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第5章:闇の中の断片

暗闇。


優しい夜の暗闇ではない。目を閉じたときの一時的な暗闇でもない。


絶対的な暗闇。重く、息が詰まるような。


まるで世界が光の存在を忘れてしまったかのよう。


私は座っていた。冷たく湿った石の壁にもたれて。脚を伸ばして。手のひらを上に向け、汚れた床の上に置いて。


動かなかった。


ここに放り込まれてからどれだけの時間が経ったのか分からない。


何時間?何日?


どうでもよかった。


何もかもがどうでもよかった。


目は開いていた。虚無を見つめて。空っぽだった。


私の心は砕け散っていた。


断片が浮遊している。繋がりを失って。それぞれが違うことを叫んでいる。


パパは死んだ。


本当の父親じゃなかった。


それでもパパは私を愛してくれた。


私は悪魔の娘。


カンビオン。


欠陥品。


一週間で死ぬ。


思考はまとまらない。ただ存在するだけ。混沌として。痛みを伴って。


息をした。


吸って。吐いて。


空気はカビ臭かった。湿った土。何か腐ったもの。


気にならなかった。


目を閉じた。


そして記憶が蘇った。


5歳3ヶ月の頃


「パパ、本当の魔法について教えて?」


何日も前からしつこく頼んでいた。ジュレンがあの時会話を中断して以来。


父はため息をついた。ドアを見た。彼女が近くにいないか確認して。


「セキレ、お母さんは気に入らないぞ」


「お願い」


いつも彼に効く目をした。


彼は折れた。


「分かった。でもお母さんに聞かれたら、お前がすごく不安そうだったから落ち着かせようとしただけだ。約束だぞ」


「約束」


彼は私を近くに引き寄せた。居間の木の床に一緒に座った。


「お母さんはずっと前に魔法を使うのをやめたんだ。お前が生まれる前にな。水の適性があった。良かったんだぞ。師ほどじゃないが、十分だった」


「何があったの?」


父はしばらく黙っていた。


「使ってはいけないことに魔法を使ったんだ。師が罰した。暴力ではなかったが、もう使うことを禁じた。従わなければ報いがあると言った」


彼は自分の手を見た。


「それ以来、彼女はすべてを内に秘めている。マナはまだそこにあるが、出させない。痛いはずだ。でも師に逆らうよりはマシだと思っているんだ」


喉が詰まった。


「パパは?なんで師はパパには使わせてくれるの?」


「俺の魔法は弱すぎて脅威にならないからだ。それに仕事のためだけに使ってる。それ以外は何も」


沈黙。


それから彼は手を叩いて、雰囲気を変えた。


「でも悲しい話はやめだ。学びたいんだろ?じゃあ基本からいこう」


彼は炭のかけらを取って床に描き始めた。


「魔法を使う主な方法は三つある。呪文、付与、直接操作だ」


彼は三つの円を描いた。


「呪文は魂に刻まれた魔法だ。通常は誰かから学ぶか特別な本を通じて習得する。呪文を覚えると、それが記憶に保存される。思い出してマナを流すだけでいい」


「どうやって保存されるの?」


「説明するのは難しいな。でも本当に呪文を習得すると、それが定着するのを感じる。まるで心の中に新しい扉が開いたみたいに。使いたいときは、その扉を開いてマナを流すだけだ」


彼は二つ目の円を指さした。


「付与は違う。意識的に構築するマナの構造だ。近道はない。各層、各接続を視覚化する必要がある。時間がかかるし複雑だが、より汎用性が高い。どんな呪文も実現できない独自の効果を作り出せる」


「三つ目は?」


「直接操作は最も基本的で、同時に最も難しい。純粋なマナを取って、定義された構造なしにそれを形作るんだ。俺が薪を切るときみたいに。呪文は使わない。ただ風のマナを取って刃に向ける。シンプルだが、繊細な制御が必要だ」


彼は絵を消して別のものを描いた。


「次は適性。誰もが少なくとも一つは持っている。火、水、土、風が一般的だ。でも他にもある。砂の魔法。木の魔法。金属の魔法。もっと奇妙なものも」


「例えば?」


「影の適性を持つ人の話を聞いたことがある。光の適性の人も。水じゃなくて氷とか、火じゃなくて溶岩とか、かなり特殊なものに適性がある人もいる」


彼は私を見た。


「適性は、どのタイプのマナをより簡単に制御できるかを決める。そのタイプしか使えないわけじゃないが、そのタイプがより良く反応するってことだ」


「みんなテストで分かるの?」


「そうだ。石がお前のマナに反応して、適性の色を示す」


彼は私を抱きしめた。


「お前がテストを受けたとき、小さな花よ、何であっても構わない。どんな結果でも誇りに思うよ」


「約束?」


「約束だ」


牢屋に戻って


目を開けた。


暗闇はまだそこにあった。


でも今は何か別のものがあった。


怒りではない。


ただの意志。


じっとしていたくないという意志。


何かをしたいという意志。


彼は教えてくれた。知識をくれた。


使えないかもしれないと知りながら。


私のためにそうしてくれた。


右手を上げた。何も見えないのに、それを見た。


自分の内側を探した。


あの存在。テストのときに感じたもの。


時間がかかった。でも見つけた。


胸の中心に。小さく。眠っている。


でもそこに。


引き出そうとした。


ゆっくりと。慎重に。


存在が動いた。


腕へと流れた。


指へと。


そして出た。


見えなかった。でも感じた。


何か熱いもの。普通の熱とは違う。もっと深いもの。


マナ。


私のマナ。


流れさせた。方向性もなく。目的もなく。ただ感じながら。


そして奇妙なことに気づいた。


マナには色がない。というより、定義された適性がない。


水ではない。火でもない。何も特定のものではない。


中性?


それとも私が認識できない何か?


試してみた。


床から小さな石を取った。両手で持った。


マナをそこに流し込んだ。


石が少し熱くなった。


でも変化しなかった。


もう一度試した。もっとマナを。もっと意図を込めて。


変われ。


違うものになれ。


変身しろ。


石が震えた。


そして変わり始めた。


溶けるのではない。壊れるのでもない。


変身している。


質感が変わった。滑らかになった。軽くなった。


形が伸び始めた。


そして止まった。


マナの流れを止めた。


結果を分析した。


石はもう石ではなかった。


石と木の中間のような何か。奇妙な質感。違う重さ。


不完全。不完璧。


でも変化だった。


変身。


心臓が速くなった。


これが私の適性?


変身?変質?


なぜテストの石は示さなかった?


分からなかった。


でも今、何かを持っている。


火花。


小さい。でも存在する。


試し続けた。夜ごとに。あるいは夜だと思っていたものごとに。


石は何か違うものの断片になった。わらはもっと抵抗力のあるものになった。


試みはすべて失敗だった。不完全だった。


でも試みはすべて進歩だった。


そうしている間、胸の痛みが減っていった。


消えたわけではない。


でも耐えられるようになった。


3日後


足音。


牢屋に降りてくる足音が聞こえた。


弱い光が現れた。松明。


そして彼女が現れた。


ジュレン。


私の母。


彼女は違って見えた。


髪はほどけて。乱れて。目は赤く腫れて。顔は青白い。


生気がない。


まるで何かが彼女から引き抜かれたかのよう。


彼女は独房の前で立ち止まった。私を見た。


口を開けた。閉じた。もう一度試した。


「セキレ」


声はかすれていた。壊れていた。


答えなかった。


ただ見ていた。


彼女は唾を飲み込んだ。涙が流れ始めた。


「話さなきゃいけない。分かってもらわないと」


「何を分かれって?パパを死なせたこと?私が怪物の娘だってこと?」


「そうじゃない」彼女は頭を振った。必死に。「そうじゃないの」


彼女はひざまずいた。


「ヴォルカンが来たとき、私は18歳だった。村は死にかけていた。干ばつ。飢饉。病気。人々は絶望していた」


声が震えた。


「彼が現れた。助けを申し出た。雨。守り。必要なものすべて。でも代償があった」


「生贄」


「それだけじゃない」彼女は涙を拭いた。「献身を求めた。支配を。そして何人かを特別に近くに置くことを選んだ」


彼女は下を向いた。


「私は強い適性があった。彼が気づいた。役に立つと言った。聖域に連れて行った。高度な魔法を教えた。特別だと感じさせた。力があると」


「それで?」


「それで誘惑された。力ずくじゃない。言葉で。約束で。重要な存在になれると言った。一緒なら村を繁栄させられると」


彼女は顔を覆った。


「信じた。彼が本当に何なのか気づいたときはもう遅かった。もう囚われていた。理解できない形で彼に支配されていた」


「逃げられたはず」


「逃げられなかった!」彼女は叫んだ。それから落ち着いた。「印をつけられた。物理的じゃない。魔法的に。逃げようとしたら、本当に逆らおうとしたら、彼は知る。そして罰する。私だけじゃない。愛する者すべてを」


彼女は私を見た。絶望的な目で。


「最初に妊娠したとき、彼は気にしなかった。赤ちゃんを産ませた。でも病弱に生まれた。弱く。3日で死んだ」


最初?


私に姉がいた?


「私の失敗だと言った。私の血統が劣っていると。そして魔法を使うことを禁じた。ふさわしくないと」


彼女はむせび泣いた。


「その後グレンリックに出会った。彼は優しかった。良い人だった。ヴォルカンとは正反対の。でも話せなかった。危険を冒せなかった」


「それで私が生まれた」


「そう」彼女は私を見た。「ヴォルカンがある夜私を呼んだ。お前が生まれる前に。後継者が必要だと言った。私が役に立つと」


「戦わなかった」


「戦った!」彼女は床を叩いた。「持っているものすべてで戦った!でも彼は強すぎる!そしてお前が生まれたとき、赤毛を見たとき、分かった。お前が彼の子だと。でも同時に分かった。チャンスがあると。お前が違うかもしれないと。逃げられるかもしれないと」


「何から逃げる?」


「武器に変えられることから。彼の延長になることから。道具になることから」


彼女は深く息をした。


「だから髪について嘘をついた。だから距離を保った。もし公然とお前を愛したら、彼が気づく。そして私たちに不利に使う」


涙が自由に流れた。


「でもグレンリックがお前を愛した。私は許した。痛くても、内側で私を殺しても、お前には誰かが必要だと分かっていたから」


彼女は格子越しに手を伸ばした。


「セキレ、失敗したのは分かってる。傷つけたのも分かってる。許しに値しないのも分かってる。でも信じて。毎晩、本当にお前を抱きしめたいと願っていた。愛していると言いたかった。守りたかった」


声が完全に崩れた。


「でも臆病者だった。そして今グレンリックは死んで、お前も死ぬ。すべて私のせい」


彼女は崩れ落ちた。激しいむせび泣き。


彼女を見た。


私の一部は叫びたかった。罵りたかった。すべてを彼女に投げつけたかった。


でも別の部分は理解していた。


正当化はしない。


でも理解した。


彼女も被害者だった。


違う形で壊れていた。


「ジュレン」


彼女は顔を上げた。


「許さない。まだ。多分永遠に」


彼女の目に痛みを見た。


「でも理解する」


彼女はもっと大きくむせび泣いた。


「そして私がここから出たとき、それはあなたが救ったからじゃない。自分で自分を救ったから」


立ち上がった。


「だから、もしかしたらまた話せるかもしれない」


ジュレンは私を見た。希望と絶望が混ざって。


何か言いたそうだった。でもただうなずいた。


立ち上がった。無駄に涙を拭いた。


「ありがとう。聞いてくれて」


そして去った。


松明の光が消えた。


暗闇が戻った。


でも今回は、それほど気にならなかった。


2日後。処刑の前日


座っていた。瞑想していた。


マナを感じようとしていた。もっと制御しようと。理解しようと。


変身は今ではうまくいっていた。まだ不完全だが、良くなっていた。


石を木に近いものに変えられた。わらをもっと抵抗力のあるものに。


小さな成功。


でも鉄の扉を壊すには十分じゃない。


逃げるには十分じゃない。


苛立ちが募った。


明日、私は死ぬ。


そして何もできない。


パパは無駄に死んだ。


ジュレンは無駄に苦しんだ。


私は何の違いも生み出さずに死ぬ。


怒りが湧き上がり始めた。


最初は小さく。


でも大きくなっていく。


いや。


いや。


いやだ。


ここで死ぬもんか。


ヴォルカンに勝たせない。


すべてが無駄だったことにさせない。


目を閉じた。


マナを探した。今までより深く。


知っていた小さな存在を超えて。


もっと深く。


もっと奥深く。


そして何かを見つけた。


小さくない。眠っているのでもない。


巨大な。


眠りについている。


待っている。


心臓が止まった。


これは何?


触れようとした。


それが動いた。


そして咆哮した。


音ではない。感覚。


まるで巨大な獣が私の中で目覚めたかのよう。


マナが爆発した。


これまで使っていた中性的で制御されたマナではない。


黒いマナ。


紅い。


暴力的な。


波のように私から出た。濃い煙が独房を満たした。


泡立って。沸騰して。


体が変わり始めた。


痛み。


鋭い。激しい。


額が裂ける。何かが生えてくる。


角。


小さい。曲がった。黒い。


目が燃える。視界が変わる。


すべてがより鮮明になった。色がより鮮やかに。


赤。


紅。


口が痛む。歯が伸びる。


牙。


犬歯が刃になる。


指が熱い。爪が伸びる。


鉤爪。


鋭い。


マナは出続けた。


もっと。もっと。もっと。


黒と紅の煙が凝縮した。


壁を押した。扉を。


そして扉が爆発した。


金属がねじれた。蝶番が壊れた。


扉が飛んだ。


反対側の壁に耳をつんざく轟音とともにぶつかった。


私は立っていた。


荒く息をして。


煙がまだ私から出ていた。


余分な5センチの身長には気づかなかった。


あるべき場所に穴があることだけを感じた。


自分の手を見た。鉤爪を。


静脈を流れる力を。


でも私の目は空っぽのままだった。


抑鬱的。


まるですべてが重要でないかのように。


まるで遠くから見ているかのように。


ヴォルカン。


私の声は空洞だった。生気がない。


煙が私の周りを回った。


あなたは私を欠陥品と呼んだ。


一歩前に出た。


役立たずと呼んだ。


もう一歩。


私の父を殺した。


鉤爪が暗闇の中で輝いた。


そして今、私は復讐する。


声に激怒はなかった。


ただの宣言。


冷たく。空虚で。必然的。


第5章終わり


灰から炎が生まれる。そして炎は焼き尽くすとき何も感じない。

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