未来のために
全ての後始末と掃除を終え、自宅にたどり着いて泥のように眠った。
夢を見た。
昔の私の夢だった。
私は、幼いころに他人に売られた。
13歳から客の相手をさせられた。
ひどいことをされてきた。
客の体重に押しつぶされながら、心のスイッチを切ることを覚えた。
でも、このままではすぐに心が粉々になってしまう。
心の奥にぽつんと残してきた感情があった。
殺意だった。
それなのに幼い私は、殺意を現実に表現できなかった。
肉体的な暴力に耐えるだけで、生命力が日々枯渇していたのだ。
いずれ、私は壊れて、私を飼っている人間から捨てられてしまう。
ただその日を待つだけの私の前に、あの人が現れたのだ。
あの人は客として私の前に現れた。
私の飼い主は、あの人に殺された。
客として来たのは、口実だったのだろう。
あの人は約束の時間の間、何もせずに椅子に座っていた。
窓の外のネオンの明かりを静かに見つめていた。
私には一切の興味も持っていなった。
ベルが鳴り、あの人が部屋から出ていくと、隣の部屋から音がした。
しばらくすると静かになり、何も聞こえなくなった。
どれくらい時間がたったのだろう。
のろのろと部屋の外に出ると、開いた金庫の前で、飼い主が喉にアイスピックを刺されて死んでいた。
私は、じっと飼い主を見つめた。眼の光は消えていた。間違いなく死んでいる。
ああ、と心に手紙が届いたように、私の中に殺意がよみがえった。
私が本当に望んでいたことが、目の前で実現していた。
あの人が、代わりにやってくれたのだ。




