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メビウス  作者: 和泉 兎
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***

 玉は河を流れてくる。


 白く淡い光を放ちながら、それはそれは長い旅路を行くようにたゆたって。


 ゆっくり、ゆっくり。

 音もなく、ただ緩やかに。


 玉は流れてゆく。


 流れを妨げるものはない。

 ずっと、果てしなく続く流れに乗って、どこまでも行くのだろうと思われた。


 しかし、いつしか玉はその速度を落とし、ついには動きを止めていた。


 漆黒の大地に、身を寄せるように。

 岸辺に辿り着いたのだった。


 最後は、伸びた手に掬い上げられ、河から男の手へと納まった。




 こうして、男の気紛れに運命は繰り返し始める。

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