表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たぶん悪役貴族の俺が、天寿をまっとうするためにできること  作者: 嶋野夕陽
面倒ごとがやってきそうかも、多分ね

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/234

所属問題

 光臨教は俺の知っている限り、この辺りの地域では結構広く知られ、信じられている宗教だ。

 一神教であり、神が人の営みを見守り導いているというのが基本の教えだ。

 生きている間に行った善い行いを見ていて、それに応じて天国とか現世とか地獄とか、なんかそんなに振り分けられるみたいな話。

 ありがたいことに時折現世には天国的なところから人を導くために遣わされたやつがいるらしく、その中でも特別な力を授かったのが勇者とか、聖女とからしい。

 教会は市井において安い授業料で教育を施したりするし、孤児院を運営したりもしてる。基本的には悪者ではないのだけれど、なんせ俺は悪役っぽいポジションにいるものだから、警戒は怠っていない。

 

 まぁしかし、組織なんてもんはでかくなればなるほど濁るところも出てくるもので、金もうけに走る様な悪い奴もいるらしいけどな。

 そういうやつらにとって、でかい国の王に権力が集中すると面倒なんだ。

 東方の国からはそれで結構追い出されたりしてるみたいだし。

 そんな理由で、教会の組織の一部がウォーレン王の独立の後押しをしていたらしい、ってのが表には流せないけれどかなり真実味のある情報として耳に届いている。


 セラーズ家嫡男としては関わらないのが一番なんだけれど、なかなかそうもいかない気がしてきてるんだよなぁ。


「光臨教が勇者と聖女を選定しているのは知っているだろうか」


 殿下の語り出しに俺は頷いた。

 知ってますとも、糸目エル先輩から妙な勧誘を受けてるし。

 俺たちの反応を確認してから殿下は話を続ける。


「正直な話、私はこの中の一人と言わず幾人かがその候補に選ばれてもおかしくないと思っている」


 ……俺の行動もしかして監視されてる?

 順々に俺たちのことを見た殿下は、最後に俺のことをじっと見つめてゆっくりと瞬きをした。明らかに俺の時だけ時間が長かったよね?


「候補は4名ずつ。わかっているのは勇者候補のアルフと聖女候補のユナ。普通は派手に言いふらさないらしいのだけれど、この二人の候補だけは自己紹介して回っているからすぐに分かった」

「あいつらは勇者と聖女、って言ってたけどな」

「実力は確からしい」

「どうだか」


 二人の態度が気に食わないヒューズは、殿下の言葉を否定する。

 まぁ、実力に関しては年の割に大したものだって糸目先輩も言っていた。

 少なくとももう一人の勇者候補であるイス君よりは総合力が高いのは本当な気がする。

 だってイス君やる気も志もいいけど、正直現状弱いからなぁ。


「もう一人の勇者候補はイスナルド=ホープズというマッツォ領出身の同学年です。お姉さんも学園に通っています」

「さすがルーサーだな……、いつの間に調べたのだ」

「偶然ですね」


 本当に偶然です。

 

「そんな優秀なルーサーは、まさか勇者候補になっていたりしないよな?」

「しませんが、なぜそんなことを?」

「うん。仮に勇者として内定してしまうと、所属が国から教会に移ってしまうのだ。立場としては教皇と対等の扱いになり、国としては非常に困る」

「…………なるほど、もし勧誘があっても必ず断ります」


 あの糸目、わざとこの話言わなかったな。

 俺が勇者候補の話を受けていて、万が一勇者になってしまっていたら、セラーズ家が継げなくなるところだっただろうが。

 ちょっと今度見つけ出してしばいておくか。


「そうか、いや、悪いな。勇者というのは憧れでもあるから、強制するようで心苦しいのだが」

「いえ、別に憧れていませんので心配なさらずに」

「そうなのか……? 私としては共に歩むことが出来てうれしいのだが……。ルーサーは本が好きだろう? 勇者の物語もたくさん読んできたのではないか?」


 そりゃまあ読んだとも。

 でもなぁ、俺は昔から自分が悪役なんじゃないかって思ってたから、勇者の話を読むときってちょっとうがった目で見ちゃってたんだよな。俺の未来の敵はこんな感じか、みたいなさ。

 それにしても俺は信用がないようだ。

 殿下をポイッと捨てて勇者になると思われてるのか?


「僕はセラーズ家の嫡男であり、僭越ながら殿下の友人であると思っています。悩むことがあれば相談しますし、そう軽々に別の道を歩もうとは思いません」

「ルーサー……」


 あーあーあー、ちょっと真面目に話したらお隣のお嬢様のスイッチが入ってます。

 そんな感動したように俺の名前を呼ぶのはやめてください殿下、お隣のお嬢様の目がかっぴらかれたままこちらを貫いてます。

 怖いからやめろまじで。

 もう直接言っちゃうもんね。


「殿下、ローズが怖いのでやめさせてください」

「……何がだ?」


 すんって表情が戻る。

 器用だなこいつ、実は俺のこと牽制してるだけか?


「私実は、マリヴェルやイレインはもちろん、他のどのご令嬢方よりもルーサーのことを警戒してるんです」

「何を言ってるんだ……?」

「何を言ってるんでしょうね……」


 余計な心配をするのやめろ。


「まぁ、その分頼りにしても良いとも思っていますが。とにかくもし私が聖女候補に誘われたとしてもしっかりお断りしておきます」

「うむ、ローズが隣にいないなど想像できないからな」

「……殿下」


 あ、うん、マジで心配する必要ないだろ。

 ローズはどっちかっていうと悪役令嬢だし、そういう問題じゃなくても二人ともめちゃくちゃ仲良しじゃん。

 早く婚約発表しろよ。


 まぁ、今やるとローズの生家が力を持ちすぎちゃうから絶対できないんだろうけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ローズ鬱陶しいなあ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ