散したはずだけど。」
「久しぶりに顔でも拝んでおこうと思ってね……『黒き征裁』と呼ばれた男の顔をね……。」
「………。」
「ちなみにお前が一緒に行くはずだった生徒達は今、港にいるだろう。確かイギリス領のテューダに連れて行かれるはずだ。」
「…………。」
「安心しろよ。……確かに俺とお前は『あの日』を境に敵になったが、この情報は嘘じゃない。」
「なるほどね……。他の元チームのメンバーを集めて俺を殺そうとしてる頭はお前か。」
「大丈夫だ。まだ殺しはしないさ。果実は熟した方が旨いんでね。」
「………。」
「それはそうと急がないと船が出るぞ。正門に停めてある俺のバイクを使えよ。」
それを聞いた俺はすでに走り出していた。
今は元チームより大切な事がある。
………イギリス軍に入れば俺の情報があいつらに知られちまうと思ったけど、もう遅かったか……。




