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たぶん悪役貴族の俺が、天寿をまっとうするためにできること  作者: 嶋野夕陽
面倒ごとがやってきそうかも、多分ね

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対等な友人

 ルーサー君派閥の皆にちょっと事情を説明して、今日はアウダス先輩とお食事。

 彼らも体力と筋力がつくにつれて、自信も養われてきているようだし、集団で固まっている分にはそれほど心配はないだろう。

 問題があるとすれば、最近ルーサー君派閥は自信をもった上に、やや口調の汚い先輩方に影響されて行動全般が粗野になり始めている。ちょっと怖がられてるっぽいけど、まぁ、なんか、悪い奴らは近寄ってき辛くなってるし、これはこれでいいのかなって俺は思っている。


 そんなわけで、俺の暴発を心配していそうなアウダス先輩の座っている席の隣に腰を下ろす。基本的に先輩は孤高の人なので、周りに人はいないんだなぁ。

 どうやら友人関係も、貴族よりも平民側に多いようで、寮では特に友人と共に時間を過ごしているのは見かけない。


「おはようございます」

「おはよう、余計なことはしていないな」

「してません」


 開口一番それはひどい。

 アウダス先輩って言葉足らずなところあるから仕方ないけど。


「ただ、自分なりに色々と聞いてきました。あの二人って王立騎士団と近衛騎士団、どっちを志望しているんですか?」

「王立騎士団だ」

「アウダス先輩の御父上は近衛騎士団長でしたよね? 確か就任は二年と少し前」

「よく知っているな」

「そうなると、近衛騎士団というのは比較的元の爵位を重要視しない方針にあるのでしょうか?」


 失礼な物言いになっているのは分かっているが、アウダス先輩の家は元々男爵家。

 それが近衛騎士団長任命の際に陞爵されて子爵となっている。


「元々は王立騎士団よりも厳しかったそうだ。実力主義に変わったのは当代の陛下の指示と、前近衛騎士団長の尽力によるものだ」

「そうなると、近衛騎士団内でも、派閥は存在する?」

「…………相変わらずだな。やはり首を突っ込もうとしている」

「聞いているだけですよ?」


 まぁ、俺だって諸々の事情を理解していないわけではないのだ。

 外部の知恵袋としてイレインに頼っているけれど、家柄とか勢力関係の勉強は案外ちゃんとやっている。最近アプデしてなかったけど、この間家に帰った時に、頭に一通り詰め込んできた。


「父上に反発する者はいる。近衛騎士は主に城や陛下の身辺を警備する。だから儀礼的な部分もしっかりしていなければならないのだが、それ以上に実力も必要だ」

「そうなると王立騎士団を見下している者もいるのでは?」


 アウダス先輩は深いため息を吐いて食事の手を止めた。

 いやいや、聞いてるだけで何をしようってわけじゃないからね。


「お前がそう思うのなら、多分そうなのではないか?」


 ああ、答え辛いことだったか。

 まぁ、割とセンシティブな話だもんなぁ。

 それを王立騎士団の方でも感じ取っているのだとすれば、俺との付き合い云々だけでなく、近衛騎士団長の次男であるアウダス先輩と訓練を続けていたことも、あの二人にとっては不利に働きそうだ。

 聞いた通り一口では説明できない諸々の事情、ってやつなんだろうな。


「先輩は何か動くつもりがありますか?」

「ない。あの先輩方ならば、自力で道を切り開いていくと信じている。ルーサーも少し落ち着いて、信じて待て。何でもかんでも手を出せばいいというものではない」


 めっちゃ普通に怒られてしまった。

 確かに俺が好き勝手動くのは、先輩たちにとっても気分の良いことじゃないのかもしれない。

 この先の人生で何度も、あの時生意気な後輩のルーサーに助けられた、ってなると気分も良くないだろうしなぁ。


「信じてますよ。それでも何もせずに後悔するのって嫌じゃないですか?」

「…………言葉にするのは難しいが」


 アウダス先輩はそう言って黙り込んだ。

 たっぷり三十秒ほど怖い顔をして動きを停止し、それからようやく口を開く。


「俺はお前に先回りされて助けられるのは嫌だ。だが、お前が心配をして気にしてくれているのは嬉しい。分かるか?」


 あ、なんだそれ。

 言葉を選ぶのが苦手な先輩なりに、すげえ真面目に考えて、伝えようとしてくれていることが分かった。

 なんかよく分からないけど、心にずんときて、妙な気分になる。


「…………なんか、少し分かります」

「そうか、ならしばらく様子を見ろ。先輩方だってきっとそうしてもらいたいと思っている。お前のことを認めているからこそ、お前と友人であるのにふさわしい自分でいたいと思っているはずだ」

「すみません、分かりました。……情報収集だけして、いざという時には、うちに引き抜く準備だけしておきます」


 ああ、何か分かった。

 そうかそうか、あの先輩たちもアウダス先輩も、俺のことを友人だと思ってくれてるんだな。

 そうだよな、だったら何でもかんでも手を出すのは違うよな。

 守らなきゃいけないってのが、傲慢だった。

 守りたいって気持ちって、多分たまにすっげー自分勝手になるんだな。


「でもまぁ、これからも長い付き合いになるでしょうし、あの先輩方ならこれくらいのことは軽く乗り越えてもらわないといけませんね」

「…………それは先輩の前では言うなよ」

「言いませんよ。シグラト先輩に本気で頭はたかれます」

「分かっているならいい」


 おー、なんかちょっとすっきりした。

 いやぁ、たまには真面目に一対一で話してみるもんだなぁ。

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