1 ゲーム業界の新時代を築いて欲しいだけなの
私、加藤紗枝は自分党の議員だ。
そして私はカプコンが好きだ。
なので総理になった今日、根回しをして100兆円を投資することにした。
その結果、警察、救急、消防、介護などの重要インフラは麻痺した。暴動が起きた。
だから独裁政権を樹立することにした。逆らう奴は武力で黙らせるのだ。私には465人の屈強な議員先生たちが付いている。
「ふふふ、これで逆らう奴は地獄行きね」
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それは冬の寒さが残る1月頃の話だった。
加藤紗枝が100兆円をカプコンに投資してから、最初の1週間は騒然としていた。突然の巨額投資に、開発チームは歓喜と混乱が入り混じる。開発スタジオでは、次世代バイオハザードの構想を描くために連日ブレインストーミングが行われた。
「まずはリアルさだ。100兆円を使って、現実と見分けがつかない世界を作ろう。」
エンジニアが最新のフルダイブVR技術の導入を提案。プレイヤーがゾンビの息遣いや血の匂いまで感じられるシステムが検討され始めた。同時に、モーションキャプチャーの撮影を行うために、数百人の俳優が契約された。
撮影現場では、俳優たちがゾンビ役を演じるために特訓を重ねる。皮膚が腐敗したように見える特殊メイクは毎日数時間を要し、撮影後には顔が硬直して動かなくなるほどだった。モーションキャプチャースーツを着た俳優たちは、絶叫しながら不規則に動き、まるで本物のゾンビのようだった。
次の工程ではAI技術を活用した自律型NPCの開発に移行した。AI研究者たちは「プレイヤーの行動に応じて感情を持つNPC」を実装することを目指し、NPCが恐怖や怒りを学習するプログラムを組み込む。
「ゾンビも進化するべきだ。単なる群れではなく、生存本能を持たせよう。」
ゾンビのAIは状況に応じて群れの行動を変化させ、プレイヤーを追い詰める戦略を立てる。さらにプレイヤーの逃げ方や戦い方に順応する、恐るべき存在へと進化した。研究者たちは連日モニターと向き合い、ゾンビの挙動を微調整するためにシミュレーションを繰り返した。
ウイルスシミュレーションが開始された。ウイルスの感染拡大をリアルに再現するため、医療機関や感染症研究者とも連携。都市一つが数時間で壊滅する様子や、変異種の発生をリアルタイムで描き出す。
研究者たちは細菌学の資料を何百冊も読み込み、現実に即したパンデミックのシナリオを考案。感染の拡大速度や症状の変化を精密にシミュレートし、ゾンビ化の過程を徹底的にリアルに再現した。
グラフィックの徹底強化に着手。フォトリアルな街並みや血の質感、ゾンビの腐敗した皮膚までもが超高精細で描画された。巨大なサーバーファームが24時間稼働し、数ペタバイトに及ぶテクスチャデータを生成した。
グラフィックデザイナーたちは数ヶ月かけて実在する廃墟や災害現場を取材し、細部にわたる汚れや崩壊の表現にこだわった。壁のひび割れや錆びついた金属の質感までもが、プレイヤーの恐怖心を掻き立てる仕上がりとなった。
プレイヤー体験の最適化が行われた。没入感を高めるために、匂いや温度を再現する特殊デバイスを用意。プレイヤーが血の臭いや焼け焦げた街の匂いを感じることで、極限のサバイバル体験を提供した。
開発者たちはVRゴーグルを何度も装着し、体験テストを繰り返した。何時間も続くテストの末、リアルすぎる恐怖に耐えきれず悲鳴を上げる者もいた。
3年後、開発はついに完了。カプ・コンの代表が壇上で発表する。
「これは、バイオハザードの到達点です。」
加藤紗枝は満足げにその様子を見つめ、発売の日を待ちわびた。
「さ~て、カプコンさんはどうなってるかな~」