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他種族パーティーと訓練

 いやいや討伐隊の彼等を見てあげてくれよ、微妙じゃんこの空気。何かやれって感じの空気になるじゃん。


 討伐隊の面々も・・・あっ獣人の二人がこっちに来た。女性の方が先頭だ。男の人の方が止めようとして遅れた。


「わー、すごいイケメン。こんなの見たことないよ」


 間近でジーッと見てくる。だからそれパンダ扱いだよ。


 女性は栗色の髪に犬か狼らしき耳をしている。髪は真ん中で分けられたショートカットだ。背は高いが、仕草やら口調やらで女性というよりは女の子という印象だ。


「あっ」

「こら、リョウカ失礼だぞ、すみません」


 こちらに頭を下げながら男の人が女性の頭を叩くように下げさせる。女性が恨みがましい目で男の人を見ている。


 お礼を言うときや失礼をしたとき、大事なことを頼むときは頭を下げるのだ、この世界。場所で変わることもあるが。あと立場で変わる。


 男の人も少し逆立っているが似たような髪型だ。


「いや、大丈夫です。討伐隊の方ですか?」


「うん、そうだよ。私はリョウカ」

「兄のリューンです、本当にすみません」


 女性の方の喋りが大人という感じはしないのは冒険者だからとも言える。もしくは本当に若いのだろう。受付嬢さんの話だとこの兄妹は最低でも銀級冒険者らしい。妹の方が短めの剣を二本、兄の方が長い直剣を持っている。


 ドワーフの男とエルフの女性もこちらに来る。


「ガッハッハ!相変わらずだなリョウカ!」

「まあ、無理はないわね」


「どうも、貴方方は?」


「おう、儂はドバルだ!そこの兄妹とエルフのパーティーのリーダーをしておる」


 ドワーフの男はガレスさんと似て豪快だ。


「私はティリルよ。よろしくね」


 エルフの女性は柔らかい印象だ。


 ドバルさんはガレスさんと髪や髭の色が同じ赤毛だ。この人も豪快な印象だが、髪を編んでいて目の鋭さが違う。身体も若干大きい。背中には片側が槌でもう一方が斧である武器が見える。ハンマーアックスと呼べばいいのだろうか?他にも投げれそうな手斧が腰にある。戦士だ。


 ティリルさんは金髪だ。腰あたりまである長髪を綺麗に纏めてある。洋弓と矢筒を背負い、腰には細い刺突用の剣やナイフがある。美人で線が細いので麗人という印象、いや、麗人だ。それぐらいの美人なのだから。


 全員が革装備なのは動きやすさを重視しているからだろう。冒険者で鎧装備をしている人は少ない。ドバルさんの装備が一番重そうだ。身体の各所に金属の防具があるからだ。


「俺はペストです。この辺でエルフの方もいるとは・・・少し珍しいパーティーですね」


 少々不躾かもしれないが聞いてみる。だが、エルフの人がこの国にいるのは珍しい方だと言える。他の種族といるのもちょっと珍しい。冒険者だからではあるが。


「そうか?まあこの辺りだと珍しいか」

「まあこの辺りだとね」


 ドバルさんとティリルさんが肯定する。


 二人がそう言った理由だが、一つ隣の東にある国は人族がかなり多い。海に面しているので東端の国でもある。国土もそれなりに大きいとアリステア様から聞いた。


 その国が俺たちをこの世界に転移させたのだ。人族至上主義とまではいかないがその傾向が貴族社会で特に表れている。その国はアリセ王国と呼ぶ。王都には特に行きたくない。


 そして俺がいるこの国、バメルト王国は人族以外もそれなりにいるが、アリセ王国の影響が少なからずある。アリセ王国近辺の国は影響を受けているのだ。この街ラッセルは国境近くだからでもあるが、影響が大き目だ。


 一番近くでエルフ族が多くいるのはこの国から二つ向こうの南西の国だ。他種族国家の森にエルフ族が住んでいるのだ。一度行ってみたい。


「ねえ、貴方は討伐に参加しないの?」


 リョウカさんが聞いてくる。


「いや、俺は少し前に冒険者になったばかりですよ。そしてついさっき銅級になったばかりです」


「ええー、強そうなのに・・・」

「すいません、すいません」


 リョウカさんが残念そうな顔をする。そしてリューンさんが謝ってくる。少し苦労してそうだ。


「でも確かに強そうに見えるわよね。凄い綺麗だし」

「でしょでしょ!?流石ティリル姉さん!」


「うむ、見た目も人族にはとても見えんな。それにランクは当てになりにくいぞ、冒険者になったばかりなんだからな」


 リューンさん以外が肯定してジーッと見てくる。

 リューンさんも・・・


「・・・まあ、それはそうなんですけど、ジロジロ見過ぎですよ!ドバルさん止めてくださいよ!?失礼でしょ!?」


 訂正しよう。リューンさんは苦労人だ。


「いや、別に良いですよリューンさん。慣れてますから」


 微笑を浮かべながら返す。本当に慣れた。


「それよりも、皆さんのことを見たことがないのですが。あちらの方達も」


 人族のパーティーの方を見てみる。様子からして四人はパーティーだろう。どうにも良い感じがしない。


「儂らはこっちに来たばかりだからな。あっちは知らん」


 ドバルさんが答える。後の声が冷たい。


 だろうね。来たときの様子で分かった。


「呼び出しの時から一緒だったけどあいつら感じ悪いし、私とティリル姉さんジロジロ見てくるんだもん、やんなっちゃう」


「まあ、しょうがないわ。オーガが現れたのだし我慢よ」


 女性の冒険者は少なめとは言え、何かあったのか?


「オーガですが大丈夫ですか?」


 人族パーティーをちらりと見る。一緒に討伐できるのだろうか?


「それはなんとかするわい、あいつらが出しゃばってくれたのだし、ありがたいわ」


「と言うと?」


 ドバルさんの出しゃばってくれたで、なんか読めた。


「あいつらが先にやらせろと言ってきたわ。あいつらが倒せても良し、倒せんでも良し」


 その方が良いのだろう。冒険者は他パーティーと連携などあまりしなさそうだし。


「私とドバルは戦ったことはあるけど、あっちが倒してくれた方がありがたいわね。大剣持ちのオーガ相手に危ない橋を渡るつもりはないわ」


 ドバルさんとティリルさんはあるのか。


「私達はないよ」

「参加すれば大銀貨は保証されるから様子見だな」


 兄妹がそう言う。

 なら安心とは言えないが、大丈夫そうだ。


「皆さんの無事を祈ります」


 本当に。


ーーーーー


 あれからドバルさん達と別れ、道具屋で少しばかし小物を買い、街中を歩いている。


 さて、討伐隊が行ってしまったし何をしようか。彼等は馬車で森まで行くのだ。討伐時のオーガの回収の分もあるのでギルド用の馬車が手配される。


 資料を読むのは飽きた。と言うよりは必要な知識は充分得たと思う。記憶にもしっかり残っている。


 魔力は・・・まだ四割くらいだ。


 それなら街の外で訓練でもしようか。丸石の使い心地と身体の動作の確認がしたい。ついでに魔物狩りでもしよう。


 お金をもう少し稼いだら、喫茶店でも探そうかな。甘いものや紅茶があれば嬉しい。


ーーーーー


 街から出て、森に行く道から少し外れたところに来た。森が遠目で見える位置だ。ここらで訓練しよう。立ち止まって身体に弾みをつけた体操をする。軽く跳ね、軽く伸ばす。


 ファルシオンを背中から抜き、振る。


 縦振り、突き、横振り、切り返し、回りながら切り上げ、打ち下ろす。走りながら振る。突き、突く。


 両手でも片手でも問題ない。振り回されず振り回すように、狙った場所に剣を振り、突く。次だ。


「ギャア!」


 棍棒を取り出す。全力でフルスイング。


ゴギャン!


 ちょうど襲ってきたゴブリンの頭が大変なことになった。首ってそこまで曲がるのかと思った瞬間には千切れ・・・いや、流石に酷い。次だ。


 丸石を取り出す。前の感覚だと普通のボールよりは重みがあると思うが軽い。引っかかりで投げやすいので軽く投げる。


 モーションを変えて何度か繰り返して確認する。握った感触、重さ、腕と手の感触、飛び方、回転、問題ない。


 さて、ゴブリンだ。クラスメイトと狩りをしたときに足を貫けなかったやつと同じ距離にいる。大体同じ力で同じところに投げる。当たった。


 すぐに向かったが、結果はゴブリンにとっては酷いことになった。左腿が凹んでいる。出血はないが、骨に影響が出ているだろう。立てないで苦しんでいる。棍棒で頭を潰す。もう動かない。


 少し離れたところから来たもう一体にまた投げる。頭に当てる。倒れて動かない。近寄って見たが、頭が潰れていた。血やら何やらで酷い。


 丸石は普通の石より威力は出ている。砕けてもいない。補給も修復も石を集めれば簡単だ。結果は上々。丸石を水で洗う。


 解体して血を集めたら次だ。次は踏み込みを入れよう。


ーーーーー


 訓練を続けた。あれからゴブリンに試した丸石の結果は酷いことになった。踏み込みを入れて投げると四十メートルでも手足なら折れるか砕けてる。頭なら文字通り砕けた。この距離だと少し当てづらい。


 ステップやら全身を使った本気の投石だと、・・・いやこれを言うのはやめておこう。やった身で言うのもなんだが、いくら何でも酷すぎる。ゴブリンなら胴体でも、当たりどころが悪ければ動かなくなるとだけ言っておこう。


 今度から丸石で投げるときは投球にしよう。そっちの方が馴染みがある。


 剣、棍棒を片手・両手で五十回単位で振る。剣鉈も扱う。


 全力疾走での訓練も行った。突き、横振り、持ち替えて何度か繰り返す。


 直線から斜めへ切り替えし、立ち止まる、横跳び、回し蹴り、突くように蹴る。角度を変えて蹴る。横蹴り、ハイ、ロー、ジャブ、ストレート、動きを変えて、足位置を変えて、体勢を変え、組み合わせて動く。


 ゴブリンがいれば試していく。


 収納から持ち替えて武器を足を手を振るう。狙いをつけて、勢いをつけて、途中で止めて切り替える。そこからまた武器を振るう。全力で動き、感覚を擦り合わせて行く。






 楽しい。身体が動く。目が見える。疲れない。生きている。






 満足だ。もう夕方前あたりだ。帰ろう。


 全力で身体を動かしても痛みがない。シャドーボクシングや投球で肘や肩が痛むときもあった。この身体はやはり凄い。

 

ーーーーー


 街に帰り、ギルドでゴブリンの耳と魔石をお金に換えて宿に戻って来た。少し部屋でのんびりして夕食だ。


 彼女達もいたが、今日はカウンターで・・・あっはい、こっちに来てと。


「やあ、大丈夫だね」


 顔色も大丈夫そうだ。


「うん、ありがとう!」

「大丈夫よ」

「疲れはしたけどな」

「みんなでグースカ。それと・・・」


「ああ、あれの感想は?」


 眼鏡の言い方で察しがついた。


「最高!」

「買うわ」

「文句なし。というか使い心地も香りもいいじゃん」

「羨ましい。一つ幾ら?」


 髪の毛サラサラ、お肌スベスベ、植物の上品な香りという時点で幸せだよね。使った彼女達を見ると更にね。さて、幾らにしようか?


「安い石鹸は確か・・・」

「大銅貨二枚よ。それなりにいいやつらしいのは三倍以上ね」


 うーん。


「大銅貨三枚、シャンプーとソープまとめて四枚」

「「「「買う!」」」」


 満場一致だ。魔力さえあれば無限だしね。瓶代もあるし、高くするのは彼女達も困るだろう。


「瓶ある?」

「あるわ。大きいのが」


「後でくれ、遅くとも明日渡すよ」


 それなら魔力も足りるだろう。


 席も埋まってしまったし、ここで食べよう。今日は従業員さんが配膳だ。礼を言いながら受け取る。


「ああ、それと・・・霧散した魔力の影響が出てるかもしれない」


 アリステア様から聞いたことだ。彼女達にも資料室で話した。アリセ王国の王都はどうなっているのだろうか?


 呼んだ奴らには死んでくれとまでは今は思えないが、痛い目にはあってほしい。でも無理だろう。他の人がまず先に巻き込まれてしまうだろう。


 この街のあの森はオークが少し多くというよりも、魔物全体が少し増えたそうだ。オーガが出て来たのもその影響かもしれない。そしてその影響がこれからも出てくるのか分からない。


 一先ず討伐隊、特にドバルさん達が無事に帰ってくることを願おう。


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