序章 終話
魔導書の魔王ってか。
魔王だなんて随分と仰々しい名前を付けたもんだ。というか神様が魔王を容認していいのかよ。
「えぇ、勿論です。そもそも魔王とは、ファンタジーお決まりの魔族の王ではなく、魔法を極めし頂点をかつての王に掛けて作り出した造語ですからね。嫌悪も否定もしませんよ。寧ろ毎年のペースで魔王は生まれてますし」
「毎年って、祭りの行事かよ。勇者涙目だな」
「実際に毎年頂点、つまり世界一を決める大会がありますからね。祭りは良い表現だと思いますよ。参加条件は魔導書の保有者です。後、勇者はいません」
「いないのか。 …良かった。過労で倒れる勇者はいなかったんだな」
いや、当たり前か。現代だもんな。
そんなポンポン生まれる魔王を相手に必死こいて討伐を請け負うブラック企業戦士みたいな勇者は見たくない。
「それよりも、画面を確認してください。庵さんの魔導書名と能力が表示されている筈です」
言われて画面を確認する。表示された魔導書名は三頭の門番。ゲームでもそこそこ有名な名前だから、当たりっぽい。その下には能力。これか。ええと、
「予測・展開・反射?」
何の魔法だこれ?
「あー、障壁魔法ですね」
「しょう、へき?」
おいおい、最初っから定番っぽい魔法じゃないのか。
「つまり防御魔法です。障壁、つまりは壁を展開して守る魔法です」
ファンタジー世界に来て最初に貰える魔法がコレか。そうなると前衛の盾役でもやるしかないか。仲間と組めばそこそこ重要な役目が…いや待て、さっき頂点とか世界一をとか言ってたな。世界一って事は一人のハズ。つまり、個人戦じゃないのか?
「そうですね。一応、チーム戦もありますけど、最初の方は個人戦である程度勝っていかないとチームすら組めませんね」
「なら攻撃魔法とかは」
「今のところは無いです。能力の一つである反射で何とかするしかないですね。魔導書の魔王の基本的なルールだと、魔力の無い攻撃ではダメージを与えられないので」
「そうなると常時反射で何とかするしかないのか」
「いえ、正直それも厳しいですね。反射は相手の攻撃魔法と同じ魔力かそれ以上を込めて、初めて発動します。つまり、相手の込めた魔力を読んで的確に魔力を込めなければ、魔力切れで負けます」
「なら予測でなんとか」
「予測とは経験則が無ければ余り役に立ちません。初見では的確な魔力を込めるより多少多めに見積もる方が良いですよ?」
「全部問題アリとか詰んでるじゃねーか」
そうでもないですよ、と神様は立ち上がるとカウンターの奥を指し示しながら、
「経験則が無ければ、積めばいいんですよ」
にこやかに笑った。
…あぁ確かに、そりゃそうだ。せっかくの魔法なんてファンタジーを使えるのに、最初っから否定だけなんて面白くない。俺も立ち上がり示された場所へ向かう。奥は体育館くらいの広さの場所、恐らく試運転の為の練習場所だと思われる場所になっていた。
「じゃあ、一先ずやってみるか」
それから数時間の練習と経験則を得た後、平行世界の必要事項を教えてもらいつつ幾つかのアプリケーションのインストールをして。
俺は異世界に降り立った。
予測「実は既に働き始めてる」
展開「オレもいるぞ!」
反射「どっかの白トラマンさん程強くないッス」