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たぶん悪役貴族の俺が、天寿をまっとうするためにできること  作者: 嶋野夕陽
面倒ごとがやってきそうかも、多分ね

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報告と確認

 俺たちは一応殿下たちに今回の情報を共有。

 これは糸目先輩と手を組むことによって、もしかするとサフサール君の情報は手に入りやすくなるかもー、みたいな話も含めて伝えておきたかったからだ。それから、今後俺がアルフとイスに結構ガッツリかかわっていくつもりだという話も。


 分かっているのか分かっていないのか、ベルはにこにこ笑顔で頷いてくれたり、ヒューズも反対意見はないようだ。これをわざわざ特筆するということはつまり、殿下とローズは難色を示したということなのだけど。


「それはイレインも同意したのかしら?」

「はい、話し合った末にですが」

「そう……、なら構わないけど……。ルーサー、教会関係者と表立って関わると、今まで以上にあなたに対する視線は厳しくなるかもしれないわ。イレインの立場も。分かっているのよね?」

「……私がルーサーを懐柔して、光臨教、ひいてはウォーレン王国との仲を深めようとしているように見られる、ということですよね」

「そう。いいのね?」


 俺が言ったからむやみやたらと反対しているわけではなくて、きちんと俺やイレインのことを心配して言ってくれているのだろう。殿下のことでは妙に突っかかってくるローズだけれど、これで案外友達思いなのだ。


「まず、この学園に通う者の多くは、そこまでウォーレン王国と光臨教の関係を知らないかと。もちろん一部知っている者たちが友人に噂を広めるかもしれませんが、そこまで過激な話にはならないと思います。精々付き合いを考えるとか、将来的にルーサーと接触を持つのを控えよう、程度でしょうか。どちらにせよルーサーは今でもあまり友人がいません。これからできなくなるくらいは仕方のないことでしょう」

「あなたもよ、イレイン。話が大きくなるようなら、今までのように一緒にいることは難しくなるかもしれないわ」

「それも仕方ないでしょう。元々私はあまり皆さんとは交流していません。ここからのかじ取りは全てローズにお任せします」

「……仕方ないわね」


 俺の知らないところでローズ一派の方向性や調整みたいなものを話し合ってたのかもしれないな。入学してから女子三人の関係はかなり親密になっていたようだしなぁ。

 そうか、俺の行動は結局イレインもセットで影響が出て来るってことか。


「ルーサー」

「はい、なんでしょう」

「イレインのこと、ちゃんと守ってあげなさいよ」

「はいそれはもちろん」


 神妙な顔をして答えると、続けて殿下も手をあげる。


「私からも一つ」

「はい、なんでしょうか?」

「ルーサーのことだから、もちろん考えあってのことだと思うのだが……」


 前置きが優しい。

 殿下は俺のこと高く評価しすぎなんだよなぁ。


「セラーズ家を慕う者たちが接触してきたと言っていただろう。彼らについてはどうするのだろうか?」


 やっば、その後ほとんど交流してねぇから忘れてたわ。

 あー、どうすっかな、うーん。

 あいつらはあいつらで仲良くやってるみたいだし、俺なんか担がなくてもそれなりにやってけるんじゃねぇのか?


「ルーサー派閥にならないと他の派閥に移るしかないもんなぁ。俺はいいけどあいつらはきついかもしれないよな。今から取り入れるところも少ないだろうし」


 あ、そうなんだ。

 それは結構まずいのか?

 一応気を付けているつもりだけど、どうしたって自分が派閥とかをあまり意識してないから、見えてくるものが違う。


「こちらから声をかけて話をするつもりでいました。もし僕と共に行動できないという者がいましたら、殿下の方で気にかけてやっては貰えないでしょうか?」

「もちろん構わないが……、大丈夫なのか?」

「はい。信じてくれた者たちを裏切るわけにはいきませんから」


 きりっとした顔で返事をすれば、殿下は困ったように笑った。


「そうか、なら私からはこれ以上何も言うまい。私の知らぬところでしっかり信頼関係を築いていたんだな」


 俺は殿下が何を言っているのか今ひとつわからないまま、黙ってこくりと頷いた。

 殿下はね、俺のこと信頼しすぎ。

 もうちょっと言葉を尽くして説明してくれてもいいんだよ。

 この感じだとなんか俺が重大な決意をしたみたいになってるじゃん。


 その日はこんな感じで近況報告をして終わり、意味がよく分かっていなかった俺は、数日後にイレインを捕まえて状況を確認する。


「殿下のあれってどういう意味」

「あれってなんだよ」

「ほら、派閥で信頼関係が云々」

「お前、もうちょっとちゃんと伝える努力しろよ」


 怒られた。

 イレインなら分かるからいいだろって思ってさぼっているのがばれたようだ。


「っていうか、やっぱり理解してなかったのか。多分、お前のところに来た奴らの真意みたいなのをもう測り終えていて、お前がしっかり派閥の長として世話をしていく決意をした、って思ったんじゃないのか? ローズに聞いたところによると、普通は家の力とかも使って、丸一年くらいはかけて裏を探るらしい。お前はあいつらのことあまりあてにしてないから、私も何も言わなかったけど、こうなると敵か味方かはっきりわからないまま、身内に抱き込むしかなくなるってことだろ」

「あ、ふーん……」


 とりあえず敵じゃないけど信用しない相手、くらいにしか考えてなかったんだよな。こうなってくると確かに面倒くさいかもしれない。

 これで世話とかをしないと、俺は薄情な奴、みたいな話になるってことだもんな。


「どうすんだよ」

「え? いや、どうしようかな……」

「やっぱなんも考えてないんだな。お前本当にさぁ……」


 イレインにめちゃでかため息を吐かれてしまった。

 まあでも、ほら、なんとかなるでしょ、多分……。

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