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『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと -   作者: 設楽理沙


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11/25

『愛が揺れるお嬢さん妻』11◇馴れ初め

11☑

 


 夫の英介の家とは父親繋がりで苺佳が産まれた頃には、すでに

家族ぐるみの付き合いがあったそうな。



 英介は三兄弟の二番目で、三男の俊介が苺佳と同級だった。


 一方苺佳の家では、其のそののち、きょうだいが産まれることは

なく、ひとり娘として苺佳は大事に育てられた。



 年に数えるほどではあるが、両家揃って避暑地でBBQなどして過ごすのが

恒例の行事となっており、親同様、子供たちも自然の流れで幼少の頃より

交流があった。



 男児が三人もいるとヤンチャで大変なのでは? と思うが、

ヤンチャなのは三男の俊介だけで、次男(英介)、長男(恵介)と、上の

ふたりは小学生の頃より両家で過ごす時だけの限定なのか? 普段は

どうなのかまでは分からなかったが、時として子供らしい振舞はあるものの、

総じて我儘な言動もなく、大人たちの言うことをよく聞き落ち着きのある

子らだった。



 苺佳と同い年の俊介は、闊達な子供で少しヤンチャなところも

見受けられたが、苺佳とは気が合ったようで、兄たちと走り回るのに

飽きると苺佳のところへ行き、一緒に別荘の庭で楽し気に話をしたり

駆けまわったりして仲良く遊んだものだった。

-


 苺佳ちゃん、俊介くん、と呼び合う仲睦まじいふたりの様子を見るにつけ、自然に将来ふたりが互いに納得したらば、俊介を古家家の跡取りとして

養子に迎えたいというような約束が両家で話し合われ、取り交わされていた。


 そのような両家での跡取問題のこともあり、苺佳と俊介が大学を

卒業するまで両家ではその後もずっと家族ぐるみで集うという行事が

続けられた。



 そして両家では各々、折に触れ本人たちに将来のことを話していたし、

子供たちから拒否るような発言もなかったことから、苺佳と俊介の結婚は

暗黙のうちの確定事項となっていた。

-


 俊介を事業の後継者として迎えるにあたり、数年間は影山家の会社、

もしくは他所で働いてもらい、その後、古家家の会社で修行をと

苺佳の父親は考えていた。



 そして二人は大学卒業を待って付き合い始めればいいと本人たちも

周りもそのように考えていた。


          

       ―――――――――――――――――



そして月日は流れ……いよいよ苺佳と俊介のふたりが大学を卒業し

就職する時節を迎えるところとなる。


 苺佳はというと、結婚するのが決まっていたため、苺佳の父親の第二秘書

という名目で親の会社に入社した。



 一方俊介は親の会社ではなく他所の会社に就職した。




 俊介の会社では入社早々4月からの研修が忙しく、まだ苺佳との

交際らしい交際もしていないような状況の中、8月に入って影山夫妻が

俊介を伴って古家家を訪ねて来た。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 急いでいたらしく、アポイントは前日だった。

 古家の客間に通されると、すぐに三人がどっと頭を下げた。

-

 

「古家さん、すまない。このバカが許嫁がいるというのに、社内の女性を

妊娠させてしまいおってからに……」


 おじさんの話を聞いて、私は心の底から驚いた。



          

『えーっ、俊ちゃん、そんなことになってたんだぁー。やるじゃん!』



 正式に交わされてはいないけれど、小さな時から俊ちゃんが

自分の将来の夫になると言われて育ってきた。



 だけど、実質まだ付き合ってもなかった為、恋人で婚約者という

実感もなく……なので、浮気されて裏切られたのだという気持ちにはならず、

私はただただ両親と一緒に驚くばかりだった。


-


「そうですか。子供までできたのなら、どうしようもないですな。

俊介くん、周りで苺佳とのことを決めたものだから本当はうちとの

取り決めには不満があってこうなったのだろうか?」



「おじさん、それは違います。僕は本当に苺佳ちゃんと結婚して

古家の家に入らせてもらうつもりでいました。軽率な行為でこんなことに

なってしまいましたが、本当に申し訳ありません。

気持ちを裏切ることになってしまい。苺佳ちゃん、ほんとにごめん」



「私は大丈夫だよ。それに私たちまだ交際もしてないし。

こう見えても学生の時は何人かに告白されたりもしてたんだよ。

それなりにモテるので心配しなくていいわよ、私のことはね」



 こんな風に落ち込んでる俊介くんを励ました私。


 ただ、こんなことになるのがもう少し早く分かっていれば、と

思うことがあった。それは仕事のこと。


 結婚の予定がなくなったのなら、第一秘書がちゃんといて

お飾りのような父親の第二秘書なんて、この先もずっとやるには

気が重かった。


 父親の気持ちが落ち着いた頃に辞めることを話してみよう、そして

しばらくは家にいて、この先どうするか、じっくり考えてみようと

思っていた。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 しかし……まさに急転直下、数日後のこと。



 影山夫妻が今度は次男の英介さんを伴って我が家を訪れたのだ。


 その日、繰り広げられた話はこうだ……。


 -


 俊介くんと私との結婚が御破算ごはさんになったことを知った

英介さんが俊介くんの代わりにと、手を挙げたということだった。


 両親と一緒にこの話を聞いていて、ほんとかな? って思って

しまったんだけど。


 まぁ妥当なところというか、私の両親はその時『少し考えさせて

もらいます』と返事を返した。


 そう返事をしたものの影山さんたちが帰った後、あれから数日、ちょっと

落ち込んじゃってた風の父親の表情に明るさが戻ったような気がした。


 


 英介さんは私より3才年上で、俊介くんとはまた違ったタイプの人だ。


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