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たぶん悪役貴族の俺が、天寿をまっとうするためにできること  作者: 嶋野夕陽
面倒ごとがやってきそうかも、多分ね

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悪事も善行も

 今月末には王誕祭があるから、それまでは俺とクルーブとレーガン先生でダンジョンに潜って連携の確認をしておきたい。

 人間相手に戦うとなるとなかなか訓練は難しいけれど、ダンジョンの魔物相手ならば遠慮なく戦える。加減とかをしなくていいぶん多少気楽だ。


 いやでも、最初にダンジョンに潜った時のことを考えると随分成長したよなぁ。

 人型の魔物倒すのにも最初は結構勇気が必要だったし。

 それを考えると、学園の生徒がダンジョンに潜ってもうまく動けないのって当たり前だよなぁ。


 元の世界と比べれば、人の死は身近にあるけれど、いざ攻撃したり殺すってなると、それなりに気合いが必要だ。俺はたまたま慣れることができたけど、割り切れなくて慣れない奴だっているんだろうなぁ。


 なんてことを考えながら三人で馬車移動。

 今日から日中はダンジョンに籠るって話をしたら、エヴァには随分とごねられた。

 でもお兄ちゃんには、強くなってエヴァやルーク、それに母上を守るって使命があるのだ。そこはきりっと説明をして乗り越えてきたってわけ。


「ルーサー君、自分からダンジョンの話切り出したのにさぁ、エヴァちゃんに捕まっただけで、『やっぱり今日はやめましょう』はどうかと思うよ?」

「すみません」

「準備万端で待ってたレーガン先生も流石に呆れたでしょ。ルーサー君本当に家族のことになるとあんなだから、気になった時はちゃんと言った方がいいよ?」

「いや……」

「本当にすみません」


 レーガン先生苦笑。

 俺は平謝り。

 ほら、昨日もあまり構ってあげられなかったし、一日くらいエヴァとルークのために割いてもいいかなって思ったんだよね……。

 折角うちに来てくれたレーガン先生にあまりがっかりされたくないから早めに切り上げたけど、クルーブ一人だったらもうちょっと粘ってたかもしれない。


 学園に到着して、そのままダンジョンへ向かって歩いていく。

 夏季休暇の学園内はほとんど人がおらず、時折警備の兵士がうろうろしているくらいで、子供の声などは聞こえてこなかった。

 ま、寮の近くを通ってないってのもあるかもしれないけどね。

 学園の端の方を進んで、古びた訓練場を通り過ぎ、やがてダンジョン準備室が見えてくると、武器を打ち合わせる音が聞こえてきた。


 不審に思った俺たちは、顔を見合わせてから早足で音の下へと向かう。

 こっそりと端から覗き見ると、そこには勇者候補の二人が訓練をしていた。


「ああ、ちょうど良かった」

「うん、ま、そうだね」

「おい、俺は出て行っていいのか……?」


 俺たちが堂々と出て行くと、レーガン先生は困った顔でその場にとどまっている。


「もちろん、付いて来てください。どこかで会わせるつもりでいたんです」

「そうか……?」


 先生が足取り重く後ろからついてくる。

 そりゃあアルフに関しては、半分くらいは自分の都合で巻き込んだようなものだ。

 元教師として、一人の大人として、申し訳なさはあるのだろう。

 逆に言えば半分はアルフが無茶をしたのに付き合っただけなんだけどな。


 打ち合いはやはりアルフの方が有利なようで、最終的にはイスの首元に木剣が添えられて勝負ありとなった。

 二人とも汗だくで、以前と比べれば差は縮まっているようにも見える。

 一定ラインの強さを手に入れると、そっから先の実力向上って鈍化するからなぁ。

 アルフの方は焦ってそう。

 勝ったのに悔しそうな顔をしている。


「お疲れ様です。毎日ここで訓練を?」


 堂々と出て行ったけど、足音は忍ばせていた。

 急に声をかけられて、二人とも驚いて跳ねあがる。


「き、来たなら言えよ!」

「びっくりしたー……」


 振り向いた二人の反応は、二人らしいもので安心した。

 精々十数日空いただけだが、仲良くやっているようで何よりだ。

 俺がけしかけた都合上、ここの仲が悪くなると責任感じちゃうからなぁ。


「何でこんなところで訓練を?」

「いや、あまり目立つところで訓練をしていて見に来られるのもちょっと嫌だなって……。ね、アルフ、って、どうしたの?」

「いや……」


 アルフは俺の後ろにいるレーガン先生を見て目を丸くしてる。


「治ったんだな、先生」

「……ああ、アルフレッド、お前のお陰で生きながらえて、足も治してもらった」

「別に、俺のお陰じゃねぇよ。俺の方こそ、先生が助けてくれなかったら死んでた」

「ま、お互い様ってことでいいんじゃないの? 悪いことも良いことも、半分相手のせいで相手のお陰。恨みっこなしで丁度いいでしょー?」


 さっさと準備室へ入って必要な物をそろえてきたクルーブは、ガチャガチャとダンジョンの扉に掛けられた鍵を開ける。


「先生は僕専属の騎士として雇い入れることになりました。……安心しましたか?」

「……そうか、ありがとな」


 素直な礼の言葉に、今度はレーガン先生の方が目を丸くする。

 子供の成長って早いんだ。先生がのんびり怪我を治してる間に、俺やイスと仲良くなって、素直にお礼まで言えるようになったんだぜ。

 どちらにもサプライズになったようで俺としては大満足の結果だ。


 うん、やっぱアルフのこと助けて、レーガン先生治して良かったよ、マジで。


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― 新着の感想 ―
多くの大人にとって予想外の成長になるんだろうなぁ。
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