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生徒会の問題児たち

 学園にグラウンドはいくつかあるが、その中でも第二グラウンドは敷地の外れにある。日中でも授業以外であまり人を見かけない場所だ。


 西の空の一部以外は暗くなった日没直後、その第二グラウンドの中央にサリーと仮面令嬢に変身したルナが立っていた。頭上の満月は地上を照らしている。


 今回、戦う可能性を考えてサリーはズボン姿だ。こちらの世界に転生して初めてである。


 王子を呼び出すにあたってサリーは実名入りの手紙を出していた。無記名はもちろん、平民程度だと高位の王侯貴族は出向いて来ないからだ。


 そして、そこまでするのならもはや隠れることなどできない。毒を食らわば皿までと、相手の気を引くために変身したルナの横に並んだのである。


「本当に来たわね! へぇ、さすが侯爵様!」


「すぐに戦うことになるでしょうけど、その前にお話くらいはさせてくださいよ?」


「わかってるって!」


 どうにも緊張感の足りないルナに釘を刺してからサリーはため息をついた。


 目の前には呼び出した生徒会の三人がルナの言う通り現れる。内心では来てほしくなかったが、そうも言っていられない。


 赤みがかった金髪に青い目の美男子の王子アランが、その地位にふさわしい尊大な態度でサリーを見る。


「侯爵家出身の分際で、私を呼び出すとはいい度胸だな」


「お招きに応じていただきありがとうございます。ただ、私がお呼びしたのはアラン王子だけでしたが、他のお二人は?」


「テメェの都合に合わせる必要なんて、こっちにはねぇんだよ」


 王子の右隣から、逆立てた明るい茶髪の野性的な侯爵家三男坊であるランドルが口を挟んできた。最初から喧嘩腰だ。


 一方、王子の左隣に立っている、青みがかった黒髪と冷ややかな目の伯爵家長男マクシミリアンが冷たい口調で問いかけてくる。


「それで、侯爵家のご令嬢ともあろうお方が、日の暮れたグラウンドで痴女と何をなさっているのですか?」


「痴女って言うなぁ! あたしは仮面令嬢ルナ! 日夜悪い子を浄化する正義の魔法少女よ! 今夜はあんたらを良い子にしてあげにきたんだから!」


 元々沸点の低いルナがあっさりと暴発した。事前の打ち合わせではサリーが会話を主導することになっていたが、そんな段取りは一瞬で吹き飛んでしまう。


 怒りにまかせて裁きの杖を突きつけたルナに対して、アラン王子たちは背後に下がって構えた。その様子を見てサリーが顔をしかめる。


「ルナ、予定はどうしたのです?」


「コスプレならまだしも、痴女なんて言われて黙ってられないわよ! それに、臨機応変にやるって決めてたじゃない!」


 これでは場当たり的な対応だと言いたかったがサリーは我慢した。それどころではなくなったからだ。


 三人は腰を落として構えているが、王子は真っ黒な長剣を手にし、侯爵家の三男坊は真っ黒なナックルを両手に嵌めている。対して、伯爵家の長男は素手のままだ。


「アラン王子は暗黒剣、ランドルはブラックナックル、マクシミリアンは魔法で戦うわけですか。ここまでは予想通りですわね」


 自分達とは違って相手の三人はゲームに沿っていることにサリーは安堵した。これなら何とかなるのではと思えてくる。


 内心で安心しているサリーと猛るルナにアラン王子が話しかけてきた。


「王族に武器を向けてくるとは不敬な奴だ。この場で成敗してくれる」


「杖を向けられたくらいで不敬罪ですか? それはいくら何でも大げさでしょう」


「何にせよ、あんな手紙を送りつけてくる奴などさっさと始末しておくべきだ。いつまでも周囲を嗅ぎ回られては鬱陶しいからな」


「あら、ということは、悪霊に取り憑かれていることをお認めになるのですね」


「何のことだかわからんな」


 とぼけるアラン王子の様子を見て、最初から自分達を殺す気だったのだとサリーは気付いた。こうなることはわかっていたとはいえ、面と向かうと気が重い。


 王子の左隣のマクシミリアンがサリーに声をかけてくる。


「お祈りは済みましたか?」


 返事をしようとして、サリーは王子の右隣にいるはずのランドルの姿が見えないことに気がついた。思わず自分の左へと顔を向けると、サリーへ飛びかかろうとしている三男坊の姿目に入る。


 こうして、戦いはアラン王子たちの不意打ちぎみに始まった。

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