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無償の愛3
ちょっと外を歩きましょう」と彼女は言った。私は提案に応じ、店の外に出た。
街の人通りはかなりのものだった。油断すると見失いそうだ。同じことを彼女も考えたのか、ぴったりと私のそばにいた。
「寒いね」と彼女はハンドバックを開けて、手袋を取り出した。上から覗いたとき、バックの中にアイスピックのようなものが見えた。
気のせいかもしれない。
彼女はじっと私を見て、にっこりと笑った。
「愛する人!」
私は大声で叫びたかった。この人混みの中で。
「ああ、この人のためなら、何だってできる」
ポケットの中のナイフがほのかに暖かかった。




