女神の間
青い光が徐々に白い光に変わっていき、光が弱まる頃には周囲を確認することができていた。
白い場所だ。それ以外には何もない。いや、クラスメイト達もいるがそれを気にする暇がないほどにこの空間は不思議だった。
壁も無く、上を見上げてもそこには白以外が存在しないのだ。何処までもあるような白い世界に自分達だけがここにいる。
先程の異変以上にあり得ない光景を見せられて、自分は心底こう思った。
(クソッタレ)
もうすぐ家に帰ってダラダラできると思っていたのになんなんだよと。
もし此処で、私が犯人です、もしくはドッキリですと誰かが出てきたらブチ殺してやると思うくらい、自分の気分は最悪だった。
今の気分なら世界チャンピオンでも殴り倒せそうだなー(不意打ち前提で)と現実逃避しながら、周りの確認は終わったので、クラスメイト達を見てみる。
反応は色々である。もはや彼らの様子を語るのは割愛するが、まあ色々である。
この状況で行動する気力はないので、寝ようかなと思う。普段もそうだが、この状況でもクラスメイト達とつるむ気はあまりないのでさっさと寝させていただこう。
向こうも話しかけてはこなさそうなのでさっさと寝るに限る。
教室から出ようとしたときに持ってきたリュックを下ろし、着ていた制服の上着を脱いで畳んで枕代わりにして横になり、瞳を閉じる。
昨日は遅くまで起きていたので、すぐに眠気がやってきた。おやすみなさいと心の中で呟き、瞼を閉じる。この状況が夢であると願いながら。
「*きて**さーい。」誰かの声が聞こえる。「起きてくださーい。」また聞こえたよ、今度ははっきりと。眠いから寝かせてよ。
「起きてくださーい!!」いい加減うるさいなと思いつつ、起きようかと思案していると、ふと自分はこう思った。
誰の声だ?いや、女子の誰かの声であるのは確かであるはずだがクラスメイトにこんな声の持ち主がいた覚えはない。
声が大きくうるさいと思ったが、こんな澄んだ声の持ち主は自分のクラスにはいなかった筈だ。
つまりこの声の持ち主はもしかすると、
そう思いながら目を見開くと、案の定見覚えのない人が自分の目の前にいた。
(おまえかぁああああああああああ!!)
「ひゃぁーーー!?」
流石に初対面の人に向かって怒鳴る程、攻撃的な性格ではないので、心の声で留めておいたのだが、目の前の女性は何故か驚いている。まさか人の心読んでないよね?
「そのまさかで・・」
「おまえかぁああああああああああ!!」
「ひゃぁーーー!?」
言い切る前に差し込む形で今度は声に出す。えっなに人の心読んでるのこの人。まさかエスパー?まさか神様(笑)じゃないよね?
「うぅ、そのまさかです」
「神様(笑)か」
「神様ですけど(笑)ではありません!」
反応早いなーこの神様、あっ、人の心を読むのは失礼だと思いますけど、別にいいです。話が早く済むので。
「うぅ、調子が狂います・・・」
ところで何の用でしょうか、女神様?
心の中でそう言いながら、改めて女神様をまじまじと見て、いや、人をまじまじと見ると失礼に当たる場合があるので程ほどにさせてもらいます。
それでも目に映るのは絶世の美女、大変お綺麗ですよ女神様。
「あぅ・・・あっありがとうございます。えぇとそんなに丁寧に話さなくて大丈夫ですよ?」
(いえいえ、初対面の年上そうな方に対してだとどうもこうなってしまうので、どうかお構いなく、普段の心の声はこんなに丁寧ではありません)
(まさか聞かれているとは思いませんでしたが、話すよりとても楽なのでこのままでお願いします。あと照れてる姿も大変綺麗です)
「よ要件の方を話させていただきます。あと、ありがとうございます・・・」
流石にこれ以上は辞めておきますが、要件の方をお話しください。
「えぇ、大変申し訳ないと思うのですが・・いえ・・本当に申し訳ないです。ごめんなさい」
(その理由を聞かせてもらえますか?)
そう聞くと女神様は言いにくそうな顔をしながらも、私の目を見てすっと息を吸うと、こう言いました。
「あなた方は異世界に行くことになりました」