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たぶん悪役貴族の俺が、天寿をまっとうするためにできること  作者: 嶋野夕陽
面倒ごとがやってきそうかも、多分ね

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克服

 とりあえずトラウマの克服が目的ということで、道中のスケルトンたちを排除しながら少しずつ進んでいく。武器を持ってるやつもいるし、骨を振り回しているだけの奴もいるしと、ばらばらの行動をとってくるスケルトンたちだが、基本的にはカルシウム不足の上動きは緩慢だ。

 物量作戦と足元にさえ気をつければ何とかなる相手である。

 多分これが罠なのだ。

 倒しながらゴールまで駆け抜けてしまえば戦う必要がないから、ダンジョンの攻略者は、情報がないと当然効率の良い攻略を目標とする。

 すなわち、巨大スケルトンとの対峙だ。


 なかなか悪辣だなぁと思いつつ、予定通り迫りくる骨たちを砕きながらじりじりと奥へ進んでいく。魔法で一気に片付けてもいいのだけれど、リハビリとか連携も兼ねてるから、これくらいでちょうどいいのだと思う。

 

 それなりに時間をかけて攻略した時には、勇者候補二人は、額に汗をにじませるくらいには疲れているようだった。病み上がりなのもあってか、レーガン先生も一呼吸おいてから、先日自分がやられた場所を見つめている。


「疲れたなら引き返しますか?」

「……ルーサーは余裕そうだな」

「魔法って、魔素酔いとか大変だって話だけど……」


 二人ともなんだか悔しそうだ。

 まぁ、両方俺に剣術だけで負けてるからなぁ。


 俺もクルーブもばかすか魔法を撃っているように見えたのだろうけれど、あまり計算せずに撃っているのは俺だけだ。クルーブは魔力量も人並外れているが、コントロールも一流で、無駄な魔法を撃たない。

 少なくともクルーブは、礫弾を連続して放ち続けても、一時間以上は継戦可能だ。

 様子を見ながら第一階梯魔法を撃っているうちは、それこそ集中力の続く限りは戦い続けられるのだろう。


 とはいえ俺はずるをしている。

 子供のころから魔力は鍛えてきたし、強くなろうと意識したのだって二人よりずっと早い。


「アルフはこの間の件がありますし、イスははじめて来たでしょう? 慣れればそう変わりませんよ」


 一応それっぽいことを言ってごまかしていると、横合いからクルーブが援護射撃をしてくれる。


「で、どうするの? 行く? 帰る?」

「行く」

「うん、見てみたいし」


 二人が答えると、レーガン先生も頷く。


「もちろん俺はいく」

「じゃ、決まり。僕とルーサー君は危なくならない限り手を出さないから、出来るだけ三人で片づけてね」


 なかなか厳しいクルーブの申し出に、三人は神妙な顔をして頷き先行する。

 ま、スケルトンほぼ殲滅してるし、そんな覚悟必要ないんだけどね。


 三人は以前よりもスケールの小さな、それでもでかいスケルトンと対峙し、あっさりと討伐をしてみせた。スケルトンを全て討伐してしまうと、巨大スケルトンもまたカルシウム不足になるのだ。


 動作ももっさりで、パワーは人並み以上にあるけれど、受け流すことはそれほど難しくない。

 気合いを入れた一撃をぶち込めれば骨を砕くことだって容易だ。

 しばらくは攻撃を受け流しながら様子を見ていたレーガン先生だったが、やがて巨大スケルトンのパワーと速度を完全に把握したのか、叩きつけられた腕を駆けあがり、頭蓋骨を真っ二つに切り裂いて見せた。

 思わずスタンディングオベーションするところだ。

 馬鹿にされてると勘違いされても困るから我慢したけど。


 レーガン先生って堅実な動きが持ち味だと思っていたのだが、意外なほどに破壊力のある一撃が飛び出してびっくりだ。しかも切り落としの動作から回避までがあまりにスムーズであったことから、あれでまだ全力でない可能性が高い。

 いい拾い物したなぁ。

 いや、俺は悪役じゃないよ。

 レーガン先生を雇えて俺もハッピー、レーガン先生も怪我が治ってハッピー。

 誰も不幸になってないからね。


 巨大スケルトンへのトラウマがあった可能性のある二人はすっきりした顔をしているし、イスもなんだか少し自信がついたようだ。

 とりあえず今回のダンジョン探索は成功。

 こっから先は学園には資料がないので、いったん引き上げだ。


 もうちょっとダンジョンに慣れてきてからか、実家に帰って先生の遺産の中にそれらしい資料がないか探してからだなぁ。

 長期休みの間に探そうかと話していたのだけれど、レーガン先生の件があったからこの夏季休暇中は帰れそうにない。


 帰るまでがダンジョン探索だということで、一応警戒をしながらダンジョンから脱出し、夕暮れ前には外へ出ることができた。

 一つ気になったこととしては、今回はアルフの不思議勇者パワーが見れなかったことだ。あわよくばと思ったけど、やっぱ火事場の馬鹿力だったみたいだな。

 

 そんなことを考えていると、帰り道でアルフが普通にぼろりと漏らす。


「この間みてぇな力、出なかったな」

「ああ、なんかすごい光って爆発したってやつ?」


 しかもイス君に話しているらしい。

 君たち仲良しにはなったけど、一応勇者候補でライバルだよね?

 力を秘密にしたいとかないのか?

 俺の心が汚れてるのか?


「そう、なんだろうなあれ。自由に使えたら強いんだけどな」

「……よくわからないですよね、教会の人にでもそのうちさりげなく聞いてみますよ」


 休みが明けたら糸目先輩にでも聞いてみよう。

 いつも余計なことばかりするんだから、たまには役に立ってもらわないとな。


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