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ジグソーパズルを完成させろ

作者: あーくん

今回は夫婦の話です。


 777777。

あいつの好きな数字を6回打ち込む。

ほら、ロック画面解除出来た。

そしてLINEを確認。

トークのトップには「もみちゃん」の文字。紅葉もみじのアイコンだ。

その中身を見てみる。

……。

やっぱり。


 朝、私たち夫婦は今日もコーヒーを飲んでいた。

「でさー、そいつ、大事な眼鏡めがねかけ忘れて来たんだよ」

「ウケる。気づかなかったのかな?学校来るとき」

「そうみたいだな。普通気づくよな?」

「うん。視界ぼやけるしね」

「あっ、俺、そろそろ行かねーと」

楽しい談笑時間はあっという間に終わった。

「どこ行くの?」

「あ?内緒」

「えー、教えてよ」

「やだねったら、やだね」

あいつは家を出て行った。

言えない予定があるんだよね。「もみちゃん」って人がどんな人なのか見てみたいものだ。

確か、秋尾喫茶あきおきっさだったよね。行ってみよう。


 どこだどこだ?あっ、いた。

真ん中の席にあいつはいた。向かい合った席に可愛い女がいる。

あいつ、可愛い女と楽しくしゃべりやがって。

驚かしてやろ。

あいつの後ろにまわり込んだ。

すると、もみちゃんはギョッとした顔になり、

「え?誰ですか?後ろの人」

と言った。

「ん?」

こいつは振り向いた。

めちゃくちゃ間抜けな顔をしていた。私だと認識しても、全然悪びれた様子でもない。

「あれ?お前なんで……」

パチーン。

「おうふ」

思いっきり、ビンタしてやった。

「外に来い」


 道行く人は揉めている私たちのことを見ていた。

「さっきのやつ、誰?愛人?」

「ちげーよ。会社の後輩だよ。ただ、あいつの悩み聞いてただけだよ」

「嘘つくな。変態じじぃ」

「信じてくれよ。あいつ、最近仕事が上手くいかないらしいんだよ。だから、相談相手になったんだよ」

変態じじぃの言い訳は耳に入らなかった。

「別居しよう」

「別にいいけど」

二人は一旦離れることになった。


 実家は懐かしい香りがする。私の部屋の時計の針は、長針と短針が逆の方向を向いたまま止まっていた。

マンガでも読も。

……。

一度見たマンガを読み返すと、未来が見えているせいか、味が落ちていた。

「ご飯よー」


 味噌汁を口に入れた。

おいしい。やっぱり、母親の味は好きだ。

母さんが口を開いた。

「新一さんのこと、もう嫌い?」

「大っ嫌い。裏切るとか許せない」

「……。もし、新一さんの話が本当だとしたら?」

「本当なわけないでしょ」

心愛ここあ、人間関係を長続きさせるコツは『信頼すること』『許すこと』『感謝すること』って言うよ?新一さんのこと信頼してみない?」

「……」

「私はまた二人が笑顔になって欲しい」

「うるさいなぁ」

そう言いながらも、私の心は変化していた。


 (私が悪かったかも。あんたのこと信じてみる)

ぐに既読はついた。しかし、時間が経っても返信は来なかった。

何なのよ、あいつ。ウザいんだけど。私が歩み寄ってやってんのに。

なんか、モヤモヤする。なかなかピースがうまくはまらない。

幸せな二人の絵にはほど遠いようだ。

この嫌な気持ちを変えたくて、とりあえずテレビをつけてみた。

流れていたのは、見たことのある有名なドラマの再放送だった。

主人公がブランコに揺られていると、彼女がやって来た。

「何だよ。話って」

「どうしても直接謝りたかったの。ごめんね、カズくん。私、やっぱりカズくんのこと信じてみる」

これだ!

私は、「帰るね」と書いた手紙を机に残し、荷物をまとめて実家を後にした。


 綺麗になってる……。

玄関が綺麗に掃除されていた。まるで、私が帰ってくるのを待っていたみたいに。

「感謝すること」

母さんの言葉がよみがえった。

そうだ、感謝しないと。

リビングに入ると、あなたがいた。

「やっと帰ってきたか」

「ごめんなさい、疑って」

まず、言わないといけないのはこれだと思った。

直接言うことが大事だよね。

「いいんだよ。分かってくれれば。コーヒーでも飲もうよ」

「うん!」


 好きな人と飲むコーヒーはおいしかった。

「えっと、あいつ、最近仕事上手くいってるみたいだよ」

もみちゃんのことか。

「えー、良かったじゃん。めでたしめでたしじゃん」

「ま、俺のおかげってことよ」

「そうだね。しんちゃんのおかげだね」

「冗談だよ。そんな自惚うぬぼれてねえよ。俺のアドバイスをちゃんと聞いて実行したあいつがすげえんだよ」

「あー、確かに。あの子、すごいね。しかも、可愛いし。恋愛感情あるでしょ?」

冗談をかましてやった。

「だから、ねえーって。信じてくれよ」

「ふふっ。冗談冗談」

ピースが綺麗にはまり、男女がコーヒーを片手に談笑している絵が完成した。

夫婦の話でした。

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