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ベッドの中で半生半死の蛹さながらに浅く規則正しく呼吸をしつつ、毎夜の儀式とも習慣とも掴めない何かに耽る。

イメージからイメージを紡ぎ、依って、解いて、紡ぐ。

ヒトのそれとも区別が付かぬ過去の記憶から、まだ瞼に香る赤色の空まで混ぜたり、塗ったり、剥がしたりを繰り返す。


この季節になると毎夜、こうして夜が深まるのを恐れ、朝の足音に焦燥し、いよいよ、ふらふらと煙になって漂い沈着してしまう。

この檻とも揺り籠ともつかない四角の中に浮いている時は、叱責もなく、罵倒も無く、浪費も裏切りも全身を覆い尽くす棘の様な防壁とも重ならずに済むのである。

エロもグロもナンセンスも自在である。

フィクションはいつも自由でトリックなど要らない様に思えた。

つまらないロジックで拘束され手足の自由を奪われたヒトとも獣とも思えぬ自身に与えるモノを考えた時、その先にあるのは凄惨か静寂のどちらであり、その決定は情念ではなく、得の知れぬ闇の中だけに恍惚として聳え立つだけの様にに思えた。


しかし、目覚めるとまた、あの焦燥に駆られ、具現を恐れ予知に怯え、後退と減衰と切傷の疝痛に震えるしか無い。

一切の汚濁が押し寄せ、流され、形が消える。消えたのを見届けて現れては流される。

全ては明滅のうちに曖昧になっていくしかなかった。


「朝だよ。遅れるよ。」

ベッドに沈み込み、重くなった体が崩壊するのに耐えながら、頭だけをあげて頭上の針を捕らえる。

掴んだ瞬間に粉砕しては次の新しい空気を作り壊れていく。

その流体の様に滑る何かを全身で押さえ、その奥深く、核とも心ともいえる紅い一点へ腕を這わせる。


イメージが流されていく。

砂上の楼閣よりも脆弱で不健康な一連の事物は、時間だけを浪費した後に足元から砕かれ、崩れて粉となり、塵となり、素となり、吹かれながら、巻き立てられながら、淡い引き立ての豆の香りと供に彷徨の彼方に消えていく。

掌の1点は、錆びて汚濁された膿むような腐臭をたてながら午前8時を告げてた。

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