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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生トラックドライバー

作者: FURU

 人を轢いた。

 

 毎日の激務で、ふと意識が飛んだ瞬間には、全てが終わっていた。


 俺が轢いてしまったのは、一組の若い夫婦だった。


 過失運転致死罪で俺は逮捕された。


 しかし俺の勤めていた運送会社の法律違反が発覚し、俺は比較的早く出所することとなった。


 だが、前科者の俺にまともな再就職先があるわけも無く、俺はなけなしの貯金を切り崩しながら生活した。


 でもその生活も、俺が人を轢き殺したことが知られると、当然冷やかな視線を向けられた。

 俺の起こした事故が、夫婦の子供である赤ん坊一人が生き残った痛ましい事故として報道されたのも原因だろう。


 知られる度に引っ越しをすること数回。

 ついに貯金も尽きた。


 …もう、疲れた。


 翌日、近所にある山に入った俺は、その下らない人生を終えた。


 …筈だった。


「どうも○○さん、神です。」


 真っ白な空間の中、俺の目の前の女性がそんなことを言っている。


 神とか…存在するわけが無い。


「今、目の前に、いるじゃないですか!」


 こんなのが走馬灯になるような心あたりなど無いのだが…。


「こんなのって!?

 これから上司になる女神に、そんなこと言って良いと思ってるんですか!?」


 うるさいなぁ…。

 走馬灯はもういいから死なせてくれ。


「駄目ですぅ~!

 罪を犯した貴方には、不幸な人々を救わなければ死ぬ権利なんかありません~。」


 …その顔ムカつくなぁ、殴って良いか?


「暴力反対!

 もうっ、こんなことしてないでさっさとお仕事ですよ!」


 気づけば俺は、トラックのハンドルを握り何処かを走っていた。


「え…?」


 俺はもう死んだ筈じゃ…。


『そうですよ~?死んだ貴方は、これから私の部下として、馬車馬の如く不幸な人々を転生させまくるのです!』


 こいつ、頭に直接…!

 …しかし、自称女神の部下ということは、俺は天使にでもなっちまったのか?


『プギャーッw

 思い上がりも甚だしいですねぇ~?』


 …こいつ、いつか泣かす。


『もう笑い過ぎで泣いてますよ~だ。

 …おっと、早速お仕事の時間ですよ。』


 ちょ、いきなり仕事とか言われても困るんだが?

 

『大丈夫ですよ~。

 貴方は私の指示通りにするだけですから。

 ほら、アクセル全開♪︎』


 んなこと言われても…って足が勝手に!?

 なっ、急に目の前に人が…!


『一名様、異世界にご案内~♪︎』


ドンッ


 …………………、俺はまた人をっ…。

 しかも見たところ学生、未来ある若者を…! 


『あー、彼イジメられてたんですよ?』


 だからといって…!

 命を奪うのが神の救いなのかよ!?


『はい♪︎魂が磨耗する前に転生させることで、魂の余剰エネルギーを使って貴方たちの言うチートなるものを付与出来るのです!』


 …つまり、今轢いた彼は?


『………あ。

 彼、好きだったゲームの世界に転生したいみたいです。』


 お前が転生させるのか?


『お前じゃなくて“女神さま”ですぅ!

 …ゲームのステータスとアイテムそのままを希望したので、それ活用してスローライフを送るみたいですよ?』


 …彼の様子は分かるのか?


『何なら未来まで分かりますよ、神ですので!』


 じゃあ未来の彼は…


『ん~、………。

 可愛い奥さん二人と子供11人作って、孫30人に囲われて大往生ですよぉ?』


 それは…、イジメられ続けるより余程良い人生だろう。


『はい♪︎…てことで次!』



 … … … … … … …。


 … … … …。


 …。


 

 初めて人を転生させてから、俺は一体何人を転生させたのだろう?


『次で丁度一万人ですよぉ~!』


 ありがとうございます、女神さま。


『いえいえ~、貴方も良く働いてくれてますよ~?

 最初の頃はどうなるかと、ヨヨヨ…。』


 その節は失礼しました。


『許します、私女神さまなので!

 っと、記念すべき一万人目のターゲットでっす!』


 ターゲットの情報は?


『ん~と…。

 現在17才の女子高生。

 幼少期に両親が事故で他界。

 叔父に引き取られ育てられるも、13才の頃から性的虐待…はぁ、屑ですねぇ。』


 確かに…。


『ま、彼女の本当の不幸は両親を知らないってことですが。』


 …因みに幼少期とは?


『幼少も幼少、何せ産まれて直ぐですから。』


 っ…!


『気づきました?貴方が生前轢き殺した夫婦の子供ですよ?』


 ………。


『あら…、ショック受けちゃいました?

 最近の貴方は充実していましたからねぇ。』


 …何でこんな


『何でって、忘れちゃいました?

 これが貴方への罰なのですよ?』


 あぁ…、そうだった。


『でもご安心を。

 貴方の罪は彼女を転生させることで灌がれるのですから。』


 …そうか。


『てことでハイ、最後は貴方自身の意志で。

 彼女を両親の元へ送ってあげてくださいな?』


 っ…、そうか。


 俺は目の前の横断歩道を渡る中年の男と女子高生に向かって、信号を無視してアクセルを踏み込んだ。
























「…お疲れ様でした。

 って、もう転生してしまいましたか。」


 さて…。

 彼は彼女の元で、どんな風に成長するのでしょうね?


本作を読んでいただきありがとうございました。


本作を気に入っていただけたら、是非作者の他作品の方もよろしくお願いします。

 

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