2話
『こちら第3防衛基地司令部。第15大隊、状況を報告せよ』
基地からの通信が入る。部隊の状況を確認し、任務を続行するかの最終判断を行うのである。
『こちら第15大隊。異常なし。全て作戦通りに進行中』
大隊によっては、稀にだが恐慌状態に陥り任務を続行できないパイロットが出ることもある。無論、歴戦の第15大隊にそのようなパイロットはいない。
『司令部了解。第17ワルキューレ大隊も予定通りだ。このまま作戦を続行する。
先程、先行する偵察ポッドが20機のベクターを捉えた。これらのベクターに10機ずつ、青と赤のマーカーをセットした。
諸君ら第15大隊は青にマーカーされた10機のベクターを誘引、撃破してくれ。当然ながら、誘引の際は20機のベクターを相手にすることとなる。危険な状況となるが、ベテランの第15大隊ならば可能だと信じる。基地で全員が再開出来ることを祈る』
偵察ポッドは無人の小型の機体で、文字通り偵察を目的としている。当然武装は付いていないし、シールドも装備していない。そのため、ベクターに捕捉され次第すぐさま撃墜されるが、一瞬でもベクターを捉えられればそれで良い。
『大隊各位、我が大隊はまもなく戦闘状態に突入する。生き残りたければ焦ることなく、冷静に対応しろ。俺たちは1人じゃない。ヤバくなったら、周囲にいる味方の事を思い出せ。そうすれば、必ず生きて帰れる。基地に帰り、全員で酒を飲める事を楽しみにしている。以上だ。各位、状況開始!』
<><><><><><><><><><>
バルカンに搭載されているレーダーが1〜20の数字が振られた物体を探知する。それらは、即座に10個ずつの青と赤の光点へと変化した。レーダーには、「ベクター」の表示。第15大隊は遂にベクターと接敵した。
大隊長であるバーガンはすぐさま麾下の機体へ通信を発する。
『エンゲージ!目標は青のベクター。これより誘引を開始する。総員、気張れよ!』
20機のベクターへと突進するモルト中隊18機のバルカン。バルカンは2機ずつの9個のグループに分かれ、青にマーカーされたベクターへ向かっていく。そして、装備するレールガンの射程距離ギリギリまで近づきそのエネルギーを解放した。
光速に迫る勢いで射出された弾丸は、そのほとんどが正確にベクターへ着弾する。自身への衝撃でようやくバルカンを認識したかのように、ベクターは一斉に散開しバルカンへ迫る。
それを確認すると、バルカンはすぐさま反転、逃走を開始。ベクターは傷つけられた恨みを晴らそうとするかのごとく、バルカンを猛追。
バルカンは、あらゆる性能でベクターに劣る。速度性能も例外ではなく、ジリジリと両者の距離は縮まっていく。しかし、ここでベクターはまるで何か重大な事に気づいたかの如く突如反転、追撃を停止する。別方向から迫る第17ワルキューレ大隊を発見したのである。
バーガン以下17名もベクターに続いて反転、逆襲を仕掛ける。青にマーカーされたベクターのみを狙い、各自レールガンのトリガーを連続して引く。光を纏いながら直進する弾丸は再度ベクターの表面を叩き、ベクターの注意を惹きつける。
ベクターは再度反転、バーガンらのバルカンめがけて突進する。しかし、その数は10機であり、バーガンら計18機のバルカンに狙われた機体のみであった。
バーガンのコクピットのスクリーンには、自機へ迫る10個の青い光点が映っていた。