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たぶん悪役貴族の俺が、天寿をまっとうするためにできること  作者: 嶋野夕陽
面倒ごとがやってきそうかも、多分ね

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相棒のお知恵

「知らないから一つ確認したいんだが……、盗聴ができる魔法とか、魔法の道具とかないよな?」


 イレインが口元を手のひらで覆いながら、上目遣いで尋ねる。この上目遣いは可愛らしいアピールとかではなく、単純な不安や心配からくるものだ。


「ある」

「まずいな」

「やばい」


 何がまずくてやばいかって、つまり聖女候補のユナの周囲で発生した会話は全て盗聴されている可能性があると言うことだ。

 制服はみんなと変わらないものを着ているが、身につけている装飾品などが音を拾い、受信側に大規模な魔法陣を用意して、盗聴めいたことをするのは不可能ではない。

 もちろん相当大規模な魔法になるし、常に魔法陣に魔力を供給し続けなければならない都合上、人的負担もえげつないはずだ。

 だが不可能ではない。


「暗殺警戒した方がいいか?」

「……全く無警戒でいていいとは言わないが、そこまでだろ。一応お前は大貴族の嫡男だぞ。そう簡単に手を出せるものか。ただ、ユナとか言うやつは知らない。代えのきく駒だとしたらまずいかもな。レーガン先生も危ういだろう。どうせ、教会との繋がりバラしちゃったんだろうし」


 なるほど。

 俺はリスクが高すぎるから大丈夫。アルフレッド君は他に駒がないから大丈夫。

 ただし教会の身内であるユナと、後ろ盾が一切なくなるレーガン先生は危ない、って感じか。

 いやでもなぁ、ユナが引き上げられて別の聖女候補が出てくるってなったら、アルフレッド君は暴れそうな気配があるんだよなぁ。

 どうやら守らなければいけない相手って認識もしてるみたいだし。多分アルフレッド君は、友人を殺してしまった件以来、近くにいる人を失くすことを極端に恐れている。

 まぁ、なんとなく気持ちはわかるんだよな。

 俺も身内は絶対守りたいもん。


「とりあえずレーガン先生は学園くびになるだろうな。お前が足治してセラーズ家で雇ってやれよ。どうせなんとかできねーか考えてるんだろ」

「……よくわかったな」

「お前お人よしだもん。勇者候補と聖女候補の方は、これから仲良くしてやればいいんじゃないか? 盗聴されていることに気づいてないふりしたままさりげなく仲良くしてれば、向こうだってそれほど危険視しないだろ。ついでにお前のことも監視できるんだからな」


 こいつ俺がやりたいことよくわかってんなぁ。

 さすがこの世界じゃ幼馴染だけある。

 そしてそれに応じて俺よりマシな答えを出してくれるんだから大したもんだ。


「じゃ、そうするか」

「自分でもちょっとは考えろよ」

「考えたけどお前より上手い考えが思いつかなかっただけ」

「そのうち恩返ししろよ」

「任せとけ。いい旦那の世話を斡旋してやろう」

「そんなことをしたら、お前が一生結婚できないように有る事無い事噂を流して道連れにしてやるからな。絶対にやるからな」


 得意げに胸を張るイレインが珍しくてついからかったら、ひどいことを言いかえしてきた。

 なんて事言うんだこいつ。

 しかし俺の知り合いはイレインの知り合いであることも多いから、やると言ったらマジで簡単にできそうで怖い。


「冗談じゃん」

「お前冗談のセンスないからやめろ。そういえば初めて会った時も寿司の話しただろ。まだ許してないからな」

「しつこ……、俺だって食べたいし……」


 よく和食が恋しくなるって話は創作で見ていたけど、言われると本当にそうなんだよなぁ。思い出してしまった時の一過性のものなんだけど、イレインが余計なこと言ったせいで、しばらくは米のことが忘れられない気がする。


「セラーズ家って海にもよく出るから、跡を継いだらそれっぽいのないか探してみるわ」

「……よし、絶対やれよ。見つけたら寿司を食わせろ、約束だぞ」

「職人いないけど」

「ちらし寿司でいい」

「おっけ、わかった。いつになるかわかんねーけどな」


 くだらないことを喋りながら時間を潰し、昼時になったのでもう一度ダンジョンの準備室付近へ向かう。


「まずはレーガン先生の処遇を確認しないといけないよなぁ」

「そうだな。じゃないと雇い入れられるかわからないし。国外追放とかになったら無理だからな」

「そこまで罪重いか?」

「基本的には問題ないと思うが、国内の政治に他勢力の意思を紛れ込ませた、って考えるとめちゃくちゃ重くなるかもな。それって内乱罪だろ?」

「そんな大っぴらに処罰しないと思うんだよなぁ……、多分だけど」

「私も学園内だけの処分になるとは思う」


 まだ会議が続いていそうだったらまた明日にしようと思っていたけれど、近づいてみれば部屋の中からは話し合うような声は聞こえてこなかった。

 もしかしたら留守にしてるのかなと思いながら扉をノックすると「ちょっと待ってねぇ」という間延びした声が聞こえて、すぐにクルーブが顔を出す。


「また来たの?」


 俺の顔を見るとクルーブはからかうように笑った。


「どうせくるってわかっていたんでしょう?」

「まぁね」


 イレインがしれっと言い返すと、ニヤニヤしたままクルーブが俺たちを中に招き入れる。人から行動を理解されると言うのは、ちょっとむず痒くて、嬉しいような嫌なような微妙な感じだ。


 部屋の中にいたのは、クルーブとレーガン先生だけ。

 先生は怪我の具合がまだよくないのか、ベッドで安静にしているようだった。



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― 新着の感想 ―
こいつらほんと。焦れってえなあ・・・・・・。
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