昼下がりの一騎打ち
掲載日:2021/12/24
「くそっ」
互いに拳を構え直し、視線を外さぬまま息を整えつつ距離を取る。既に感覚は麻痺し、どれだけの時が流れたのか分からない。実力は驚くほどに拮抗している。
肉体よりも緊張と集中を最大限維持することによる精神の疲弊が凄まじかった。額からとめどなく伝い落ちる汗……奴も限界が近いはずだ。
だが同時に、このかつてないほどの接戦を心の底から楽しんでいるのも確かだった。奴の不敵な笑みに釣られたように、俺も口角を吊り上げる。おそらく次が最後の一撃になることを直感した。喉が千切れんばかりの雄叫びをあげながら勢いよく右足を一歩踏み込む。俺は持てる全てをこめて拳を真っ直ぐに繰り出した。
次の瞬間、時が止まったかのような静寂がその場に訪れた。
誰の目にも勝敗は明らかだ。沸き起こる歓声の中、力尽きた奴は膝をついていたが、その顔には満足気な表情を浮かべていた。下手な慰めは侮辱と変わらない。実際どちらが勝ってもおかしくなかったのだから。敬意を胸に黙って好敵手に背を向ける。
俺は死闘の末に手に入れた賞品、欠席している佐藤さんの分のクリスマスムースプリンを天高く掲げ、意気揚々と席に着いたのだった。




