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11話「記念日」

 私たちは夫婦となった。

 あれからどのくらい時が過ぎたか思い出せないけれど。

 確かなのは、私はロヴェンと結ばれたということだ。


「レルフィア様! 今日、結婚記念日ですよ!」


 自室へ駆けてくるロヴェン。


 彼はあの頃から変わりなく純粋だ。

 子どものようなところもあって。

 でもそういうところも含めて彼のことが好きだから不快には思わない。


「これ! 贈り物ですっ」


 彼が勢いよく差し出してきたのは純白の薔薇の絵が描かれた箱。

 両手の内側に収まるくらいのサイズの紙製の箱だ。


「え」


 意外な展開に驚く。


「結婚記念日のプレゼント! です!」

「あ、ああ、そうだったの……でも、いいの? 受け取ってしまって」


 そういえば今日で結婚してからちょうど一年になるのだった。


「もちろんです!」

「そう……ありがとう、ロヴェン。とても嬉しいわ」

「開けて開けて」

「ええ、そうさせてもらうわね」


 箱を開けると、そこには――ロヴェンに似ている小さなぬいぐるみ。


「え、こ、これは一体?」

「僕です!」

「えっと、その、なぜに……?」

「ぼ! く! で! す!」

「いや、だから、それは分かったけれど……どうして貴方のぬいぐるみなの?」


 すると彼はきょとんとした顔をした。


「何か問題が?」


 えええー……。


 どうやら彼はこの不自然さに気づいていないようだ。

 というより自信作なのだろう。

 きちんと考えて選んだ贈り物がこれだったのだろう。


「さすがね……」


 思わずこぼしてしまった。


「褒めていただけた!? ありがとうございます!!」


 彼は言葉をそのままの意味で受け取っていた。


 いやいや、さすがに純真過ぎるだろう――そう思いながらも、良い方向に解釈してもらえたことには安堵した。


「一年ありがとうございました! レルフィア様! 本当に、本当に、僕の国もお世話になりました!」


 結婚したら冷める、なんて言うけれど。

 それはあくまで一般論だったのか。

 驚いたことに彼はまだ冷めてはいない様子だ。


「いえ、こちらこそ」


 どうやら彼は釣った魚にも餌をやるタイプらしい。


「これからもたくさん可愛がってください!」

「可愛がって、て……」

「嫌ですか?」

「いえ、そんなことはないわよ」

「ではよろしくお願いします! あ、あと! かっぷぅらーめんとかいう新商品も贈り物用に買っていますので! そちらは後日届きます」



◆終わり◆

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