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天ぷらそば(430円)

僕は食べたいものってのが無い時は、この天ぷらそばを選びがちです。

「はい、天ぷらそば」


 セルフサービスの水を一杯飲んで、食事中用に再びコップに注水してると、どんっと丼が出される。

 注文してすぐに出てくるのが立ち食いそばに求めるスピードだ。


 立体的に仕上げられたかき揚げ天ぷらはなかなか嬉しい。


 少しずれたところに場所を確保し、早速七味唐辛子をババッと振る。


「いただきます」


 食事の前の挨拶は必要だ。

 声を出しにくいのであれば心の中でだけでも良い。

 作ってくれた人への感謝はもちろん、そもそも食材を作る生産者や、食材そのものへの感謝なのだから。


 まずはかき揚げ天ぷらを箸で少し崩し、早速食べる。

 そばのトッピングは、最初と最後に楽しむ。

 しょっぱい汁を吸って味も変わるし、天ぷらや揚げ物は歯応えも変わる。


 うん、揚げたてではない。

 何ならちょっと油が重く感じる。


 そこに口直しとばかりに少し汁を飲む。

 しょっぱい!

 だが、それが良い!

 仕事に疲れた身体には、これくらいのしょっぱさが必要なのだ。

 健康?

 そんなものはあとで野菜ジュースでも飲んでおけばいい。

 血圧は少し気にするべきかもしれないが……


 そばを数本、高く引き上げる。

 格好をつけてるのではない。

 直ぐ食べるには熱いのだ。

 コツは、麺の最後まで上げ切らない事。

 麺先まで引き上げてしまったらぶらんぶらんとしてしまい、汁が跳ねる。

 白い服じゃなくったって、汁は飛ばさずに済むに越したことはない。


 大人なんだから。


 高く引き上げているため口よりも高い位置にあるので、それをある程度下ろして口に運ぶ。


「ずずず!」


 外国人なら嫌そうな顔をするであろうが、日本人ならば麺は音を立てて啜るのが乙と言うものだ。

 咀嚼を数回で飲み込む。

 そばをいつまでも咀嚼するなんて……立ち食いそばだったらマナー違反と言っても良いだろう。

 やや腰砕けの麺が喉を通る。


 安っぽい。

 ただ、それでいい。


 あとは無心になって、時間経過とともに味も触感も変化する天ぷらを食べながらそばを啜り続ける。

 時に口の中がしょっぱくなると、水で口の中の塩気を拭う。

 また食べる。


 時間にして数分、黙々と食べて完食。

 汁は飲まない。

 ……歳なんでな。


 食べ終わった丼にコップと端をぶち込んで、持ち上げたらテーブルにある付近でさっと拭く。

 そして、丼を返却口へと返す。


「ごちそうさま」


 努めてさわやかに謝辞を伝える。

 世辞でも「美味しかった」とは言わない。

 本当に美味しいものを食べたいなら、そう言う店に行けばいいのだ。


 疲れていた身体に塩分と水分を与え、空腹感を訴えていた胃袋にそばと天ぷら油を与え、休む間もなく店を去る。

 その姿に「自分は仕事を頑張ってる!」と鼓舞しながら、次の現場へを向かうのだった。

どこの店かは……秘密です♪

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