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diary  作者: ちゃちゃ
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2026.6.26

バン、バン、バン。


「すごいだろ。中学の時、パーカッションやってたんだ」


そう言って先生は、満面の笑みを私に向けた。


先生の目に、今の私はどんな顔をして映っているんだろう。


私は半年間、打楽器留学に行っていた。


留学を終えてからというもの、先生は会うたびに楽器の話を振ってくる。今日のはまだいい方だ。先月なんて、顔を合わせるたび私の習ってきた楽器について聞くのに、楽器の名前を毎回間違えていた。


気にかけてくれているのかもしれない。でも、本当に興味がないなら聞かないでほしいと思う。


なぜその無神経さが、私に対して失礼な行為だと思えないのだろう。


そんなことを考えてしまう私の方が、面倒なんだろうか。


今日は雨だった。


明日は台風が二つ来るらしい。


私は雨が好きだ。何となく、自分が物語の主人公になれたような気がするから。


でも今日は違う。


先生とのやり取りだけでとても疲れてしまい、そのうえ駅まで十五分歩かなきゃいけないと思うだけで頭が重かった。


もしかしたら低気圧のせいなのかもしれない。


なったことがないから分からないけど。


こういう時、物語の主人公なら、チルい音楽でも流しながら雨の中を歩くんだろう。


私も本当はそうしたい。


でも今日は朝から左耳が痛くて、イヤホンとは相性が悪かった。


じゃあ雨音だけを聴きながら歩けばいいのかもしれない。


けれど今日みたいな、土砂降りでも小雨でもない雨は、私にはどうにも「ただの雨」としか思えなかった。


道路の反対側を、一人の人が傘も差さずに駆け抜けていく。


少しだけ格好いいと思った。


きっと、今日みたいな何でもない雨の日に主人公になるには、あれくらい勢いがいるんだ。


あれくらいなら、私にもできる。


そう思ったのに、結局私は傘を閉じることもなく、その人の背中を見送った。


雨は相変わらず、ただ降っているだけだった。


私は傘を握り直して、駅までの道を歩き出す。


きっと私は、主人公の器じゃない。

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