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愛の共同作業 4
女は唇の端に血の泡を浮かべていた。
かすれた息が漏れる。
横たわった体はほとんど動かすことができず、かろうじて聞こえる声は、
「どうして、どうして」繰り返されるだけだった。
私は、胸のナイフの状態をみた。肋骨に邪魔されたのか、深さが十分ではなかった。
女は、私をすがるような目で見た。少しだけ、哀れさを感じた。
「あなたが一番頼ってはいけない人間だよ」
女から徐々に生気が失われつつあった。待つということも考えたが、この後の予定もある。
私は女に近づくと、やさしくささやいた。
「あの人のためだから」
そして、ナイフに手を添えると角度を整え、より深く沈めていった。
ああ、今、私は、あの人との共同作業を始めたのだ。
叫びだしたいような思いになる。
叫んだりしないけど。
この後の作業が無事に終わること、それが二人の共同作業。
そう、これが、ひとつめ。