精霊と魔法
ヒートテックの説明が終わる。俺のヒートテックは神器って扱いになる程の品になるらしい。まぁ、
「果物買ってきたんで一緒に食べましょう?」
「えっ、えっ、えっ、反応薄くない?」
「いや、凄いと思っているし感謝してるよ」
「ミディーちゃん、気にする必要はないわよ」
「ええ、神器とも呼べるような代物を着ていますが、これは元々は自分の大切な物でしたので」
「確かにそう・・・ね?」
「そうよ、果物を楽しみましょう」
「じゃっ、テーブルとかを出すわね」
「お願いしま・・・」
「あらオークね、水槍」
リエラさんがそう言うと魔力が放出される。低い丘を登り始めていたオークがリエラさんが目の前で作って飛ばした水の槍で胴を貫かれてしまった。綺麗な穴が開いて血が吹きで・・・穴?
「リエラさん、水の槍でオークを貫けるんですか?」
「ええ?そうよ。ペスト君もできる筈よ。今のは只の水魔法ですし」
「そうなんですか?」
「そうよ。水槍を使ったことはあるの?」
「ええ、はい、水の槍を飛ばしましたが、吹き飛ばすだけであんな風に貫けたりは」
「詠唱とかは?」
「してません」
「なんで貫けなかったか分かるかしら?」
「いや、でも前の世界だと水で肉体を貫くなんて・・・」
「それよ」
「えっ?」
「魔法は別よ。魔法は願いの力、魔力で不可能を可能にもする力、魔力と願いの力よ」
「願いの力ですか」
だから闇魔法は複数かけられたし、雷撃は使い分けられたのか。水とか風の魔法は特に元の認識に引っ張られていたと。今まで魔法を使える人は、彼女達とティリルさんの風の探索魔法しか見なかった。アリステア様に使い方だけを聞いて、こっちでは本屋の魔法書は高くてお金がもったいないと思って買わなかったのだ。失策だ。
「ええ、属性魔法の魔法分類、攻撃・防御・補助・その他にも素質が必要なのは知っているかしら?」
「知りませんでした」
「・・・成る程、教えがいがありそうね」
「えっ?」
「ペスト、リエラ、とりあえず座って座って」
「あっ、ごめんミディーさん、お皿も出してくれてありがとう」
「ふふっそれよりも早く果物を食べたいわ。ペスト、さぁ出して出して」
「ああ、口に合えばいいけどね」
収納から袋を出し、果物を取り出していく。
「あっ、チェリーにペリー!」
「スモモにイチジクとライチね。ありがとう」
「それも使えますか?」
「ええ、操作は大変かもしれないけど使えるわよ」
袋から出した幾らかの果物をリエラさんが出した水魔法で洗っていく。スモモとかの皮も綺麗に剥かれて、綺麗にカットされて皿に並べられていく、これも昨日見たけど、精霊の使う魔法じゃなくて只の水魔法だったか。それよりも美味しそうだ。食べよう。
果物を食べながらリエラさんが説明してくれる。
「そうね、魔法は不可能を可能にする力、発動者の意思と言葉、詠唱が影響するのよ。ペスト君の意思だけで魔法を撃ち出したからペスト君の認識が引っ張られたのよ」
「つまり、本気で貫きたいと思えば」
「貫ける筈よ」
「素質は?」
「各属性魔法を使うのにも適正が必要で、人によって攻撃に向いてたり、防御に向いてたりすることがあるのよ、魔法名や意思だけで使うと本人の適性や鍛錬で左右されるはね。意思だけで魔法を使える種族や相当の鍛錬を積んだ人は本人の精神や意思が特に影響されるわ。私たち精霊にはそこまで関係ないわね」
「成る程、詠唱で素質を補うのですね?」
「そうよ。後は魔法を補助してくれる装備でね。ペスト君の今の魔力量は?」
「もう四割あたりですかね?」
「ペストは寝ると十分くらいで回復するわね」
「あれっそんなに?」
「ええ、本当に早かったから驚いたわよ私達」
「・・・それでペスト君、提案があるのだけど」
「何ですか?」
「ここで暫く魔法の練習をしていかない?」
「いいんですか?」
「天使族の魔法を見てみたいし、私達ならペスト君を魔法で眠らせて魔力を急速回復させることも可能かもしれない」
「でも健康のギフトが」
「そのギフトも魔力切れだとどうなるか分からないのよね?他にもペストの意思と私達の信頼で効果を無くすことも可能かもしれないわよ?」
これ程の機会がこの先あるだろうか?上手くいけば魔力量をとても早く増やせるかもしれない。それは即ち、この世界で楽しく生きられる確率が上がる。
「・・・リエラさん、ミディーさん、宜しくお願いします」
「フフッ宜しくね」
「宜しく!ペスト!」
「・・・その代わりに勉強代として魔力を幾らか吸わせてもらうけどいい?」
「勿論です」
「やったー!」
リエラさんとミディーさんの嬉しそうな顔が凄い。俺の魔力はとても美味しいようだから、どうにしかして暫く吸いたかったのかもしれない。
本当に俺の魔力の味が気になる。
凄く美味しいと言われているが、元の俺ならゴミのような味がしてもおかしくない筈なのに。
・・・アリステア様に感謝しよう。