序章 一話
理不尽なんて何処にでも在る。時間もタイミングも選ばないし、理屈も理由も関係ない。そんな当たり前の事を考えたのは、今現在そのような現実を目の当たりにしているからだ、と言いたい。
「どうなってんだ、コレは」
黒髪黒眼の青年は呟く。理解が追い付かない。家族全員が翼の生えた何かに吹き飛ばされたのは覚えている。赤く染まる視界の中で俺だけがボロボロのまま生きていて、怒りのままにその何かをぶん殴ろうとしてーーー
気が付けば、スマホショップにいた。
家電量販店とかの一角ではない、専用ショップの店舗のタイプ。それにしか見えない場所の入り口に立っていた。妙に現実感は有る場所ってのが余計に意味分からん。さっきまでの俺の怒りを返せ、とそう思いつつも辺りを見回す。
手前にはどう見てもスマホらしきモノが多数、今までに聞いたことないメーカー名の種類がそれっぽく展示されているし、左右にはタブレットらしきモノ、壁際には恐らく付属品とかもチラホラ見える。不思議な事によくある店内に流れているCMの謳い文句や音楽などは流れていない静寂な空間なのに、不気味さは後からやっても来ない。奥には店員のカウンター席があるのもそのまんまだな、と見渡した所で一人の女性の店員を見付けた。何時から居たのか、或いは気が付かなかったのかは分からないが、行動しなければ始まらない。奥に向かうと自然な動きでカウンターから出てきた女性は、
「お待ちしてました、遠夜庵さん」
にこやかに挨拶したのは亜麻色のロングの髪に紅色の眼、人当たりの良さそうな顔立ちの店員服を着た初対面の女性だった。髪色と眼にツッコミを入れなければ店員に見えたかもしれない。致命的に違う点を除けば、だが。存外返ってくるの早かったな。
「私は神のひ「とりあえず殴るわ」えぇ!!!??」
天使の輪と翼を持つ店員の顔面を、ぶん殴った。
神のひ「庵さんは拳系男子」