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日ごろの成果

 女の子って小さいころから結構しっかりしてんだよなぁ。

 思い出してみれば、小学生の頃とか女子のが背が高かったような気がするし。

 このローズって子は、多分殿下のことが好きなんだろうな。本当に好きなのか、親になんか言われてんのかは知らないけど。

 だとしたら、イレインをそんなにライバル視する必要はないんだけどな。

 不本意ながらイレインは俺の許婚だし、そもそも中身が男だから殿下のことを好きになったりしないだろうからな。


 殿下がイレインのことを好きになることはあるかもしれないけど。


 ローズの勢いに殿下はやや押され気味だ。

 笑顔で握手はしていたけれど、ぐいぐい前に出てくるローズに、積極的に会話することができなくなっている。助け船を出してあげてもいいけど、女子の邪魔すると後で文句言われるからなー。

 殿下的にも女子の上手なあしらい方とか覚えておいた方がいいんじゃないかなー?いや、実は俺ができないとかではなくてね。必要かなって話、これホントに。


「そ、そうだ、ローズ。ほら、あっちにいるのはセラーズ伯爵家の嫡男のルーサーだぞ。初めて会ったんじゃないのか?」


 あ、俺に話題を振って逃げたな。ちなみに俺はこのローズって子の背景とかなんも知らないぞ。どこのお嬢様なの? 貴族には違いないんだろうけど。


「お初にお目にかかります、セラーズ家嫡男のルーサー=セラーズと申します」


 一応習ってきたとおりに、優雅ではないけれど丁寧にあいさつをした俺を、ローズは少しの間観察してからにっこりと笑ってくれた。


「スレッド侯爵家のローズですわ」


 ひらひらのスカートのすそをつまんでかわいらしい挨拶。挨拶してもいい相手、くらいには思ってくれたようで何よりです。えーっと、侯爵家だと一応うちより家格は上、ってことになるのかな? 

 

 よくわかんないけど丁寧に対応しとけば大丈夫でしょ。所詮俺たち5歳児だし。とりあえずにこにこしとこ。

 生ですわ口調と強気な姿勢はイレインよりさらに悪役令嬢っぽいけど、もしかしてそれっぽいのがこの世界のデフォルトなのか? いや、でも普通に子供っぽいのもたくさんいるしなぁ。


 俺がぼんやり考え事をしているうちに、ローズ嬢はあっさり俺から興味を失って再び殿下に首ったけ。イレインはこれ幸いと黙り込んでいないふり。俺も手持無沙汰になって、意味もなく魔力を垂れ流してみたり、子供たちが遊んでいるさまを眺めたりしていた。

 あ、ミーシャと目が合った。

 使用人の中でもミーシャは一番若いくらいだ。そしてかわいらしい。

 一瞬手を振ろうかなーと思ったけれど、それをしたら寂しくなってメイドさんに抱き着いている男の子と大して変わらないような気がしてやめた。

 周りの使用人たちから生暖かい目で見られるのはごめんだ。


 ローズ嬢が今着ているかわいらしいひらひらドレスの話をしているのをBGMに観察を続けていると、少し離れた場所でぶんぶんと腕を振り回している両目が前髪で隠されている男の子の姿が見えた。

 近くには積木がたくさん。

 気づいたときには手に余るほどの大きさの三角形の積木が、男の子の手から射出されていた。


 おでんの頭みたいな形をした積木が、俺に向かって真っすぐ向かってきている。

 避けよう、そう思ったときにはかなりの至近距離まで来ていた、回避行動途中で体を逸らしたまま、思わず出てしまった手に積み木が当たり、ぱしっとそれを掴んでいた。


 お、おおー……。よく掴めたな、運が良かった。父上と剣術の稽古をしているおかげでちょっと動体視力とか良くなってる?

 三角形の鋭角が手のひらに刺さるような形でちょっと痛い。


 顔を上げると場がやや静まって、使用人たちに緊張が走っているのが見えた。

 ミーシャはちょっとほっとした顔をしている。大丈夫大丈夫、これぶつかっても多分大した怪我になってないし。結構軽い材木で作られてるっぽい。


 積み木を返してやろうと立ち上がると、投げた本人がわたわたと手を動かして動揺している。わざと投げたわけではないんだろうな、この様子だと。

 積み重ねられた積木はよく見れば城のように組み立てられていて、頭にこの三角を載せたらおさまりが良さそうだ。完成間際にテンションが上がってぐるぐるしててすっぽ抜けたのかな?

 ほいっと天辺に積み木をのせる。


「これで完成ですか?」

「……うん!」


 俺が怒ってないのがわかったのか、元気よく返事が戻ってきた。

 大変よろしい。

 子供は元気が一番じゃよ、ほっほっほ。


 一桁児の中に放り込まれているせいか、自分が爺になったような気分を味わいながら、元の位置へ帰っていくと、なんか殿下が興奮した様子で俺のことを迎え入れてくれた。


「俺のこと守ってくれたのか!?」

「……はい?」

「ありがとな!」


 手を両手で握られてぶんぶんと振られる。

 守ったつもりはないし、多分俺が避けてても殿下には当たらなかったけどね。イレインには当たってたかもしれないけど。

 でも感謝されてるし、わざわざ否定することもないか。


「自然と体が動いていて」


 嘘じゃないよ?


「ルーサーは剣の稽古もしてるのか? 反応がすごく早かった!」

「ええ、父上に少しだけ……」


 キラキラ笑顔まぶしいなぁ。

 あとね、ローズ嬢。歯を食いしばって俺を睨みつけるのやめよう?

 見境なしの狂戦士バーサーカーかなんかなの、君は。

最新話までお読みいただきありがとうございます!

「面白かった!」「続きが気になる!」などございましたら、

ぜひぜひ★★★★★やブクマを頂けますと嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] >見境なしの狂戦士かなんかなの、君は。 げに恐ろしきは盲目なった恋心!! +ヤンなデレ
[一言] 王子の株爆上がりです!5歳にしてこの才能! 主人公もまけてませんね! 素敵な時間をありがとうございます!
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