015
X月X日
唐突にカイとヒナが魔族領へ使者として行くことが決まった。
1ヶ月後に出発の予定だ。騎士団の精鋭も数人同行するらしい。
しばらくは準備で忙しくなるから来られないと伝書鳥が届いた。
ならば俺も自分にできることをやろう。2人には無事に帰ってきてほしいしね。
道中は魔獣や山賊なんかも多そうだから、まずは防御優先の装備品。
兜、鎧、コテ、ブーツ、盾、ローブ、くさびかたびら。
ローブは防寒用と、隠密用の2種類。
戦うための剣、弓、杖。剣は大剣、短剣、魔法剣など。
杖には魔法を増幅させるヒナ専用の魔法陣を刻んだ。
探知魔法を付与した腕輪と、野営用に魔光ランプ、調理器具や調味料など料理セット、空間拡張したテントもマジックバックに入れて。
RPGに出てくるようなものを思いつく限り作りまくった。
ちなみに日本の実家にゲームはない。
父親に禁止されていたから友達の家で遊んだくらいしか記憶にない。
だからなんとなくフワッとしか思い出せなかったけど「モノ作り」補正でなんとか頑張った。
鉱石や金属の加工は以前立ち寄った町で知り合いになった工房の職人にも協力してもらったし、魔鉱石を錬金して練った特殊素材も使ってる。
モノ作りの腕前もかなり上がっているのでそれなりのものが出来たと思う。
もちろん伝書鳥の指輪も追加で作成。今回は音魔法も付与して音声を届けられるように。
これでスマホに一歩近づいたぞ。
ご飯を食べることも、寝ることも忘れて夢中になっていたらテオドールに怒られた。
差し入れしてくれたスープとおにぎりが最高に美味しくて、あたたかさが身体に染みわたる。
体の奥が、じんとした。
この米は、先日立ち寄った町で香辛料と一緒に売られていたものだ。
あの町は国境近くの村や町の中では一番大きいから、国外の行商人が珍しいものを売りに来るのだそうだ。
産地に米を買いに行きたいけど俺が国外に行く許可が出るかはわからないな。
こっそり飛んで行っちゃおうか?
そんなかんじで忙しくしていたら、あっというまに使者が旅立つ日が来てしまった。
夜明け頃に王城の裏門近くの厩の陰で待ち合わせ。テオドールと2人で隠密ローブをかぶって裏門へ向かう。
カイには一昨日、「渡したいものがある」と伝書鳥を送ってある。
誰にも見つからずに来てくれると良いんだけど・・・とドキドキしていたら、待ち合わせの場所に3人の人影が見える。
カイとヒナと・・・宰相さんだ。これは、アレだ。たぶんいろいろとバレてる。
テオドール、秘密にしてくれていたのにすまん。
今は見つかるとヤバそうだからそのまま隠れていてくれ。
隠密ローブを外した俺は、そのまま宰相さんの執務室に案内された。
気持ち的には連行だ。体中がガクガク震える。
冷や汗が止まらない。
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