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たぶん悪役貴族の俺が、天寿をまっとうするためにできること  作者: 嶋野夕陽
面倒ごとがやってきそうかも、多分ね

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安定した期間

 宛名なし、差出人不明、開けて中身を見てみると、丁寧な内容で『あまり好き勝手してんじゃねーぞタコ』みたいな内容が書いてあった。なるほどなるほど、どうやら俺が派閥の仲間を囲って守り始めたことで困っている奴がいるということらしい。


 ……まぁ、無視だな。

 それにしても俺の立場を考えるとこんなことをしてくる相手は限られてくる。

 おそらく派閥の生徒にちょっかいかけてた連中からなのは間違いないんだけど、わざわざ俺が使ってる席に手紙を入れて来るとは思えない。

 誰かに代わりにやらせてるんじゃねぇかなぁって思うけど、そうなるとその派閥の子がいて、この教室で俺を見張ってるってことになるのかな。


 一応俺のとこに相談に来た子たちに、誰を警戒すべきか聞いておくべきか。

 何か被害があるわけじゃないけど、だからといって警戒しないってわけにもいかないからなぁ。

 嫌がらせなら無視しているのが一番いいのかもしれないけど、そのうち強硬手段に出てくる可能性もある。大人なら陰湿な手を考えるかもしれないけど、いくら貴族と言えども学園にいるのはまだまだ子供だから、直接的な手段をとってくる可能性もある。

 あまりしつこく来るようなら、こっちからも牽制くらいしておかないといけないんだよなぁ。


 結局舐められたまま放置するわけにはいかない。

 結構周りから避けられてるっぽい雰囲気もあったんだけど、こんな手紙を入れられるってことは、もしかして俺の悪い噂ってそんなに広がっていないのかもしれない。


 放課後にいつも通り走り込みをしてから、先輩たちとの手合わせをこなす。

 みんなちょっとずつ走れるようになってきて、なんとなく顔つきも引き締まってきた。単純に今までのんびり暮らしていたのが、走って痩せただけかもしれないけど。


 休息をとった後に、がむしゃらに木剣を振っている生徒なんかもいるから、やっぱりやる気はそれなりにあるのだと思う。先輩たちも面白がって教えてやったりしているし、案外良い関係ができているような気がする。


「そういえばなんですが……、皆さんに脅しをかけてきた派閥の方、教室にもいますよね? 一応明日、その顔と名前を教えていただけますか?」


 あれ、返事がない、おかしいな。

 聞こえなかったかと思って振り返ってみると、皆から一斉に返事があった。

 うーん……、なんかやっぱ、ちょっと怖がられてるよな。

 外から舐められてるのに、派閥の子から怖がられてるのってどうなんだ?

 いや、逆でも困るけど。


「お、ルーサー、やるのか?」

「なにをですか?」


 ヒューズがワクワクした調子で尋ねて来るが、主語がないので何にもわからない。


「敵対してるやつらしめるんだろ!」

「……いえ、警戒しておこうかと思っているだけです」


 そんなヤンキーマンガじゃないんだから、しつこくやってこない限り何かしたりしない。いきなり呼び出してボコボコにしたりもしないし。


「なんだよ、動き出すかと思ったのに違うのか」

「違います。僕はそんな乱暴な手段は好みません」


 ヒューズには今まで暴力的な部分は見せてこなかったつもりなんだけど、よくよく思い出してみると、ちゃんと何かあるたびに対抗心をもって思い知らせてきたような気はする。

 ちょっと大人げなくやり過ぎたのか。

 結果こうして仲良くできているからいいんだけどさ。



 その後学園生活は順調に進み、季節が流れて冬の終わりが近づいてきた。

 平日は放課後に訓練し、休日は家に帰るかダンジョンの探索。

 ダンジョン探索はぼちぼちやって、巨大スケルトンで勇者候補二人の腕試しするばかりで、深部へと進むことはなかった。


 俺に対する忠告の手紙もあれ以来届くことなく、すっかり脳の隅の方へ追いやられてしまったが、まぁ、何も起こらなければ起こらないで構わない、ってのが基本だ。

 イレインにも相談してみたが、微妙なところだからこっちから大々的に動いてもなぁということだったので放置。正直相手側の取れる手段が多いし、敵対派閥も多すぎて、どこの誰を警戒して、どこの誰にくぎを刺すのが効果的かが分からないから、受け身に回らざるを得ないらしい。


 『やるなら端からしばいていく形になるけどどうする』というイレインの提案もあったが、結局俺たちは話し合った末に保留という形になった。

 流石にそこまでやると、俺の方が悪く見られかねない。

 現状でもなんか黒幕っぽく見られてるらしいけど、それはもう王国内でのセラーズ家の立場的に割と仕方がない部分があるそうだ。

 自覚して動け、とのお叱りだけ頂いた。


 俺としては万が一悪役として認定された場合も、討伐に来そうな勇者候補たちと仲良くなっちゃったし、もう安泰かなと勝手に思ってる。

 年を重ねるにつれて、この世界が物語の中であるかもしれないという妙なプレッシャーは薄れてきているし、俺は俺なりにできることをやっていこうと前向きに生きているってわけ。


 大きなイベントとしては、短い冬期休みの終わり近くに、クルーブとミーシャが籍を入れる、なんてことがあった。

 おめでとう。

 なぜこんなにあっさりと思い返しているかと言うと、俺が動揺しまくって、当日のお祝いの言葉が感動で震えてうまく出てこなかったからだ。

 思い出すだけでめちゃくちゃ恥ずかしい。

 身内ばかりの結婚式で本当に良かった。

 皆温かく、俺の感極まった様子を見守ってくれたが、だからこそ思い出すのが恥ずかしい。


 まぁ、とにかく学園生活の平和な一年目が、あとひと月ほどで比較的穏やかに終わろうとしている、ってのがここ半年ほどのまとめ。

 寂しいのは、騎士の方へ内定が決まっている先輩たちの卒業だ。

 最近では忙しいのか、あまり相手をしてもらえていないし、剣だけでは勝率が五割以下の先輩も一人だけいる。


 俺は、あの天パことシグラト先輩を捕まえて、少しでも勝率を上げておかねばと、今日も張り切って訓練場へ向かっているところである。

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